●6月24日(火)10-00 西銀座<東映本社7F試写室>
M-067『さまよう刃』"Broken" (2014) C J entertainment / echo films / 韓国
監督・脚本・イ・ジョンホ 主演・チョン・ジェヨン <122分> 配給・CJ エンターテイメント・ジャパン ★★★☆☆
ひとり娘が夜の街で拉致されて、翌日、死体で発見された。妻を病死で失ったばかりの工員の父は絶望した。最近、よくニュースで見る事件だ。
やがて目撃証言などで、犯行は街の不良グループの少年たちだが、未成年のために<少年法>によって、裁判をしても死刑にはならない保護監督だ。
原作は、東野圭吾の同名小説。これを韓国のトップ・プロダクションが7年もの歳月をかけて完全映画化したというだけに、気迫は充実している力作。
あの名作「母なる証明」の、これは父親バージョンだが、ただのリベンジ映画ではなくて、少年犯罪の軽発さと果てしない狂気、それに追いつけない刑法・・・。
いわばクリント・イーストウッドの「許されざる者」や「グラン・トリノ」にも共通する、いわれない悲劇に対しての、肉親の魂からの怒りが全編を貫いて壮絶だ。
そして、いまの韓国の都市がかかえる犯罪の多様性と異常さの迷宮化は、まさにポン・ジュノの「殺人の追憶」に似て、得体の知れない凶悪さを臭わせる。
だから犯罪の発覚や経緯は、別にいまの時代には限らず、よく西部劇やフィルム・ノワールにある古典的なテーマともいえるだろう。しかし現実に現在も多発しているケース。
その題材を、さすがに時間をかけて推敲された監督ジョンホのシナリオは、スマホやセルラーを駆使した、まさに現代の犯罪とその実態を、執拗に描いてみせて飽きさせない。
主演のジョエンも、ごく平凡な、真面目な父親の混乱と怒りを表現しキレまくるが、担当捜査官のメタボなソ・ジュニョンの刑事が実にいいのだ。ユーモアと断罪。そのバランス。
とくに「狼たちの午後」のような、群衆を巻き込む逮捕劇のデリケートな処理などは、まるでニュース映画を見ているような臨場感もあって、見応えがあった。
どうもわが国の犯罪ものは、「渇き、」のようにスラップスティックか、おしなべてお茶の間好みのエンターテイメントになりがちだが、このようなシリアスな現代犯罪もののドラマは、韓国映画が図抜けてリアリティーがある。
■しぶといショートオーバーのライナーが左中間を抜いてツーベース。
●9月6日より、ヒューマントラストシネマ渋谷などでロードショー
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