あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

冬至

2011-06-25 | 日記
日本の夏至はニュージーランドの冬至である。
クライストチャーチでは日の出は8時ぐらい、日の入りは5時ぐらいだ。
この時期、太陽の軌道が低い。
庭にいる時間が長いのでよくわかるが、家の影で菜園にもあまり日は当たらない。
だがこの日を境に日は長くなっていき、今まで影だった場所にも日は当たるようになっていく。
日当たりが良い所に植えたにんにくもソラマメも芽が出始めたところだが、この時期はゆっくりゆっくりと育つ。
ニュージーランドは紫外線が強いせいか、冬でも日が当たればポカポカと暖かい。
だが寒さが本番になるのはこれからだ。

今年に限って言えば冬の訪れは遅い。
5月などはとても暖かく、庭の苺が花を咲かせてしまったぐらいだ。
クィーンズタウンではウィンターフェスティバルが今週からなのに、スキー場はオープンできなくて困っている。
人工降雪機を何百台も用意しても気温が冷えなければ雪は作れない。
僕も若い頃は人工降雪の仕事をやったことがある。
夕方から機械を出してスタンバイするのだが、気温が-4度まで冷えないと雪は作れない。
こればっかりは人がどうあがいても仕方がない。
お金のあるスキー場では貯水池に氷を入れて水を冷やし、-2度とか-3度でも雪を作ろうとしていた。
バブル最盛期の頃で、エコとはかけ離れた話だ。
-4度ぐらいになるとかろうじて雪になるのだが、その温度で作った雪は水分の多い雪でそれが凍りとても固いバーンになる。
良い雪ができる温度は-10度ぐらいだろうか。
冷えるときには-20度ぐらいまで冷え、その中をスノーモービルをぶっ飛ばし現場に行き機械の向きを変える。
そこまで冷えれば低い向きでも雪になるので機械を水平方向でセットできて思った場所に雪を降らせられるが、気温が高いと雪を空中高く放らなければならない。
あるときは機械を回している時に風向きが変わり、リフトをガチガチに凍らせてしまったこともあった。
雪は自然からの贈り物であり、人間が簡単に作り出せるものではない。

本来ならクィーンズタウンのスキー場も数週間前にオープンして今週からウィンターフェスティバルという筋書きなのだが、今年はそう簡単にいかないようだ。
そもそも何故この時期にウィンターフェスティバルをするのか。
ボクが20代の頃、20年近く前だがウィンターフェスティバルは8月にやっていた。
冬の祭りなのだから一番寒い時にやるのは当たり前だ。
若いというのは怖いもの知らずであり、なんでもやってやろうという時期でもある。
フェスティバルの一環で、仮装で真冬の夜のワカティプ湖に飛び込んだこともあった。
気温は氷点下、湖の水温は12~3度。
一度湖に入ってしまうと外の方が寒いのでなかなか出られない。かといっていつまでも水に浸かっているわけにもいかない。
変な葛藤を感じたことを思い出した。
ウィンターフェスティバルの時期は年とともに早まり7月になり今では6月後半に行うようになった。
これは誰かに聞いた話だが、8月というのは黙っていてもお客さんは来る。
それよりも早い時期、7月とか6月のあまり忙しくないときにフェスティバルを催し集客を狙うのだそうな。
一番のお得意様であるオーストラリアのスクールホリデーの時期に合わせたという話も聞いた。
なるほどね……。
そもそもお祭りというのは、その季節の物事を祝い楽しむものであるはずだ。
季節は移ろい過ぎていくものである。それを行うタイミングというものがある。
それを人間の都合で変え、イベントとして人を集める。
何かアメリカのショービジネスの切れ端が見えてくるようだ。
時間と空間は切り離してはいけないものだが、時間が一人歩きしている。
だが社会はすでにそのように回っており、人々もそれに合わせ動いている。
友達も何人かはクィーンズタウンのスキー場で働いていて、スキー場がオープンできないと仕事がない。
友達のカナちゃんは今シーズンからスキー場のカフェで働くことになったが、まだ仕事はしていないという。
「あたしが働くことになったら、こうなっちゃったのよ。アハハ。」
トレッキングへ行くと必ず1日は雨に降られるという、自称雨女らしい発言だ。
雨女でなくいっそのこと雪女になってくれればいいのに。

20代、スキーのインストラクターを始めた頃、ある人にこう言われた。
「スキーのインストラクターなんてものはスキー場ではえらそうだが雪がなければただの人以下なんだぞ。士農工商エタヒニン、その下にスキーのイントラだ。覚えておけ。」
そこまで落とすこともなかろうが、確かにスキーヤーなんてのは雪がなければ何もできない。
雪が降って喜ぶのはスキーヤーだけだ。
普通に生活していてスキーをしない人には雪はないほうがありがたい。
町の暮らしで雪がどれだけ生活の支障になるか。
特に都市部は雪には弱い。交通はすぐに止まる。
雪かき、雪下ろし、こういった仕事の辛さは雪国に住んでみないとわからない。
暖冬小雪というのは、ある人々にはありがたいものだろう。
だがスキーヤーにとっては雪は天からの贈り物であり、喜ぶべきものだ。
ぼくが行くクラブフィールドには人口降雪機はない。
雪が降ればそれを喜び、雪が降らなければ「しゃあないやん、降らないんやから」というあきらめがある。
それでもどうしても滑りたい、という人はタイのように雪のある所へ行けばいいのだ。
http://blog.livedoor.jp/coasterlife/
今年は滑り始めるのは7月終わりぐらいだとボクは見ている。
それまでは庭のソラマメやニンニクのようにゆっくりと時を過ごすのだ。
コメント (5)
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