「一緒に昼飯でも喰わないか?.」 ベルナールはオリヴィエに会えて喜び云った。 「今日は午前中に国語の試験があってね、午後にも もう一つ、ラテン語の試験があるのだが・・」 「うまく いったのかい」オリヴィエは訊いた。 「うん、でも、ぼくの考えが 試験官の意に沿うかどうか・・」 「というと?...」 「ラ・フォンテーヌの四行の詩句について意見を述べよ、という問だったんだがね・・ : われは パルナスの蝶 : 賢きプラトンが この世の驚異に なぞらえた蜜蜂にも 似て 軽やかに 何処の主題にも 飛び回り 花から花へ 物から物へ 渡りゆく・・ :
「オリヴィエ、きみなら 答案を どんな風に書くかい?...」 ベルナールは云った。 すると 小粋な身なりをしたオリヴィエは 才気煥発なところを みせた。
「うん、ぼくなら こんな答えを。つまり、ラ・フォンテーヌは まず、自画像を描き、それから 世界の外面、つまり 花しか諾(うべな)わない芸術家の肖像を描いた。そのあとで 対照的存在として 詮索する学者の肖像を描き、そして 最後に・・・・」 彼の言葉には 他人の思想の受け売りのようなところがあった。 「それって誰の言葉だい」とベルナールは 云いそうになった。が、気分を損ねてはいけないと 差し控え、顔を不審気に眺めるにとどめた。 Les Faux-Monnayeurs
*ベルナールの親友オリヴィエの叔父は作家で、目下、「贋金つかい」という小説の構想を練りつつ日記をつけている。 ・パルナス: Parnasse: 詩壇・文芸界。; アポロとミューズが棲んでいたという山の名に由来する。
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