◎イスラーム 13(五行 2)
●五行
・五行はムスリムであるための信仰行為としての5つの義務である(5柱ともいう)
1、信仰告白
2、礼拝
3、喜捨
4、断食
5、巡礼
2、礼拝(サラート)
★マッカの大モスク(マスジド・ハラーム)に向かって毎日5回の義務としての礼拝
成人男女のムスリムの義務として、
日没後(マグリブ)、
夜(イシャー)、
夜明け前(ファジュル)、
正午を少し過ぎた頃(ズフル)、
午後(アスル)
の5回の礼拝が行われる
礼拝はアッラーへの服従を示す最も純粋な行為である
イスラームでは、原則として1日は日没から始まる
木曜日の日没から金曜日の日没までが、イスラームの「金曜日」となる
現在では、一般的に「明日」は翌日の明け方からをさす
礼拝の時刻は、地域や法学派によって多少ことなり、それぞれの土地にあわせて計算される(礼拝の時刻は現地の新聞に掲載されている)
●サラートは、アッラーを敬い、平和を願う祈りであり、日本人の「困ったときの神頼み」ではない
「礼拝」は個人的な頼みごとではない
○神に願い事をして、願いがかなったとすると、それは人間が自分の都合のいいように神をあやつったことに等しい
人間が自分の勝手な意志で万能の神を思いのままに動かすことは理屈に合わない(「日本人のためのイスラム原論」小室直樹、集英社)
○個人的な祈り、祈願は「ドュアー」といい、否定されてはいないが、個人が自由に行うもので、「5行」には属さない
アラビア語で行うサラートと異なり、母国語で祈ってもよい
○ムスリムはどの法学派のモスクで礼拝してもよい
○礼拝場所は不浄でない場所ならどこでもよい
モスクでも、自宅、仕事場、路上、屋内でも屋外でもよい
この不浄な場所とは、人や動物の死とつながりをもつ場所をいう
○礼拝では、必ずマッカの方角(キブラ)を向かなければならない
マッカの方角を測定するために、ムスリムは天文学を発展させた
○礼拝前に、浄め(ウドュー)や沐浴(グスル)を行ってみずからを清浄な状態にしなければならない
浄めの儀式には、きれいな水か砂をつかう
「浄め」は、口と鼻を水ですすぎ、手足や、顔、頭髪などを水で洗い清める作業である
多くのモスクは、沐浴のための泉をそなえている
水のない場所などでは、清潔な砂をもちいたり、壁や地面に手をつけて、その手で全身をさすったりする代替方法も認められている
●礼拝の基本動作(「岩波イスラーム辞典」より)
①意志表明:直立してキブラを向いて、礼拝の意志表明をする
②タクビール:両手を開いて耳の高さに上げて「アッラーは偉大なり」と唱える
③直立礼:両手を体の前で組み、クルアーンの開扉章および任意の3節以上の節を唱える
④屈折礼:タクビールを行った後、両手を膝頭につけて腰を曲げ「至高なるわが主に栄光あれ」と3回唱える
⑤直立礼:「アッラーは彼を称讚する者の声を聞き給う」「われらの主よ、あなたに称讚あれ」と唱え直立する
⑥平伏礼:タクビールを行った後、額を地面につけてひれ伏し「至高なるわが主に栄光あれ」と3回唱える
⑦座礼:タクビールを行った後、正座して「主よ、私をお許しください」等と唱える
⑧平伏礼:⑥と同様
⑨タシャッフド:タクビールを行った後、座礼にもどりタシャッフド(証言)と呼ばれる文句を唱える シャハーダ(信仰告白)を唱える時に右手の人差し指を立てる タシャッフドの後に預言者の祝福祈願を唱える
⑩平安の祈り(サラーム):首を右に向け「あなたがたの上に平安とアッラーの慈悲と祝福がありますように」と唱える 続いて首を左に向け「あなたがたの上に平安とアッラーの慈悲と祝福がありますように」と唱える
