諸葛菜草叢記

 "窓前の草を除かず“ 草深き(草叢)中で過ごす日々の記

懐かしき 5月富士 

2012-05-20 00:46:42 | 日記・エッセイ・コラム

  不二(富士)ひとつ うずみのこして 若葉かな(蕪村) ▼ 新緑の富士山の北麓=富士五湖地方を訪れたのは、十数年ぶりである。短かったけれど、“青春のほんの一時期”を過ごしたことがあるので、ここは懐かしい。▼ 中央高速道の大月JNCから川口湖線に入ってから30分ほどで富士の大山容が姿を現すのだが・・。だが、今日は雲の中で、裾野のごく一部しか見えない。

 日が落ちて、間もなく、富士山頂を包んだ雲が大きく光った。低く重い雷鳴が轟いた。山頂の雲が動き、そして去った。富士山頂は闇にとけていたが、星が瞬ていた。ー早朝に、シャッター・チャンス有り、期待できる。

 朝光(あさかげ)に 大嶺(だいれい)白く 輝きて 雪解(ゆきげ)半ばの 五月(さつき)富士あり 夢蔡ー

20120519_010 ▲① 6:30AM 川口湖畔、北々西より富士を望む。*写真左が、東である。朝日が山頂を照らす。わずかだが、雲が湧き始めている。南東(太平洋)からの気流が、富士山に当たって、雲を作る。

20120519_009 ▲② 雪の境目は、五合目である。雪のない所は、青木が原の樹海などを含む原生林地帯。*正面中央、山頂から下へむかって、凹地が見える。“吉田の砂走り”である。その左側に、吉田口登山道がある。夏には、ジグザグの光りの道が見える。

ーー湖に沿って北側に回り込む。

20120519_018 ▲③ 川口湖畔・北浜 7;10AM 映りこむ“逆富士”の撮影ポイント。湖面の静止状態は、日の出から一時間以内か?。富士山を囲む気層が動き始める。雲が湧く。富士は小波に砕ける。

20120519_019 ▲④ 写真中央、尖っている。日本最高地点の“剣が峰(3776メートル)”である。五合目から上は、風に曲がったハイ松の茂みを抜けると、ほとんど植物のない岩場の登山道となる。

20120519_026 ▲⑤ 7:30AM (写真右)、西よりの風が、ゆるやかに吹き込む。(写真左手)、東ー太平洋側から流れ込む暖かい気流とぶつかって、雲が湧き上がり始める。 *8:00AM、富士山頂は、雲に隠れてしまった。

 湖畔は、初夏の緑に包まれ始めてたが、湖水が冷たいのか、葦原は、まだ枯れたままである。もうじき、“角ぐむ”だろう。はやくも、ヨシキリが、甲高い声をあげていた。

 葭切や小波に砕け逆さ富士  夢蔡

            -----了ーーーーー


著莪(シャガ)観察記

2012-05-12 22:14:20 | 日記・エッセイ・コラム

 庭の小暗がりに、“著莪の花”が咲いております。(盛りは過ぎましたがー) ▼ 5月の連休頃、よく咲いておりました。しかし、写真の対象には致しませんでした。(撮っても、「“花の中心”が、“白ハネ”してしまって、写真にならない。」と思っておりました。)▼ とは言っても、柘植の根元にかたまって咲いたりすると、やはり気になります。

著莪咲いて 木暗き庭に 白明かり 夢蔡

20120512_024 ▲① 『 紫の班(ふ)の佛めく著莪の花 」ー虚子ー ▲ 「蝶が風に乗って花に来て、飛び舞う。婦人これを手折りて飾りとする」 (「三才図会」意訳)

20120507_034_2 ▲② 何枚か撮っておりました。すると、派手な花弁の部分に、ハエがもぐり込んで、しきりにそこをなめているおります。「~これってナニ~?」(蝿がいた部分を舐めて見ましたが、苦い味でした。)

20120509_012 ▲③ 別の著莪をマクロで撮りました。すると、濃い紫とオレンジ色の派手な花弁と、先端がギザギザした小ぶりの花弁が、花の中央から立ちあがって、一対のなっております。*「花の真ん中には、“雄しべ雌しべ”が鎮座しているものと決めてかかておりました。

 著莪の花の基本形ーー

20120512_023 ▲④ 派手な花弁(外花被片)と、ギザギザ花弁(内花被片ー先端2裂)の組み合わせが、三対あります。模様のない白い部分は萼片。これが、通常に見る「シャガの花一個であります。

