●12月12日(木)13-00 京橋<テアトル試写室>
M-155『旅人は夢を奏でる』Road North <tie pohjoiseen> (2013) mirianna films production フィンランド
監督・ミカ・カウリスマキ 主演・ヴェサ・マッティ・ロイキ <113分>配給・アルシネテラン ★★★☆☆
あの名作「過去のない男」などの名匠アキ・カウリスマキの兄の作品だが、映画歴は兄のミカの方が若くて、この作品も初々しい。
ウォシャウスキー兄弟や、コーエン兄弟のように共同作業ではなくて、個別に映画を作っている兄弟としては、両者ともになかなかの達人と見た。
どうもセンチメンタルな邦題には足が引けるが、原題は「ロード・ノース」といって、「北西への道」のようにタフなテーマだ。
よく「ゴーイング・サウス」というと「真夜中のカウボーイ」のように逃避型だが、「ロード・ノース」というのは「ファイブ・イージー・ピーセス」のように硬派だ。
ヘルシンキでピアニストとして成功していたサムリ・エデルマンは、いきなり35年ぶりに父と名乗る老人に、強引に車に素せられて彼の実の母親に会わせるという。若いときのロバート・レッドフォードに似た笑顔のサムリは意外の好漢。
3歳の時から両親を知らない彼には、コンサートのスケジュールもあったが、とにかくこの肥満で強引な老人の気迫に圧倒されて、ドライブの旅に同行することになった。
実はこのヘンテコな老人は、実の父というが、長く牢獄にいたのか、逃亡者なのか、車は盗難車だし、コンビニでも、すぐに食い物などを持ち去ってしまうという悪い奴。
それでも道中を旅するうちに、どうも不思議な情愛が湧いてくるのだ。無茶苦茶な話だが、展開が早くて歯切れもいいので、ついついホラ話に乗せられてしまう。
弟のアキは、小津映画のファンで、実にしっとりとした人生の味わいを見せたが、こちらの兄の作品はデ・ニーロの「ミッドナイト・ラン」のように豪放でテンポも早い。
フィンランドの北の奥地へのロケーションは、まるで北国への未知の旅のようで興味があって、風景を見ているだけで美しくて魅力はある。
そして拉致もどきの肉親への心の旅路は、実は逃亡の旅でもあって、意外な決着の展開も、人生の複雑な運命の皮肉も臭わせて、意外に苦い味わいは、さすが映画兄弟の才能だ。
このテーマで、もし弟のアキが作ったら、もっとしっとりとしたヒューマンな作品になったろうが、見てみたい気もする。
■左中間への深い当たりで、レフトがグラブに当てて落球のツーベース。
●2014年、1月に渋谷イメージフォーラムなどでロードショー
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