○平安の祈りの対象は、左右の仲間の信徒であることが多いが、ムスリムは肩の上の守護天使にも呼びかけていると信じてきた
この一連の動作が礼拝の1単位で、1ラクアという
礼拝ではラクアを1回から4回くりかえす
○ムスリムの礼拝の動作は、支配者の前に出るさいにとった敬礼の姿勢にならったものである(「イスラームの歴史 1」共同通信社)
○礼拝が定時にできない場合は、次の礼拝の時間までにできなかった分の礼拝をしてもよいという
●アザーン(礼拝の呼びかけ)
毎回の礼拝の15分ほど前に、モスクのミナレット(尖塔)の上から「アザーン」が鳴り響く
これはクルアーンの朗唱ではない
その内容は、
アッラーは偉大なり(4回)
私はアッラー以外に神はいないと証言する(2回)
私はムハンマドはアッラーの使徒であることを証言する(2回)
さぁ礼拝のために来たれ(2回)
さぁ成功のために来たれ(2回)
(夜明け前のファジュル礼拝には、ここに「礼拝は眠りよりもよい」(2回)が入る)
(シーア派では「善行のために来たれ」(2回)などが入る)
アッラーは偉大なり(2回)
アッラー以外に神はいない(1回)
●モスク
・モスクの語源はアラビア語のマスジドで「平伏する場所」という意味である
今日では一般に、ムスリムが礼拝を行うための建物がモスクと呼ばれる
モスクは教会でもユダヤ教のシナゴーグでも寺院でもない
モスクの礼拝スペースは何もない大空間で、床の上にカーペットが敷いてあるだけである
・モスク建築の原型はマディーナの預言者の家とそれを取り壊して8世紀初めに建てられた「預言者モスク」の建築様式である
マディーナにあった預言者ムハンマドのモスク(イスラーム最初の礼拝所)は、礼拝と瞑想と学習のために集まる場所だった
★イスラームには教会組織はない
★イスラームには、正統か異端かとか、教義を決定する宗教会議(公会議)はない
宗教上の決定権はムスリム1人ひとりにあるが、実際はイスラーム法学者(ウラマー)の見解の一致をもって信徒の見解の一致に代えることができる(「イスラームの生活を知る事典」、塩尻和子・池田美佐子、東京堂出版)
★イスラームには「宗教共同体の指導者」以外の意味での聖職者はいない(位階制度はない)
「ウラマー」は宗教指導者であるが、アッラーと人間との間に介在するものではない
★イスラームには「本山」はない
★イスラームには「出家」という概念はない
・モスクでの礼拝は導師(イマーム)の先導で行われる
ふつうは、先頭にイマームが立ち、その後ろに会衆が横一列に並ぶ(会衆は平等である)
何列になっても、平等である
礼拝の導師は、特別な資格は必要ではなく、一時的なもので、誰でもよい
ふつうは、その場所の責任者が選ばれる
導師が会衆と対面することはなく、導師も会衆と平等である(「イスラームとは何か」小杉 泰、講談社現代新書)
・モスクの内部には、祭壇も神像もない
必ずあるのは、マッカの方角(キブラ)を示すアーチ型の壁のくぼみ(ミフラーブ)である
ミフラーブそのものは礼拝の対象ではない
そのほかには、説教壇(ミンバル)、塔(ミナレット)、浄めの水場などが設置されている
モスクは教育の場としての機能ももっていて、図書館や学問所が備わっていることもあり、宗教教育が行われてきた
子供たちの無料のクルアーン学習会や、学生が試験勉強することもある
原則として、モスクに死者が埋葬されることはない
モスクは近隣の人々の憩いの場、情報交換の場としても利用される
モスクは土足厳禁で、服装の規定があるが、多くの場合、開放的で誰でも自由に出入りできる
●1日5回の礼拝…ハディースから
イブン・ハズムとアナス・ブン・マーリクによると、預言者は次のように言った。
