徳島「昔ながら」系中華そばの守護神
JR徳島線・鮎喰(あくい)駅から南へ歩いて15分ほど。眉山の麓、県道203号=鮎喰新浜線沿いにある行列店「名東軒」へ。1970年(昭和45年)創業の老舗だが、メディアの取材を断ってきたので、まさに隠れた名店。そして元プロ野球選手で、日本ハムの守護神と呼ばれた武田久氏の実家というのもまた、知る人ぞ知る話だ。


現在、味を守っているのは久氏の兄で三代目の武田俊二氏。初代は久氏の祖母で、いわゆる茶系の徳島ラーメンの源流と言われ、かつて徳島市南矢三に存在した「中華そば 広東」で修行し独立。いまや多種多様な徳島ラーメンが溢れているが、「広東」無き後、ここ名東軒の一杯こそが源流であり、伝統を感じるという意見も多い。
店内は4人掛けテーブル4卓と小上がり2卓の計24席。麺メニューは「支那そば」の一本勝負。麺量により大・小に分かれ、肉と玉子をトッピング可能だ。もちろん白メシも用意。そして、高麗人参やナツメ、カンゾウをはじめとした成分が入った薬用酒「陶陶酒」も置いている。今回は「支那そば」の小の肉玉子入(750円)を注文。


茶濁したスープは鶏ガラや豚骨を半日ほど炊き、そこに濃口醤油のカエシを重ねている。色は濃いが塩味は薄め。粘度は低くサラッとした飲み口だが、豚と鶏の旨味はしっかりと感じられる。一方の麺は柔らかめの中細ストレート。県内でもかなり柔らかい部類に入るだろう。コシはほとんどないが、スープとの馴染みは良い。
上に乗る豚バラ肉は肉厚で噛み応え十分。旨味が凝縮され絶品だ。生卵は黄身と白身の両方が入る。ほか、シャキっとした歯ごたえのタケノコ、モヤシ、ネギがトッピングされる。ニューウェイブ系の店とは一線を画す「昔ながら」の味わい。徳島ラーメンを食べ歩く上では欠かせぬ一杯だろう。ぜひ一度ご賞味を。
<店舗データ>
【店名】 支那そば 名東軒(みょうどうけん)
【住所】 徳島県徳島市名東町1-81-18
【最寄】 JR徳島線「鮎喰駅」徒歩20分