諸葛菜草叢記

 "窓前の草を除かず“ 草深き(草叢)中で過ごす日々の記

梅雨の花 三題

2009-06-11 22:01:02 | 日記・エッセイ・コラム

  関東地方は、梅雨入りしました。雨は、少々、陰鬱ですが、これも、「四時の行い」です。草木大地には、必要なことです。十分、水を含みました。茄子、キュウリは、日に2~3個くらいの収穫になります。ミニトマトは、一枝10個ほどの青い実をつけて、5枝が、重く垂れ下がっています。、もうすぐ赤くなるでしょう。雑草群落のイネ科のものは、穂をつけ背丈を、延ばします。、匍匐するカネムグラは、さらに、空き地を埋め、盛りあっがってきています。さて、この時期に、時を得て、咲く花々も、いよいよ盛りです。

  ■  梅雨に咲く 露の華

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  昨夜来の雨は、上がっている。庭先を数歩、歩く。ふと足元に目をやると、花が、終わったばかりのサツキに、なんと、また花が咲いているでは、ありませんか。花びらは、透明な水玉で、朝の陽を宿して、光っております。黒い穴の奥底から清水を、吹き上げて居るようで、幻想的でもあります。古代人なら、さしずめ、聖なる神の啓示を見たかもしれません。光をおびた水玉は聖水です。これが、雨上がりの後にしか咲かない、【露の華】です。※(注・1)

  ■  紫 陽 花

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    梅雨に咲く花と言えば、アジサイが、まあ、代表選手みたいなもです。「五月雨の降りつ前裁に、おおきなあじさいの花の毬が、うち叩かれいる様子などよく見かける。、昼寝の後の眼には、はっきりと色異に眺められる。」と『 歳時記』 にあります。「昼寝のあと・・・」なんてところは、虚子先生、自宅の庭の紫陽花を見て、『季語』の説明を編ぜられた、ご様子が覗われて、微笑ましくもあります。▼ このご近所でも、一軒に1・2本は、咲かせております。直ぐお隣さんは、『墨田の花火』なんて園芸改良種を自慢されております。よく親しまれている、メジャーな花です。

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    アジサイは、青い花が、固まって咲くので、【集(あず)・真(さ)・藍(あい)】と呼んだためと伝えられております。私ども日本人との付き合いも、相当古く、万葉の時代には、すでに、抒情の世界に登場しています。「紫陽花の 八重咲く如く やつ世にを いませわが背子 見つつしのばむ 」〔万葉・20) 約12~300年の間の連綿とした、お付き合いと言うことになります。

 毬形の普通何処でも見られる紫陽花は、原種を、ガクアジサイ〔写真)として、日本で生まれた園芸品です。江戸時代中期から、改良が盛んだったようです。花は、殆んどが、装飾花で、雄しべを持った花はありますが、雌しべは、退化しており、従って、結実いたしません。▼ 装飾花の色は、多彩です。赤紫・青・白とその中間の色合いは、殆んど見かけます。土壌の質によって、花色は、アルカリ性は、赤の方へ、酸性は青と変化するようです。▼ 別名も沢山あります。- 七変草 八仙花 刺繍花 手毬花 瓊〔玉〕花 紅がくーーetc.こんな具合ですが、花の様子から連想された、洒落たネーミングです.。

  「 紫陽花の 大一輪と なりにけり 」  俳句に詠われております。紫陽花が、咲き誇り、まるで、木全体が、一輪の花に成ったように見える様子が見えます。しかし、華々しく、幾つもの【装飾花】を、咲かせ続けるには、紫陽花の【木・葉・根】は、相当のコストを負わねければならのではないか気になります。装飾ー化粧ーに懸命になる女の子、養う親の関係と言ったら、わかりが、早いかも。しかも、コストをかけた割には、【実らない】と来たら、身につまされる方は、多いのではないでしょうか。

  生えた土壌による花の色の変化、【改良】という【外部圧力】に対応しえた能力があった。。だから、今では、日本全国到る所に、紫陽花は、花を咲かせることが出来たのではないでしょうか。。小さな虫たちを、媒介にした繁殖方法は、季節の制約を受けます。しかし、人間の好奇心を利用したほうが、遥かに有利でしょう。こうして、温暖な山地にしか、住み処がなかった、アジサイは、生息域の拡大を図った。これぞ アジサイ【DAN】(遺伝子) に秘かに組み込まれていた、子孫繁栄の大戦略のように思われます。 

  紫陽花 曰く 「山は、開発され尽くしております。山腹を走る何本もの舗装道路、トンネル、ゴルフ場、分譲地のために削り取られた日当たりの斜面。棲みにくくなったものです。その点、広々とし明るい平野部はいいものだ。それに、黙っていても、人間たちは、手入れを怠らないし・・・結構なことです。ハイー。」