「アッラーはわたしの信徒達に1日50回の礼拝を課せられたが、その掟を持って帰る途中、わたしがムーサのところに立寄ると、アッラーは信徒達に何を課せられたか、と彼が尋ねたので、1日50回の礼拝、とわたしは答えた。すると彼は、信徒達はそれを行うことができないので、もう一度神のもとへ戻るようにわたしにすすめた。わたしがそうすると、神は礼拝の回数を半分にされた。それでわたしがまたムーサのところへ行って、神は礼拝の回数を半分にされた、と言うと、信徒達はまだそれを行うことができないので、再び神のもとへ戻るようわたしにすすめた。わたしが戻ると、神は回数をさらに半分にされた。わたしはまたムーサのところへ行くと、信徒達はそれをまだ行うことができないので、さらに神のもとへ戻るようわたしにすすめた。わたしが神のもとに戻ると神は『これは5回の礼拝であるが、50回に相当する。わたしのもとで言われた言葉に変更はない』と言われた。さらにわたしがムーサのところへ行くと、彼は神のもとへ戻るようにさらにすすめたが、わたしは神の前で恥じる、と言った(「ハディースⅠ」牧野信也 訳、中公文庫)
●1日5回の礼拝のほかにも、さまざまな礼拝がある
○金曜礼拝
金曜日の正午過ぎに行われる集団礼拝
成人男性の定住者には参加が義務づけられる
・ムハンマドのハディースによれば、アーダムは金曜に創られ、金曜に楽園に入り、金曜に楽園から追放され、審判の時も金曜に起る
・ハディースによれば、ムスリムは最後の啓典の民であるが、復活の日には最初に楽園に入る。そのためにアッラーは金曜をムスリムの礼拝日と定めた(「岩波イスラーム辞典」)
○自発的礼拝(ナフル)
義務礼拝の他に追加して認められる自発的礼拝
・2大祭礼拝(イード礼拝)
断食明けの祭と犠牲祭の際に行われる
・日蝕・月蝕礼拝…日蝕や月蝕時に行う
・雨乞い礼拝
・タラーウィーフ礼拝
ラマダーン月のイシャー(夜)礼拝後に行う
1か月間の礼拝のなかでクルアーン全章を読誦することが勧められている
・タハッジュド礼拝
深夜の礼拝、タハッジュドは「深夜に起きること」を意味する
・ウィトル礼拝
イシャー(夜)礼拝とファジュル(夜明け前)礼拝の間に行う
○ジャナーザ礼拝
葬儀の礼拝で、ジャナーザ礼拝は集団的義務である
遺体は湯灌して全身浄化の後、死装束(白い綿布)で体全体を包み、モスクに運びイマームの前に安置する
殉教者の遺体は布で包まず、死に際して着ていた衣類のまま、傷や汚れもそのままで湯灌しないで埋葬する
イマームは会葬者とともにジャナーザ礼拝を行う(立ったままで行う)
その後、遺体を墓地へ運ぶ
埋葬は必ず土葬とされる
火葬は遺体を火で責めることに通じるゆえに、禁止される
遺体は、顔がマッカの方向に向くように安置される
葬儀では、日本のように香典を持っていく習慣はない
中東では、花は祝いごとに用いられるものなので、死者に花を手向けてはいけないし、弔問に花を持っていってはいけない
○イスラームでは自殺は禁止行為(ハラーム)であり、忌み嫌われるものである
自殺者は永遠に地獄の責め苦を受けるとされていて、自殺者にたいしては葬儀も葬儀の礼拝も禁止されている
自ら命を放棄することは不信仰の表れであり、大罪である
○イスラームでは「絶望」が禁止されている
●「自爆テロ」は自殺とはみなされていない
しかし、自爆テロという攻撃方法がイスラーム世界で公認されているわけではない
イスラームはテロリズム(非戦闘員の殺害)を一貫して非難している
スンナ派の法学者の大多数が、自爆テロはイスラーム法に照らして合法的ではないという見解を表明している(「イスラームの生活を知る事典」、塩尻和子・池田美佐子、東京堂出版)
