垣に咲き あるじも 知らず からすうり
水原 秋桜子
一夜限りの 愛は 悲しも 夢 蔡
撮影したのは、午後8時30分である。あまり強くない 懐中デンキを当てただけ。花の中心にピントはいかなかったが、花の萼から 絹糸の様な純白の粗毛を出して、周りの葉、花同士に絡みつき、花粉の受粉効果があがる様に、思い切り外のほうに、突き出している様子が幻想的に撮れた。この花は、雄花である。雌花は、雄花の奥、蔓の真ん中に単生して、時を待っている。光の中を、小型の蛾が飛んだ。羽虫も多い。鼻を近づけると、微かに甘い香りがする。媒介者の虫たちには、それで十分だろう。【 カラスウリ 】という名前は、初冬の頃まで、真っ赤な果実が、樹上に永く残って居るので、きっと、カラスが、食べ残したのではないか、に由来する、とか。
雄花は、翌朝 午前8時頃には、その役割を終えたのか、萎んで落下してしまう。何だか、世のオトウサンの末路みたいで、哀しいと言おうか、憐れを誘う。「 花の命は短くて 苦しきことのみ多かりき 」と、か弱い女性の生き方を形容したけれど、これは、嘘である。受粉した雌花は、しっかりと生きて 実を結ぶ。 ▼ 厚労省の発表によると、日本人の平均寿命は、女性 85.99歳 男性 79.19歳で、過去最高になったと言う。結構なことだが、♪ 大和男子と 生まれなば 散兵線の花と散れ~#はイヤです。、♪ 俺も生きたや 俺も生きたや 恋のため~#(流 転 昭12の歌謡曲)といきたいです。( この引用は、古過ぎ )
★ 続いて、【 布 袋 草 】 の 登場。 毎年、睡蓮を生やした水瓶の中に入れて、水の汚れを取り除いていた。水の中に浮かせて居るだけでは、あまり大きくはならない。花も小さい。寒さには、弱く、管理しないから、冬に枯らせてしまう。今年は、大株を、近所の友人に貰って、下に土を入れた水槽を作り、根を張らせた。結果は、人目を惹く、花を咲かせた。じっくり観察するのは、初めてである。
【 布 袋 草 の 花 】
布袋葵 和蘭水葵 葉柄のふくらみを布袋の腹に例えた名。熱帯アメリカ原産。明治中期に渡来。池や水盤で栽培するが、暖地ではよく茂り、水田や溝に雑草化する多年生草本。上部の花弁のデコレーションは、見事と言うしかない。花全体は、薄い紫で、中央に向かって濃くなっているが、上部の花弁だけは、紫を一段と濃くして、しかも、黄色を配色する。コントラストの妙、妖艶して、まことに目立ちます。(牧野日本植物図鑑を参照)
上部花弁の紫色の中央と、黄色の部分の綾は、正に、【 スイート・スッポト 】・【観音様の後光】である。(花について、書き込んでいると、小沢 昭一風に言えば、相当に、助平な方向に話が進む。言い訳がましいか。何せ、花とは、生殖器そのものだから。) ▼ 目を凝らして見れば、関税官だってお手上げするだろう、【秘密の花園】のコピーではないか! 虫たちを引き寄せるだけなに、この花は、其処までやるのか!と言ってはみたもの、考え過ぎ。と言われれば、マアその通りで・・・ある。 昆虫にとっては、偽装にしか過ぎないが、黄色の信号に向かって、まっしぐらに飛び、花の中心部にもぐりこんで、蜜を吸う。この時に、花粉は、雌しべへと運ばれる。そうして、初期の目的は果たされて、共生者は、互いに満足する。たしかに、それ以上のことは、穿ちすぎである。
早朝に咲いた花は、夕刻には、茎が真ん中より折れ曲がり、水中に没しいた。(翌日に撮影) これは、如何した事か・・・・?
推測するに、受粉は完了したので、【花】の役割は終わった。何時までも水の上に顔を出している必要は無い。水上生活する動物に食われるかも知れない。水中に没することで、それを防ぐ。後は、根からの栄養で生長し、じっくりと、種を結べば良い。こんなところである。科学な世界で、99.9%は、仮説であるという本が在るくらいだ。此のくらいの仮説は、許されるだろう。
★ 生物は海の中に誕生した。最初に、陸に上がるのは、植物である。以来、4億年経ち、いまや植物は、100万種を超える種に、分化し、たくましく生きているそうである。植物と動物の分化については、どこから、どう分かれたかは、定説はなくいようだ。植物が、光合成という能力を、どのようにして獲得したかは、謎である、とか。
「 植物は、じつは、したたかで、しぶとい生き物なのだ。・・・・・あの、色とりどりの、さまざまなかたちの花々も、もとをただせば、ひとえに虫の目をひきつけたいがために考えだされた『 しかけ 』なのだ 。」 (誰がために花は咲く 大場 秀章著 光文社)
植物は、『 たくみ 』 である。閑人の徒然と、戯言には、いい材料を提供してくれる。
布袋草 緋目高入れて より咲きぬ 中村 若沙
さて また申し 暑さ ひとしを 夢 蔡