学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

上田秋成『春雨物語』

2011-07-24 21:35:10 | 読書感想
昨日、虹を見たせいかはわからないけれど、ともかくも今日の美術館のイベントは無事に終わりました。イベントは展覧会に関する講座。講師の先生をお招きしての講座でしたが、とても興味深いお話をして下さいました。担当である私自身もメモをしながら、講座を聞いていましたが、話の内容もさることながら、私は先生の話し方にも注目してメモを取っていました。本日お招きした先生は、大ベテランの先生であるだけに話し方が上手く、私も話し方のテクニックで取り入れられるものは取り入れたいとの想いがありました。

話すスピード、間の取り方、適度なジェスチャー、時折混ぜられるユーモア。

日々、勉強です。早く、人前でこれだけ上手く話が出来るようになりたいものです。もちろん、話すべきことがきちんとあってのことですけれど。



夏の夜の涼しい風に吹かれて、江戸時代の読本作者である上田秋成の『春雨物語』を読みました。上田秋成といえば『雨月物語』。私自身、書店へ行くまで『春雨物語』の存在を知りませんでしたが、面白そうだったので読んでみました。

『春雨物語』は10編の短編小説から成り立っていて、上田秋成が75歳のときに原稿が完成しました。ちなみに代表作の『雨月物語』は43歳のときに書かれており、これは脂の乗り切った年ですね。『春雨物語』はさすがに晩年だけあって、それほど怖くておどろおどろしい話はありません。私としては、ちょっと首をひねりたくなるような理不尽な話だらけなんですけれども(笑)10編のなかでも「樊噲」(はんかい)という小説が面白いものでした。タイトルを聞くと、難しそうな話なんですが、ある人間の一生を描いたもの。殺人、強盗、恐喝を続ける恐ろしい男のあまりにも意外過ぎる末路。こんなオチがありなのかとも思うのですが、ありなんでしょう…(笑)

『春雨物語』と『雨月物語』を比較した場合、話の面白さは『雨月物語』に軍配が上がると思いますが、怖い話が苦手な人には『春雨物語』がほど良い調子かもしれません。読み方としては、原文を読んで、現代語訳で内容の確認をするのがオススメです。原文はそれほど難しくありませんので。古典を勉強するテキストとしてもいいのかもしれませんね。


●『春雨物語』上田秋成 井上泰至訳注 2010年 角川文庫
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