彼に追いつけない！

今日も走る。
とぼとぼ走る。

僕がいつも走るコースの
ちょうど５kmほど走ったところに
杉並区・上井草スポーツセンターという大きなスポーツ施設がある。

野球場が４面あって、一周650mほどのジョギングコースが周囲をかこんでいる。

僕のランニングは、
最後に、このジョギングコースを一周したところで一休みすることになっている。

今日は、時間も早かったせいか、
野球場では草野球の試合がおこなわれており、
周囲のジョギングコースでは、30人ほどがパラパラ走っていた。

その中に、
学校指定のジャージを着て走っている男子がいた。
おそらく中学の部活か何かだろうか。

何周も走っているらしく、そうとうへばっている様子。
足はフラフラくねくね、アゴは上がって腕はまったく振れていない。
「ひーひー」という息使いが聞こえてきそうな情けない走りだ。

僕は、その子の走りを後ろから見ながら走っていた。
そして、ものすごい事実を発見したのであった。








追いつけない。














むしろ、引き離されてる…





そういえば僕は、さっきから他のランナーに、
ものすごいスピードで抜かれている。





俺…走るの遅いの？

5km走ってきたからじゃない。
僕は最初からこのスピードでとぼとぼ走っている。
脚は少し疲れているけど、息も上がっていない。


僕は、女の子にも抜かされてた。
小学生にも抜かされた。

全ての人間に抜かされた。


僕より遅く走っている人はいなかった。


うぉぁぁぁぁ！
どうすればいいんだ！
どうすれば速く走れるのだ！

どうすれば、あんなふうにサッサッサッと大股で走れるのだ！

僕の走りは歩幅も小さく、テンポも速い。
それで精一杯だ。
無理だ。

老人みたいな走り方してるのかな～。
ああ…明日から走るの恥ずかしくなってきちゃったな。

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