細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『フューリー』の戦場でキレまくるブラピの軍曹魂。

2014年10月27日 | Weblog

10月21日(火)13-00 飯田橋<角川映画試写室>

M-119『フューリー』" FURY " (2014) columbia/ sony pictures / QED international / crave films

監督・デヴィッド・エアー 主演・ブラッド・ピット <135分> 配給・KADOKAWA / ブラッド・カンパニー ★★★★

さて、この季節になると今年のアカデミー賞のノミネート予想の噂される新作が登場してくる。この新作戦闘映画もその前評判の高い作品だ。

第二次世界大戦の末期。1945年4月のヨーロッパ戦線、死にものぐるいで逃走中のドイツ軍を追う連合軍の戦車が、長い戦渦によって孤立。傷だらけのポンコツ戦車だけがこの作品の舞台だ。

タイトルの<フューリー>とは、この古びたシャーマン戦車の砲台に記された名前だが、(激しい怒り)という意味で、むかしカーク・ダグラスの恐怖映画が同名であった。

敗走中のドイツ軍は、それでも巨大な戦力を維持していて、最期の抵抗を死にものぐるいで試みるので、このオンボロ戦車も孤軍奮闘。たった5人の仲間の指揮をとるのはタフなブラッド軍曹だ。

過去にも「バルジ大作戦」や「アンツィオ大作戦」「サハラ戦車隊」のように、戦場での戦車戦を描いた作品は多かったが、これだけ武力を消費しつくした苦労話は見た事がない。

監督は、わたしが昨年の個人的ベストワンに決め込んでいた「エンド・オブ・ウォッチ」のデヴィッド・エア!!!。やはり作品の総指揮プロデューサーでもあるブラピの指名だけに、凄まじい力量だ。

とくに超狭い戦車の中での兵士たちの閉塞感と、戦闘シーンの広大な引きシーンを、見事なコントラストで魅せる激戦の迫力は、「プライベイト・ライアン」のスピルバーグも撃破するド迫力。

厳しいリーダーシップを発揮するブラッド・ピットも、これまでにないオヤジヅラで熱演して、ここまでキレまくると、あのジョン・ウェインの存在感を見せつつあり、ラストは圧巻だった。

中盤の荒廃しきった田舎町の廃家でのラブシーンも、若い新参の部下を演じるローガン・ラーマンに花を譲り、もっぱら鬼軍曹ザック張りの強面で男っぽさを強調。アンジーも自慢の演技だろう。

驚くべきは、重戦車内での爆弾音のリアリティであって、過去の戦車映画では体感できなかった地響きのするような音の迫真力は、アカデミー録音効果賞は決定的だろう。これは怖い。

戦争娯楽映画の定番としてつきものにあるようなヒロイズムは当然なく、ここには勝利も快感もなく、ただただ戦争という地獄に遭遇した男たちの生き様と死に様を描いて行く。

ま、アカデミー賞のノミネートは多くの部門で確実だろうし、ブラッド・ピットの2年連続受賞を阻止する作品も、これから年末にかけて挑戦してくる気配が楽しみだ。

 

■豪快なライナーで、レフトのポールをへし折るホームラン弾。

●11月28日より、全国拡大ロードショー 


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