秋の気配が漂い、木々も夏の猛々しさを失い,葉先がわずかに色を変え始めた。沼までの道筋は、たわわな実りの稲穂が黄色く色づいて、畦の草々も枯れ色がかり、折り伏す姿がめだち、心地よい涼風がそよぎ立っております。
野分過ぎ 空合い赤き 野辺のひと 後ろ姿に 言問(ことと)いて見る ー夢蔡ー
上記 詠草の風景以外は、フィクションであります。秋立つ夕暮れ時に、野を歩く人(←この場合は、どこか愁いを含んだ女性) とすれ違う場面を願望想定いたしました。ー
しかし、本ブログは、上記とは全く関係ありません。本来は、「処暑の庭ー②」として予定しておりましたものですが、怠けていました。この夏の備忘録として、掲載いたすもであります。
ーー<・・ -では、おそまきながら・・>ー
ーまだ、夏の盛りの頃、草刈作業に疲れ、木陰で休んでおりますと、アシナガ蜂が、枯れ枝の繊維部分を齧りとっておりました。巣の“材料集め係り”の“働き蜂”であります。 何度も通いつめたか、木肌にけずり取った後が目立っております。
▲ 材料が口いっぱいになったようで、アシナガ蜂は飛び立ちました。それとなく、行く先を見ておりますと、スイカズラが巻きついたコデマリの繁みに入り、姿が見えなくなりました。
~-そっと近づき、繁みを覗きました。ー
▲ ありました。巣の径20cmほど、およそ20~30匹のアシナガ蜂が蠢いておりました。この日は、猛暑日でありました。見たところ、巣穴を覆うようにへばつくようにして、暑さを防いでいるようにも見えます。*白い部分は、羽化前のサナギが入っている穴で、蝋状の白い蓋が掛けられ、大切に保護されております。
ー 別のショットを“部分拡大”してみると・ー
▲ 未完成の巣穴には、すでに卵が生み付けられておりました。ハタラキ蜂は、幼虫が孵るまでに巣の加工を急がねばなりません。外回りのハタラキ蜂が集めてきた枯れ木の繊維部分を唾液で固め、幼虫が十分成育できる大きさにいたします。*この巣で働いている蜂たちは、一匹の女王蜂から生まれ、全部メス蜂で、卵は、やがて生まれいづるその妹達であります。 愛おしそうに見つめております。
巣の奥の 白き卵は 光り帯(お)ぶ 小(ち)さき生命(いのち) を 獲るにしのびず ー夢蔡ー
ー実は、家人たちの顰蹙をかっております。「“蜂の巣”を退治しないでおいて、刺されたらどうするの・・ー」 「退治~ とはおおげさ!彼らの縄張りを出来るだけ避けて、そっとして置けば、だいじょうぶ・・・」なのでありますが。
ーハタラキ蜂は、義務を果たしております。-
▲ アシナガ蜂は、狩りをする蜂=狩人蜂であります。この点、花々と取引して、その花粉・蜜を生きる糧としているミツバチとは違いまして、その性格は、まことに攻撃的で、刺されると毒性が強く腫れ上がります。▼ おりしも、狩り専門のハタラキ蜂が、青虫を捕らえて、だんご状にして持ち帰りました。待っていた内勤者は、さっそくその一部をくわえて、幼虫のもとへ運びこみます・・・。
--<>-ある日、留守居役の蜂たちが、にわかに騒然といたしました。一匹のスズメ蜂が枝の隙間から入り込みました。このときは、数秒の後に飛び去りましたが、偵察ハチのようです。やがて、このアシナガ蜂の巣は、スズメ蜂の狩人軍団に襲われるかも知れません。(←シャッターチャンスがあるかもと期待していましたが・・・)
ー 突然ではありますが、この<観察記>は、ここで終了であります。庭に植木屋さんが入り、植え込みは形良く枝打ちされました。この時に“蜂の巣”は、{退治}されてしまいました。ー
<「この犬は、僕のものだ」と、あの坊やたちが言っていた。「これは、僕の日向ぼっこの場所だ」 ここに地上の横領の始まりと、縮図がある>と、パスカルは言っております。
自然・地上の「占有管理」を高め過ぎるのは良いことではありません。過日の台風で、「形を整えた花木」←(人間にとって見場がいい) は折れてしまいました。▼ これにて、「夏の備忘録」は終わりといたします。
ー秋も深まり夜も長くなりました。秋雨前線が停滞して、夜半、雨となりました。
秋霖(しゅうりん)の 肌寒き夜は こおろぎの 軒に忍びて 「す そ さ せ」と鳴く ー夢蔡ー
ーーーー<了>---