細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『おとうと』で見せる「姉もつらいよ」の温情。

2009年11月26日 | Weblog
●11月25日(水)13-00 東銀座<松竹試写室>
M-126 『おとうと』松竹映画・(2009)
監督/山田洋次 主演/吉永小百合 ★★★☆☆☆
山田監督とすれば「男はつらいよ」のフーテンの寅さんの破天荒な晩年を、妹のさくらが姉代わりになって面倒をみる設定だから、演出しなれた設定だろうが、やはりここまで問題が多いと、喜劇にはならない。
しかし深刻な家庭内問題も、さほどシリアスに描かずに、松竹映画伝来の、小津調を匂わせる軽さで通したのは好感が持てた。そこが「母べえ」とは違って親しみが持てる。
多少凡長に見えたドラマだが、やはり終盤の民間ホスピスに担ぎ込まれたおとうとを介護する、献身的な人々の温かい描き方に、この作品の強靭な個性が強くにじみ出ていて、思わず感動させられた。
どんな家族にもいろいろ厄介な問題はあるが、その複雑な局面をささやかな愛情で支える勇気が、家族の絆なのだから、それを精一杯の冷静さを保った演出と演技はさすがだ。
本来ならば渥美清さんの役どころを、笑福亭鶴瓶が抑えた好演を見せたが、ラストシーンで見せた家族と介護スタッフを演じた演技陣のバランスが、作品の資質を押し上げた。

●2010年1月30日より、松竹系ロードショー

コメントを投稿