徳島ラーメンの代表格「いのたに」
徳島駅を出て藍場浜公園を抜け、新町川にかかる仁心橋を渡って西大工町へ。行列の出来る人気店「いのたに」は、繁華街からは少し離れた場所にある。1999年に新横浜ラーメン博物館に出店し、茶濁スープに甘辛く味付けされた豚バラ肉と生卵という、「すき焼き」スタイルの徳島ラーメンを世に知らしめたパイオニアだ。
創業者の猪谷励氏は昭和8年生まれ。製粉会社の営業などを経て手打ちうどん屋を創業するも、昭和41年から好きだった中華そば1本に絞り営業。今でこそ王道のスタイルとして定着したが、ラーメンにすき焼き風に味を付けた豚バラ肉を乗せ、月見うどんの様に生玉子を落とした元祖こそ、この猪谷氏と言われている。


現在は二代目の猪谷貴雄氏、三代目の素久氏を中心に、家族と親戚で先代の味を守っている。私が訪れたのが平日で、10時半のオープン直後だったため店内は客が私1人の貸切状態。しかし、これが休日ともなると大行列で、店舗周辺に複数ある駐車場が他県ナンバーで埋まっている風景もザラだ。
メニューはシンプルに中華そばとライスのみ。中盛りと大盛りがあり、プラス50円で生玉子を、プラス100円で肉入りにグレードアップできる。茶濁したスープは豚骨や煮干し、野菜などを使ったマイルドな出汁に、濃口醬油のカエシをビシッときかせた逸品。嫌な獣臭は全くなく、サラッとした優しい飲み口である。


中細の麺は自家製で、柔らかめに茹で上がりだがコシもあり旨い。なお「いのたに」では早い時期から製麺機を導入し、啜りやすいように約20センチと、他店より若干短い麺を作ってきた。更に、季節により微妙に太さを変える気の配りよう。もちろんメンマ、モヤシ、ネギも全て丁寧に調理されている。
豚バラ肉は醬油でしっかり味付けされていてライス(150円)にも合う。生玉子を崩し、麺や肉に絡めて啜れば至福の時が訪れる。この味を求める客で休日は大行列。店の周辺には複数の駐車場があるが安心は出来ない。また、先代の「身体あっての商売」との教訓から閉店時間は17時と早めなのでご注意を。
<店舗データ>
【店名】 いのたに 本店
【住所】 徳島県徳島市西大工町4-25
【最寄】 JR高徳線「徳島駅」徒歩12分