えー毎度のお運びで。
あたくし清水亭聖笑と申します。
え?出る場所が違う?
そこは最新雪情報だって?
まあ、いいじゃあありませんか、固い話は抜きにして、あたしに出番をくれても。
今回は清水亭聖笑がお届けする雪情報、クレーギーバーン編でございます。
しかしまあ、雪が降ってくれまして一安心ですな。
スキーヤーなんてものはですね、雪が無けりゃただの人、いやそれ以下のものでしょう。
雪が無いと仕事もない。
やって来るお客さんの機嫌も悪くなります。
些細なことにも腹を立てて「あのガイドの態度がなっとらん。雪がないのもあいつのせいだ。賠償金払え、慰謝料払え」と無理難題をふっかけられる。
番頭さんにはすまなそうに「悪いがお前さん、泥をかぶっておくれ」と暇を出される。
子供は鼻水を垂らしながら「父ちゃん、ひもじいよう」
かみさんはやつれた顔で「あんた、どうすんのさ、この寒空に路頭に迷って」
「そうだな、こうなったら一家で大川に身を投げるか」となってしまいますが雪が降れば話は別。
お客さんはニコニコと機嫌よく、時にはチップもはずんでくれる。
お客さんがハッピーだと、仕事が終わった後のビールも飯も美味い。
ボスも機嫌よくボーナスなぞくれたりして、好いことずくめですな。
さて昨日はクレーギーバーンへ行ってまいりやした。
お客さんはオークランド在住のハイデン、歳の頃は20代前半といったところでしょうか。
彼と二人で山に向かいました。
国道から山道へ入ると様相は急に変わる。
森の中の雪道になるんですが、これがまた綺麗なんです。
朝日が森に差し込んで、時折木の枝に積もった雪がふわっと落ちて、それが朝日に照らされキラキラと光る。
「なんか別の国に来たみたいだなあ」とハイデンがつぶやく。
ニュージーランド人でもそう思うんですねえ。
もっともオークランドなんて大都会はあたしらから見れば外国のような場所ですがね。
そのうちに木々の隙間から山も見えてくると、ハイデンの興奮も高まってくるのがこちらにも伝わる。
ああ、分かる分かる、その気持ち。
あたしも25年ぐらい前に同じようにワクワクしながら友達とこの道を通ったものでした。
駐車場に着き、荷物を持ってロッジに行きます。
ハイデンは5日間、ここに滞在。
あたしは街で別の仕事があり、スキーをせずに引き返しますので彼ともここでお別れ。
一期一会ですが、こういうのもいいですな。
今年は何回かクレーギーバーンに足を運んでいるんですが、まだ滑っていない。
タイミングが合わないというのはこういうものなんでしょう。
スキーはしないのですが、せっかく山に来たのでロープトーの乗り場まで歩いてみました。
ちょうど通りかかったパトロールと一緒に雪の話なんぞしながら5分ぐらい歩きます。
山のあちらこちらに、好き者が滑ったあとがあります。
あたしが見ましても「まあ、よくもあんな所まで行ったねえ」なんて場所まできっちりシュプールがついていました。
そしてクレーギーバーン名物の曲がったロープトーの写真を撮って、山を後にしました。
スキーをしたかったのは山々ですが、いいんです、あたしは。
ハイデンのキラキラ輝く目とワクワク感で充分。
まだかけ出しとはいえ、あたしも噺家のはしくれですもの、滑らせてはいけないでしょう。
ドドンドン
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