●五行
・五行はムスリムであるための信仰行為としての5つの義務である(5柱ともいう)
1、信仰告白
2、礼拝
3、喜捨
4、断食
5、巡礼
2、礼拝(サラート)
★マッカの大モスク(マスジド・ハラーム)に向かって毎日5回の義務としての礼拝
成人男女のムスリムの義務として、
日没後(マグリブ)、
夜(イシャー)、
夜明け前(ファジュル)、
正午を少し過ぎた頃(ズフル)、
午後(アスル)
の5回の礼拝が行われる
礼拝はアッラーへの服従を示す最も純粋な行為である
イスラームでは、原則として1日は日没から始まる
木曜日の日没から金曜日の日没までが、イスラームの「金曜日」となる
現在では、一般的に「明日」は翌日の明け方からをさす
礼拝の時刻は、地域や法学派によって多少ことなり、それぞれの土地にあわせて計算される(礼拝の時刻は現地の新聞に掲載されている)
●サラートは、アッラーを敬い、平和を願う祈りであり、日本人の「困ったときの神頼み」ではない
「礼拝」は個人的な頼みごとではない
○神に願い事をして、願いがかなったとすると、それは人間が自分の都合のいいように神をあやつったことに等しい
人間が自分の勝手な意志で万能の神を思いのままに動かすことは理屈に合わない(「日本人のためのイスラム原論」小室直樹、集英社)
○個人的な祈り、祈願は「ドュアー」といい、否定されてはいないが、個人が自由に行うもので、「5行」には属さない
アラビア語で行うサラートと異なり、母国語で祈ってもよい
○ムスリムはどの法学派のモスクで礼拝してもよい
○礼拝場所は不浄でない場所ならどこでもよい
モスクでも、自宅、仕事場、路上、屋内でも屋外でもよい
この不浄な場所とは、人や動物の死とつながりをもつ場所をいう
○礼拝では、必ずマッカの方角(キブラ)を向かなければならない
マッカの方角を測定するために、ムスリムは天文学を発展させた
○礼拝前に、浄め(ウドュー)や沐浴(グスル)を行ってみずからを清浄な状態にしなければならない
浄めの儀式には、きれいな水か砂をつかう
「浄め」は、口と鼻を水ですすぎ、手足や、顔、頭髪などを水で洗い清める作業である
多くのモスクは、沐浴のための泉をそなえている
水のない場所などでは、清潔な砂をもちいたり、壁や地面に手をつけて、その手で全身をさすったりする代替方法も認められている
●礼拝の基本動作(「岩波イスラーム辞典」より)
①意志表明:直立してキブラを向いて、礼拝の意志表明をする
②タクビール:両手を開いて耳の高さに上げて「アッラーは偉大なり」と唱える
③直立礼:両手を体の前で組み、クルアーンの開扉章および任意の3節以上の節を唱える
④屈折礼:タクビールを行った後、両手を膝頭につけて腰を曲げ「至高なるわが主に栄光あれ」と3回唱える
⑤直立礼:「アッラーは彼を称讚する者の声を聞き給う」「われらの主よ、あなたに称讚あれ」と唱え直立する
⑥平伏礼:タクビールを行った後、額を地面につけてひれ伏し「至高なるわが主に栄光あれ」と3回唱える
⑦座礼:タクビールを行った後、正座して「主よ、私をお許しください」等と唱える
⑧平伏礼:⑥と同様
⑨タシャッフド:タクビールを行った後、座礼にもどりタシャッフド(証言)と呼ばれる文句を唱える シャハーダ(信仰告白)を唱える時に右手の人差し指を立てる タシャッフドの後に預言者の祝福祈願を唱える
⑩平安の祈り(サラーム):首を右に向け「あなたがたの上に平安とアッラーの慈悲と祝福がありますように」と唱える 続いて首を左に向け「あなたがたの上に平安とアッラーの慈悲と祝福がありますように」と唱える
