学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

或る自画像の前にて

2008-11-23 21:28:10 | 展覧会感想
数日前、栃木県芳賀町の総合情報館で「福田たね 青木繁のロマン」展を見学してきました。青木繁の恋人、福田たねが芳賀町出身であることから、この展覧会は企画されたそうです。

私は会場の最後に展示されていたの福田たね、若干19歳の《自画像》に思わずうっとり。右向きの横顔、髪には椿らしいかんざし、二重まぶたの目は少し見下げたような視線、頬はうすい紅、そうして真っ赤な口紅。とてもかわいらしい《自画像》です。ただ、かわいらしさのなかにも、気品と自負心が漂う印象もあります(視線の下げ方がそう思わせるのでしょう)青木繁が福田たねを好きになった理由の1つがわかる…そんな気がしました。

2人の恋には様々な事情があって、別れ、青木繁は急速に力を落としていきます。ただ、人間は、特に男は、青木繁は愛する人と一緒に居ると爆発的な力を発揮する一方で、分かれたときの反動がすさまじかったりする。逆に、作家によっては、愛する人との別れによって、その悲しさゆえに爆発的な力を生み出す人も居る。何だかそこに人間の不思議を感じたりもするのです。福田たねの《自画像》を見ながら、そんなことをぼんやりと考えていました。

ちなみに青木繁が制作した《わだつみのいろこの宮》は、夏目漱石も見ていたそうで『それから』で、その印象について述べているようです。『それから』は、私が途中で挫折した本ですが、これを機会に少し読み直してみようかなと思いました。


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