学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

須田努『幕末社会』を読む

2022-01-31 20:34:00 | 読書感想
私が小学6年生のときの修学旅行は会津方面でした。野口英世記念館を見学したり、五色沼をハイキングしたり、陶器に絵付けをしたりと色々な経験をしましたが、なかでも忘られないのが飯盛山で見た白虎隊の悲劇を表現した剣舞。当時の自分とあまり年の変わらない少年たちが戊辰戦争で亡くなったことに心が痛みました。

先日、須田努さんの『幕末社会』(岩波書店、2022年)を読みました。政治史を追いつつ、そのときどきの民衆の動きを取り上げ、当時の社会がいかなるものであったか、そしてどう変わっていったのかを辿っており、幕府崩壊への道のりがリアルに迫ってきます。特に井伊直弼による安政の大獄が、暴力による問題解決のトリガーになったという話はぞっとしました。それが白虎隊の悲劇にまでつながっていくのだとしたら?

本書は幕末社会という混沌とした時代を書きながら、読者を迷わせず、明快に進んでいく内容です。著者の先行研究への敬意は要所に見受けられますし、丹念なフィールドワークの成果が随所に見られる好著です。いつまでも手元に置いておきたい一冊となりました。