あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

スコットランドの風

2010-08-01 | 
娘の小学校で全校集会があった。
一つのクラスがホストとなり何人かで司会進行を勤める。
深雪がその中で最初に喋る、というのでノコノコとそれを見に行った。
平日の昼下がりということもあって、見に来ている父兄は6人ぐらい。
その中で目をひいたのは杖をついた爺さんを囲む一家族。
6歳ぐらいの女の子が緑色のスコットランドの民族衣装を着ている。
孫の晴れ舞台なのだろう。見ていて微笑ましい。
深雪のスピーチから集会は始まった。
緊張しているのが手に取るように分かる。
あっというまに深雪の出番は終わりホッとした顔をしている。
声は小さかったがまずまずの出来だろう。

集会は進み、さきほどの女の子の出番となった。
ホールにバグパイプの音楽が流れる。ボクはこの楽器の音が好きだ。
音楽に合わせ女の子が踊る。
緑をベースにした民族衣装は所々に赤が混ざる。おそろいの帽子がこれまた可愛い。
緑色のスカートが、女の子が廻るたびにヒラリと開く。チラリと見える白いパンツはご愛敬だ。
女の子が1人で背筋をピンと伸ばし堂々と踊る。立派なものだ。とても深雪にはできないだろう。
ボクのすぐ前にいる爺さんの肩が震えだした。
やばい、爺さん、泣くなよ。つられて泣いちゃうじゃないか。
ボクの思いも空しく爺さんは涙を拭き始めた。
同時にボクの目からも涙があふれる。
爺さんの横にいる30ぐらいの女の人は、爺さんの娘で女の子の母親なのだろう。彼女も涙をぬぐいながら爺さんの肩に手をのせた。
反対側にいる娘婿は動画で子供のダンスを撮るのに夢中だ。
ボクは流れる涙をふきながら、女の子のダンスを、それを見守る爺さんの背中を見ていた。
爺さんは孫のダンスに遠い故郷を思い出したのだろう。
ニュージーランドにはスコットランドからの移民も多い。
爺さんがスコットランドで生まれたのか、ニュージーランドで生まれたのか知らないが、孫のダンスに祖先からの血を感じたのだろう。
その想いはすぐ後ろに居たボクにも伝わった。挨拶を交わしただけの見ず知らずの爺さんと心が繋がった。
爺さんよ、アンタは幸せ者だよ。
時空を超えてスコットランドの風が、地球の裏側にある小さな小学校のホールを吹き抜けた。
グローバルというのはこういう事をいうのではないか。
ダンスが終わり、ボクは女の子に大きな拍手を贈った。
いい物を見させてもらった。
その日は一日、バグパイプの音色が頭にこだました。
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