細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『コーダ*あいのうた』の複雑な家庭環境のなかでの少女の青春

2021年11月10日 | Weblog
●11月9日(火)21-00 ニコタマ・サンセット傑作座<自宅>
M-026『コーダ・あいのうた』"CODA" (2020) Vendome pictures LLC. Pathe Films (2021)
監督・シアン・ヘダー 主演・エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツアー <ビスタサイズ・112分>試写用サンプルDVD鑑賞
<コーダ>という女性の名前かと思って見たら、これは<Children of Deaf Adults>の略称で、耳の聞こえない両親に育てられた子供のことだという。
本人の傷害ならば、大昔に「奇跡の人」という傑作があったが、これはヒロインの少女に傷害があるわけではなく、両親が耳と言語の発生に傷害があるので辛い。
ほとんどサイレント映画のように、会話のない家族、というのも辛いが、その両親とコンタクトしながら青春期を迎えた娘の生活というのも、かなり複雑だ。
どうもややこしいのは、娘が学校で受けている教授やボーイフレンドとは、ごく普通のドラマのような会話をしていても、家に帰ると両親とは手話の生活になる。
恐らく現実にも、このような不運なご家族は存在しているので、こうしたドラマの発想になったのだろうが、テーマは、その複雑な家族で育った少女の日々。
ホームドラマとしての日々は、ごくありがちな<普通の人々>の生活なのだが、サイレントな家族生活と、口論の交錯する学校と、教授との会話は鮮烈になる。
ここまで複雑な家庭の事情を描いた作品は、おそらく過去にもなかったと思うが、その苦難の日々でも少女は青春に希望を捨てないで、アグレシブに行きて行く。
という、かなり異常な設定のドラマなので、この二重構造には、さすがに見ているこちらもフォローしていくのが一苦労で、ご同慶の極みなので辛かった。
しかし現実には、当然、このような異常なプレッシャーの家族もあるからこそ、こうしたドラマの発想が生まれたのだろう、と、不思議な気持ちになるのだ。
サンダンス映画祭では好評で公開権が落札され、<最高賞>や、ほかにも4賞も受賞したという、昨今の異常現象の多いなか、アカデミー賞の評価もウワサされている。

■痛烈なピッチャー・ゴロを投手がはじいて、セーフ ★★★☆+
●2022年1月、TOHOシネマズ日比谷などでロードショー予定

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