細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『天使が消えた街』で迷宮入りした事件の真相???。

2015年06月24日 | Weblog

6月15日(月)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-073『天使が消えた街』" The Face of an Angel " (2014) BBC Films. UK / Multitrade / Ypsilon Films UK

監督・マイケル・ウィンターボトム 主演・ダニエル・ブリュール <101分> 配給・ブロードメディア・スタジオ

つい先日見た「イタリアが呼んでいる」を監督したウィンターボトム監督の、おそらくこれはその直前に監督した作品だろうか、取材スタイルの構成が、よく似ている。

もともと些細なテーマを、ごく個人的な視点でサラリと撮ってしまう監督の作風のせいか、味はあるものの、感動的な名作とはほど遠いプライベイトな作品を作る傾向だ。

だから有名なヒット作品はないが、いつも少し気になる???というスタンスの作品が、要するにこの監督の個性なのだろうか。この作品もまた、例によってミデアム・レアな印象。

「天使の顔」という原題のように、美少女のように清楚な美人女子大生が、イタリアのシエナという美しい古都で殺された事件が2007年11月2日に発生したが、その後、迷宮入り。

犯行は、アパートの自室で起きて、容疑者としてルームメイトの女学生とボーイフレンドが逮捕された。しかし裁判では証拠不十分。

まさに、「イタリアが呼んでいる」の二人の中年おとこのインタヴュー旅行のように、この事件に興味を持ったイギリスの映画監督が映画化のためのリサーチで、現地の聞き込みをするのだ。

「エンジェル・フェイス」といえば、おおお、ロバート・ミッチャムが主演した悪女ノワールを思い出すので、当方としては、そのノワール趣味のラインで見てみたのだが、ちょっと違った。

やはりウィンターボトム監督は、この迷宮入事件を、あくまでジャーナリスティックに描いていて、その事件の再現というよりは、事件に混乱する警察や司法当局の戸惑う様子を眺めるのだ。

ラスト周辺で、どうやら真相らしいのは見えるのだが、監督はあくまでアウトサイダーとして事件を客観していて、要するにエンターテイメント作品のような決着は見せてくれない。

ま、現実の未解決事件で、しかも被害者はイギリス女性だが、事件はイタリア警察の管轄である。だから監督は明言を避けたのだろうが、これが実は作品のウィークポイントになってしまった。

「ラッシュ/プライドと友情」でもそうだったが、ダニエル・ブリュールという役者の表情には、ヒーローのような強さはないので、この映画作家としての意思の強さは見られない。

それは、映画の中での私生活でのトラブルも背負っての役柄だったので、よけい優柔不断な印象に見えたのが、この作品の不透明さを現しているようで、歯がゆい。

 

■セカンドの横を狙ったゴロが好守備で惜しくもアウト。 ★★★

●9月5日より、ヒューマントラストシネマ有楽町他でロードショー 


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