先日は表参道から青山一丁目まで歩いたが、今日はその少し先に高橋是清翁記念公園があるので行って見た。赤坂郵便局から赤坂方面に歩くと手前にカナダ大使館、先は草月会館、向かいに東宮御所のある赤坂7丁目にその公園はある。
高橋是清はダルマ大臣として名を馳せた人物で元々は森有礼の勧めで文部省や農商務省の役人を歴任した。そして世に名が知れたのは1904年に日銀副総裁として英国での戦費調達のための外債引受交渉の成功で、その実績を買って1911年に日銀総裁になる。その後、1913年大蔵大臣、さらに当時の首相原敬が暗殺後は内閣総理大臣になっている。ただ、半年で内閣は瓦解、その後、政治が混乱するが、加藤高明らと政友会、憲政会、革新倶楽部の護憲三派を結成、清浦内閣を辞任に追込み、加藤高明内閣で農商務大臣にもなっている。当時の彼の人気は高く、あるデパートが彼のそっくりさんコンテストを行ったくらいである。今の政治家では全く考えられないほど愛すべき大臣で人気もあった。そのためか、日銀総裁で唯一紙幣の図案(50円札)もなっている。
その後、犬養内閣、岡田内閣で計6度目の大蔵大臣になり、金再輸出禁止と国債の日銀引受を行なうことで、世界恐慌で厳しかった日本経済を立て直した。しかし、軍備予算の縮小を唱えたため、1936年2.26事件で暗殺された。何と現役大臣ながら82歳だった。
その私邸があったのが、この地を1938年に東京市に寄贈し、この公園となった。公園の面積は5200平米あり、今はカナダ大使館になった土地の一部も昔はこの屋敷の一部だったほど広かったらしい。当時の建物は小金井市の江戸東京たてもの園に移築されて戦火をまぬがれたので今も見ることが出来る。
公園正面入ったところには子供の遊具があり、普通の公園だが、中に入ると灯篭や石垣があり、奥には高橋翁の銅像がある。今から丁度紅葉の季節で、美しい。その色づく葉を見ながら、当時軍部が強かった中で財政健全化を唱え、日本を不況から脱却させ、命がけで職務を全うしたその生き方を偲びたいものだ。
今はタクシー運転手の休憩場所として有名で、トイレに行ったり、のんびり一休みする人や犬の散歩を楽しむ人など、数少ない都会のオアシスであり、かつてここで血なまぐさい2.26事件などあったことも想像だに出来ない。