○平安の祈りの対象は、左右の仲間の信徒であることが多いが、ムスリムは肩の上の守護天使にも呼びかけていると信じてきた
この一連の動作が礼拝の1単位で、1ラクアという
礼拝ではラクアを1回から4回くりかえす
○ムスリムの礼拝の動作は、支配者の前に出るさいにとった敬礼の姿勢にならったものである(「イスラームの歴史 1」共同通信社)
○礼拝が定時にできない場合は、次の礼拝の時間までにできなかった分の礼拝をしてもよいという
●アザーン(礼拝の呼びかけ)
毎回の礼拝の15分ほど前に、モスクのミナレット(尖塔)の上から「アザーン」が鳴り響く
これはクルアーンの朗唱ではない
その内容は、
アッラーは偉大なり(4回)
私はアッラー以外に神はいないと証言する(2回)
私はムハンマドはアッラーの使徒であることを証言する(2回)
さぁ礼拝のために来たれ(2回)
さぁ成功のために来たれ(2回)
(夜明け前のファジュル礼拝には、ここに「礼拝は眠りよりもよい」(2回)が入る)
(シーア派では「善行のために来たれ」(2回)などが入る)
アッラーは偉大なり(2回)
アッラー以外に神はいない(1回)
●モスク
・モスクの語源はアラビア語のマスジドで「平伏する場所」という意味である
今日では一般に、ムスリムが礼拝を行うための建物がモスクと呼ばれる
モスクは教会でもユダヤ教のシナゴーグでも寺院でもない
モスクの礼拝スペースは何もない大空間で、床の上にカーペットが敷いてあるだけである
・モスク建築の原型はマディーナの預言者の家とそれを取り壊して8世紀初めに建てられた「預言者モスク」の建築様式である
マディーナにあった預言者ムハンマドのモスク(イスラーム最初の礼拝所)は、礼拝と瞑想と学習のために集まる場所だった
★イスラームには教会組織はない
★イスラームには、正統か異端かとか、教義を決定する宗教会議(公会議)はない
宗教上の決定権はムスリム1人ひとりにあるが、実際はイスラーム法学者(ウラマー)の見解の一致をもって信徒の見解の一致に代えることができる(「イスラームの生活を知る事典」、塩尻和子・池田美佐子、東京堂出版)
★イスラームには「宗教共同体の指導者」以外の意味での聖職者はいない(位階制度はない)
「ウラマー」は宗教指導者であるが、アッラーと人間との間に介在するものではない
★イスラームには「本山」はない
★イスラームには「出家」という概念はない
・モスクでの礼拝は導師(イマーム)の先導で行われる
ふつうは、先頭にイマームが立ち、その後ろに会衆が横一列に並ぶ(会衆は平等である)
何列になっても、平等である
礼拝の導師は、特別な資格は必要ではなく、一時的なもので、誰でもよい
ふつうは、その場所の責任者が選ばれる
導師が会衆と対面することはなく、導師も会衆と平等である(「イスラームとは何か」小杉 泰、講談社現代新書)
・モスクの内部には、祭壇も神像もない
必ずあるのは、マッカの方角(キブラ)を示すアーチ型の壁のくぼみ(ミフラーブ)である
ミフラーブそのものは礼拝の対象ではない
そのほかには、説教壇(ミンバル)、塔(ミナレット)、浄めの水場などが設置されている
モスクは教育の場としての機能ももっていて、図書館や学問所が備わっていることもあり、宗教教育が行われてきた
子供たちの無料のクルアーン学習会や、学生が試験勉強することもある
原則として、モスクに死者が埋葬されることはない
モスクは近隣の人々の憩いの場、情報交換の場としても利用される
モスクは土足厳禁で、服装の規定があるが、多くの場合、開放的で誰でも自由に出入りできる
●1日5回の礼拝…ハディースから
イブン・ハズムとアナス・ブン・マーリクによると、預言者は次のように言った。
