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春を愛する人は、心優しい人。

紅楼夢における短歌シリーズ「迎春の歌」

2007年06月17日 20時01分38秒 | 俳句和歌
池一夜 秋風寒く 深窓女 碁盤汚した 燕泥かな
いけいちや あきかぜさむく しんそうじょ ごばんよごした つばめどろかな

         紫菱洲歌
   池塘一夜秋風冷,吹散芰荷紅玉影。
   蓼花菱叶不勝愁,重露繁霜圧繊梗。
   不聞永昼敲棋声,燕泥点点汚棋枰。
   古人惜別怜朋友,况我今当手足情!

 注:1、賈赦(父)が妾腹の迎春(娘)を孫紹祖に嫁がせましたため、大観園の紫菱洲(迎春の住所)が空き巣になりました。そこを賈宝玉(賈政の息子、迎春の従兄弟で作品の主人公でもあります)が毎日ぶらぶらして散歩に来ました。池の枯れ蓮を目にしながら、従姉妹である迎春のことを思い出しました。それに、春の燕泥で汚れた碁盤を見ると、更に迎春と碁をうつことまで思い出しました。
   2、以上の「紫菱洲歌」を基にして、その大文字の短歌を詠みました。ちょっと説明したいことがあります。中国語の原詩には霜に覆われた枯れ蓮などが描かれましたが、「池」から連想できると思われます。ですから、短歌に蓮や露などがありませんでした。それに、「深窓女」は勿論「迎春」のことを指します。
   3、「秋風」と「燕泥」は違う季節のもので、かの短歌で同時に出てくるのはなぜだろうという疑いを持つ方がいると思います。「燕」は渡り鳥なので秋の時南へ越冬に飛んで去りました。今目にするのは春の時残された燕泥です。つまり、迎春との離別は春の時でした。今は秋なのに、古い燕泥は見られます。ところが、従姉妹の迎春はもう身にいなくなりました。
   4、迎春と碁を打ったことがありますから、短歌の中の「碁盤」は彼女の化身あるいはイメージとされます。すなわち、「碁盤」を見て、迎春の姿が目の前に浮かび上がられます。しかし、実際に迎春はもう他人の花嫁になってこの大観園の紫菱洲を離れました。体がもう汚れた碁盤のようなものになりました。


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