細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『マップ・トゥ・ザ・スターズ』の血染めのハリウッド・スター地図。

2014年11月27日 | Weblog

11月19日(水)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-130『マップス・トゥ・ザ・スターズ』" Maps to the Stars "(2014) Starmaps Production / Integral Films GmbH

監督・デヴィッド・クローネンバーグ 主演・ジュリアン・ムーア <119分> 配給・プレシディオ・松竹 ★★★☆☆

ハリウッドは映画産業の街だが、映画の仕事で裕福な生活を維持しているのは、ごく、ほんの一部の恵まれた人たちで、ほとんどの住民は重い住民税に苦労している。

この映画では、ひとりの落ち目な女優と、彼女の精神的な心理セラピーをしている精神科医師の一家を中心にして、その崩壊の構図をシニカルにカリカチュアライズしているシニック・コメディ。

という意味で、いつもアブノーマルな人間心理の内面を描くクローネンバーグの新作が、そのハリウッドの恥部を描くことは興味深いし、ただの華麗なスター映画でないのは当然のこと。

明らかにビリー・ワイルダーの名作「サンセット大通り」を意識した、スターの虚像と、その異常心理を巧みに悪用するセラピストの家族というのは、かなり極端だが実に面白いのだ。

熟女の女優ジュリアンは、離婚しているがアンバランスな精神状態を、専属精神医師のジョン・キューザックの豪奢な屋敷に通って治療しているのだが、その家庭は精神的にボロボロなのだった。

重度のノイローゼで転地療法していた娘のミア・ワシコウスカが突然に帰宅したことから、琴線上の危険な心理状態にあった家族のバランスは狂いだし、それがジュリアンにも飛び火していく。

ただでさえユニークな心理状態のキャラクターを描く監督の趣味性は、この砂上の楼閣のようなビバリーヒルズの家族をテーマにしたら、奇異で面白い素材は豊富な筈で、ここでも随所に鋭い皮肉をこめる。

とくに現代のノーマ・デスモンドを演じるジュリアンは、まさに彼女の根性を丸出しに露呈して毒演して、カンヌ国際映画祭では今年の最優秀女優賞を受賞。アカデミーは恐らく蔑視するだろう。

ビバリーヒルズの住人で、実際に映画のスタジオに行っているのは、ごく僅かであって、実際には「テン」の歯医者のような、医者やプール清掃業者や、パーティ屋とか不動産業者がハバを効かせている。

つまり大都会とは違って、かなりアンバランスな連中が世界中から集まった雑居地域であって、このような視点で描く狂気な人間ドラマの素材としては、たしかに宝庫なのだ。

だから監督としても、面白すぎて曖昧な描き方も多くて、<ハリウッド・マッドネス>を描いたにしては、意外に軽い常套的な悲劇の印象だったが、映画人種スケッチ集としては充分に悪臭があって面白い。

あのデヴィッド・ホックニーの絵画にあるようなプールの景色には、血染めの現実が潜んでいる、・・・・というジョークだ。

 

■大きなライトフライを野手が目測を誤って落球・

●12月20日より、新宿武蔵野館などでロードショー 


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