河童アオミドロの断捨離世界図鑑

河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

もっきり荘・最後の住人

2009年08月28日 | 静かな日常編
インターネットで賃貸検索してると

「家賃11000円、敷金礼金0円」というのがあった

おっつ、今のわてにぴったりじゃん、と思い、現物を見に行った

森を抜け、墓場を抜け、金星台の山のふもとに着くと、そのアパートは在った

窓ガラスは割れ、壁にはヒビが入り、人の住んでいる気配が無い

中に入り、暗い廊下をうろうろしていると一室のドアが開き

「何をしてるんだ」

とおじさんの声がした

「あっつそのあの、もっきり荘はここですか?」

「何が目的だ、地上げ屋か」

「いや、ここに住もうと思って・・・」

「ここはもうすぐ取り壊しだぞ、不動産屋に出てるはずがない

わしが最後の住人じゃ」

「あれ、インターネットでワンルーム三帖11000円って出てましたよ」

「そりゃ安いな、でもここは全室四畳半だし」

その時デジャブが襲ってきた

そういえば、この部屋とこのおじさんはどこかで見たことがある

狭い廊下、万年床、小さな流し台、共同トイレ、タバコで変色した壁、
棚いっぱいのレコード盤、

中野区の西武新宿線沿いに在った気がする

「取り壊しは中止になったんか?くわしく教えてくれ」

「いや、もっきり荘はここじゃないのかもしれんです
また調べて連絡します」

「お願いするよ、今日はこれからバイトだから、明日また電話してきてくれ
ほれ、電話代20円だよ」

「ありがとうございます、20円いただきっと」

そうして、そのおじさんと別れたのだった


これは今日の半分実話である