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学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ラディゲ『肉体の悪魔』

2011-05-16 10:26:56 | 読書感想
過しやすい毎日が続いています。今日も天気は一日晴れのよう。嬉しいですね。今朝、川べりを散歩していたら、鮎の稚魚が元気良く泳いでいる様子を見かけました。近所のおじさんたちも集まってきて「いい季節になったね。」と。透き通る透明な水のなかで、それはもう楽しそうに泳いでいて、私もあのなかに混じって泳ぎたい…そんな妄想もしていました(笑)

昨夜、フランスの作家レイモン・ラディゲ『肉体の悪魔』を読みました。小説の内容は「僕」が人妻マルトとの不倫関係を告白するというもの。ただ、一般的に「不倫」につきまとう、どこかいやらしい感じ、というものは感じない小説です。作者のラディゲは早世した天才などと言われますが、この小説を16歳から18歳の時期に書いたそう。今の日本でいえばちょうど高校生の時期ですね。私自身、高校生だった自分を思い返してみるに、こういう類の小説はラディゲのように自分で書くものではなくて、他人が書いたものを読んで楽しむものだった(笑)

20歳のラディゲが書いた『ドルジェル伯の舞踏会』も読みましたが、両方を比較すると私は『肉体の悪魔』のほうが良く書けていると思いました。『肉体の悪魔』は登場人物に感情移入がしやすいですし(第一人称で書かれているせいかもしれません)、男女の営みを盗み聞きする夫婦に一計を案じる場面など笑える要素もある。また、マルトが妊娠した子供が誰の子供だったか最後までぼかされているところなどに上手さを感じます。『ドルジェル伯の舞踏会』はどうも中途半端で終わっている印象が否めなくて、まだまだ続きがあったんじゃないのかな、と思ってしまいます。小説を読みながら、苦しい表情で筆を取るラディゲの影が見えるようで…。(ラディゲは『ドルジェル伯の舞踏会』を書いてすぐに亡くなっている)『肉体の悪魔』と『ドルジェル伯の舞踏会』を比較して読むと、また面白いかもしれません。

今日は日向ででも、ラディゲの戯曲『ペリカン家の人々』でも読み、のんびり一日を過したいと思います。


●ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳 1954年 新潮文庫
●ラディゲ『ドルジェル伯の舞踏会』生島遼一訳 1953年 新潮文庫
コメント
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