 ー【 シャ ガ 】(アヤメ科) Iris  Japonica   ▼ ヒオウギの漢名「射干」からとった名。中国原産。本州から九州に分布。湿った林下に群生する常緑多年生草。根茎を地下に這わせて繁殖する。アヤメ科はすべて属名「Iris」(アイリスー「虹の精」)がつく。種名は Jponica(日本)

20120510_005 ▲⑤ 派手色の外花被片と2裂した内花被片の隙間から棒状突起が見えている。これが“♂雄しべ”。“♀雌しべ”は、ギザギザ(花柱)の直ぐ下の内側にある。

20120510_007 ▲⑥ 横から見た「著莪の花」  オレンジ色を更に目立つように先端を鶏冠(トサカ)状に大きくして、蝶などを誘っている。シャガは、「胡蝶花」とも漢字を当てます。

20120512_007 ▲⑦ 著莪の花の思惑どおりにモンシロ蝶がやってきました。

20120512_021 ▲⑧ 日本にあるシャガは、「結実」することがない。“雄しべ雌しべ”による“有性生殖”が出来ない種である。総てが、根を派生させてクローン化で増殖する。

 *花の巧妙な仕掛け=トサカ状の案内看板は、美しく見事である。客はそれにつられて蜜を飲む。しかし、その行為も、悲しいかな無に帰してしまうのである。▼ この花容は、人を癒すには十分である。

ほの白く 垣間に咲きし 著莪の花 訪(おと)なう人に た折りて一輪  夢蔡ー

    ーー著莪観察ーー了ーーー


雉と出会う 夏に入る時

2012-05-03 18:09:41 | 日記・エッセイ・コラム

  四五寸の葎に雉の見えずなり(子規) まさに、その通りです。「ケンー・ケ~ン」 早朝より声が響きますが、いっこうに姿が見えません。▼ 今朝は違いました。歩の途中、“若宮稲荷”を詣でました。すると、境内の向うのに覆われた“耕作放棄地”の中を“雉”が悠然と歩いておりました。なんとー!「ゴリヤク」か!ー

雨降りて 風吹き陽さかり 草生(おう)る  雉(きぎす)歩みて 夏に入る野辺 ー夢 蔡ー  

20120502_040 ▲ 【キ ジ】 短めの翼と頑丈な足を持ち地上で行動する。 成鳥♂は、頭部から下面は金属光沢のある濃緑色、顔は赤い。(*「山渓フィールドブック・野鳥」)  ー  雉は、日本の“国鳥”です。「メスが母性愛に強く、ヒナをつれ歩く様子が家族の和を象徴する。」ー1947年(昭・22)3月22日指定。ー

  父母のしきりに恋し雉子(きじ)の声 (芭蕉) ▼ たしかに、ケンー・ケン~遠く響くように聞こえてくる“雉の声”は、どこか物悲しくもあります。芭蕉もそんな“声の響き”に人恋しさを重ねて吟じたのかもしれません。

静かなる 五月の朝に 雉子(きじ)啼きて  空腹なるや   恋歌なるや ー夢蔡ー

 「♪~雨が降ります~雨が降るーーケンケ~ン 小雉子がいま鳴いた、小雉子も寒かろ、寂しかろ~」 (北原 白秋 童謡 「雨」 ) こんなイメージをずっと持っておりました。しかし・・・

20120502_029 ▲ 「ケンー、ケ~ン!!」と 鳴く姿。横からしか撮れませんでしたが、その瞬間は、翼を大きく2度羽ばたき、おもいっきり声を張上げたのです。それは、まさに {縄張り宣言のファイティグ・ポーズ} そのものではありませんか。-

ー雉も鳴かずば撃たれまいーー

20120502_050_3 ▲ 遠く川向こうの藪の中から、応えるように鳴き声が聞こえてきました。▲ 雉は、“国鳥”でありながら、狩猟対象の鳥でもあります。 少なからず矛盾しておるようですが

朝光(あさかげ)の 雑草(あらくさ)分けて 雉子(きぎす)行く 貌あかあかと “大見得”切りて 夢蔡   

20120502_054この後、画面の左奥にある篠藪の中に消えて行きました。

静かなる 五月の空に 雉の声 憲法記念日 六十五周 ー夢蔡ー

 ー稲荷さまから土堤に上がると、対岸の向に354線が見えます。沢山の車が行き来しております。村は静です。雉の姿が目に焼きついた一日でした。       

        -----了ーーーーー