     ■  露 草

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 『 露草の  をはりの瑠璃の 一雫 』(葭葉 弘子)  俳人の観察力・表現力には、毎度、感服いたします。露のイメージなのでしょうか、季語としては、秋になっております。しかし、梅雨の時期に、、路傍の廃土の盛り上がりを覆いつくすほどに、群がりて咲いていたり、裏庭の雑草群の一画を占めて、青い小花を立ち上がらせていると、つい応援したくなります。露草は、やはり、梅雨の花です。

  ツユクサも、日本の人々との付き合いは、長いようです。★ 「 つき草に 衣色どりすらめども うつろふ色いふが苦しき 」★〔万葉 巻7)と、既に詠われております。もっとも、万葉の時代には、染料として利用されていたようです。つき草→着き草→月草→露草と、やがて、その呼び名も変化していったとされています。(野草大百科ー北陸舘) 朝日が射すのを待って、花を開き、昼頃には、萎んでしまうので、儚さの代名詞ような【露】とコラボしたのでしょう、露草が一般化いたしました。

    ツユクサの花の構造を、よく知りませんでした。( 栗の花の時もそうでしたが・・。)、ふつう梅、桜など、雄しべ、雌しべはすぐわかります。ものは試しで、咲き残っていたサツキの花で確かめてまいりました。花びらから、グット突き出された、5本の雄しべとその奥にある雌しべを確認することができました。▼ツユクサでは、どうか・?牧野図鑑に当たりましたところ、花の先へ、つきでている3本のうち、真ん中の一番長いが【雌しべ、】 左右が【雄しべ】でした。〔写真・参) 雄しべの黒い先端部は、もう少し時間が経てば、黄色い花粉部を開くようです。花の中間に黄色く立ち上がっている部分は、先に開いた雄しべのようです。奥の3個は、どうもオトリのようです、小蜂が突いていました。

  ▼ 1:30pm 受粉後、青い花びらが、雄しべ、雌しべを、すっかり包み込んで丸くなっておりました。5:30pm 花の咲いていた部分は、3mm位の【緑の包み】になっておりました。青い花びらといえば、点のようにかすかに残しているだけです。更に、【緑の包み】は、サヤによって覆われて、保護されます。巧妙な仕掛けです。興味は尽きませんが、この位にします。

   青い小花(2cmくらい)の容姿と、名前からくるイメージとは別に、強い生命力を持っているのがツユクサです。田んぼっ川の岸辺などで、草刈の時には、この草を、流れに落とすなと言われております。流れ着いたところで、再生し根づき繁茂するからです。将に、着き草の名に、ふさわしくはありませんか。

 『 低栄養だと雄花になる ? 』 これは、A新聞の「小見出し」です。数年前のものですが、本文をノートしてありませんでした。町の、図書館で、数冊の図鑑に当たりました。、「見出し」の様な、アジサイの生態を説明したものはなく、裏づけがとれません。そこで、以下は、私見といたします。▼ ツユクサは、栄養素のきわめて少ない土地に、根を下ろしてしまった場合、雄花だけになるのは、【生殖成長】を、とりあえず諦めるからである。{雄しべ・雌しべ=受粉}→〈結実〉の生殖作用は、それなりのエネルギーが、必要でしょう。、それに低栄養だと、上手く実らないかも知れません。▼ それでは、どうやって、子孫を増やすか。今で言う「危機管理」とでもいいましょうか。

  ツユクサが、強い生命力の持ち主であることは、先に申しました。生長を始めますと、茎は、よく枝別れして、下部は、地をはってふえ、上部は斜め上に向かって伸びます。そして、節の部分から根を出しで、生育面積をふやして行きます。まず、、【 栄養生長 】に全力投球をいたします。十分な栄養生長して。体力を蓄え、【雄しべ・雌しべ】のそろった花を咲かせ、実を結び無事に子孫を残していく。たいしたもんです。

    露草も、頑張っています。強かです。梅雨の合間の薄日に、青い小花が、立ち上がっております。  これで、梅雨の花 三題は、終わりといたします。

  追  伸

  ♪ 雨がふります。雨がふる。 けんけん小雉子が今啼いた。 小雉子も寒かろ  寂しかろ~#

  これは、北原 白秋の「雨」と言う童謡の3番です。この歌詞を見て、すぐに歌える人は、昭和20年以前に生まれでしょう。

  我が家の西側は、ゴボウ畑が広がって、川まで続いております。茎は胸丈に生長し、大きい葉が地面を、すっかり覆っております。河原から遠征して来たのでしょう、『ケーン ケン』とキジの啼く声が、ゴボウ畑から聞こえてきます。本当に、聞こえるのです。「ア~!また聞こえました。『ケーン ケン』」

    ※注・1  コモリグモという名の蜘蛛がおります。写真は、きめ細かく編まれた蜘蛛の巣に 雨粒がついたものです。

  関東の 北のはずれの  畑野なか われ退屈し  花とたわむる  夢 蔡

       11:30 pm

  

 

 

  

   

  

   

   

  

  

  

  

  

  

  


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