「アッラーはわたしの信徒達に1日50回の礼拝を課せられたが、その掟を持って帰る途中、わたしがムーサのところに立寄ると、アッラーは信徒達に何を課せられたか、と彼が尋ねたので、1日50回の礼拝、とわたしは答えた。すると彼は、信徒達はそれを行うことができないので、もう一度神のもとへ戻るようにわたしにすすめた。わたしがそうすると、神は礼拝の回数を半分にされた。それでわたしがまたムーサのところへ行って、神は礼拝の回数を半分にされた、と言うと、信徒達はまだそれを行うことができないので、再び神のもとへ戻るようわたしにすすめた。わたしが戻ると、神は回数をさらに半分にされた。わたしはまたムーサのところへ行くと、信徒達はそれをまだ行うことができないので、さらに神のもとへ戻るようわたしにすすめた。わたしが神のもとに戻ると神は『これは5回の礼拝であるが、50回に相当する。わたしのもとで言われた言葉に変更はない』と言われた。さらにわたしがムーサのところへ行くと、彼は神のもとへ戻るようにさらにすすめたが、わたしは神の前で恥じる、と言った(「ハディースⅠ」牧野信也 訳、中公文庫)
●1日5回の礼拝のほかにも、さまざまな礼拝がある
○金曜礼拝
金曜日の正午過ぎに行われる集団礼拝
成人男性の定住者には参加が義務づけられる
・ムハンマドのハディースによれば、アーダムは金曜に創られ、金曜に楽園に入り、金曜に楽園から追放され、審判の時も金曜に起る
・ハディースによれば、ムスリムは最後の啓典の民であるが、復活の日には最初に楽園に入る。そのためにアッラーは金曜をムスリムの礼拝日と定めた(「岩波イスラーム辞典」)
○自発的礼拝(ナフル)
義務礼拝の他に追加して認められる自発的礼拝
・2大祭礼拝(イード礼拝)
断食明けの祭と犠牲祭の際に行われる
・日蝕・月蝕礼拝…日蝕や月蝕時に行う
・雨乞い礼拝
・タラーウィーフ礼拝
ラマダーン月のイシャー(夜)礼拝後に行う
1か月間の礼拝のなかでクルアーン全章を読誦することが勧められている
・タハッジュド礼拝
深夜の礼拝、タハッジュドは「深夜に起きること」を意味する
・ウィトル礼拝
イシャー(夜)礼拝とファジュル(夜明け前)礼拝の間に行う
○ジャナーザ礼拝
葬儀の礼拝で、ジャナーザ礼拝は集団的義務である
遺体は湯灌して全身浄化の後、死装束(白い綿布)で体全体を包み、モスクに運びイマームの前に安置する
殉教者の遺体は布で包まず、死に際して着ていた衣類のまま、傷や汚れもそのままで湯灌しないで埋葬する
イマームは会葬者とともにジャナーザ礼拝を行う(立ったままで行う)
その後、遺体を墓地へ運ぶ
埋葬は必ず土葬とされる
火葬は遺体を火で責めることに通じるゆえに、禁止される
遺体は、顔がマッカの方向に向くように安置される
葬儀では、日本のように香典を持っていく習慣はない
中東では、花は祝いごとに用いられるものなので、死者に花を手向けてはいけないし、弔問に花を持っていってはいけない
○イスラームでは自殺は禁止行為(ハラーム)であり、忌み嫌われるものである
自殺者は永遠に地獄の責め苦を受けるとされていて、自殺者にたいしては葬儀も葬儀の礼拝も禁止されている
自ら命を放棄することは不信仰の表れであり、大罪である
○イスラームでは「絶望」が禁止されている
●「自爆テロ」は自殺とはみなされていない
しかし、自爆テロという攻撃方法がイスラーム世界で公認されているわけではない
イスラームはテロリズム(非戦闘員の殺害)を一貫して非難している
スンナ派の法学者の大多数が、自爆テロはイスラーム法に照らして合法的ではないという見解を表明している(「イスラームの生活を知る事典」、塩尻和子・池田美佐子、東京堂出版)