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【京都幕間旅情】東福寺,円爾と九条道家-紅葉木々包む伽藍は権謀術数渦巻く鎌倉時代に日本での禅宗を広める

2022-12-04 18:23:33 | 写真
■空と紅葉と東福寺の伽藍面
 伽藍面、東福寺の伽藍面といわれるのは建造物の大きさがいかにも仰々しく偉そうだという意味があるのです。

 東福寺はその伽藍の壮大さもさることながら歴史の奥行き深さもなかなかに感じ入るものが有ります、円爾が開山とらり開かれた寺院ですが、開基は九条道家となっています。この九条道家という人は鎌倉時代の将軍源頼経その実父でした、光明峯寺関白ともいう。

 興福寺と東大寺から一文字づつを冠してこの東福寺を、とはよくこの寺院の名を説明する際に用いられる説明なのですけれども、国家安泰と君臣共栄というような目的で大寺院を造営する事を思いつき、この際に中国の径山で修業し帰国したばかりの円爾に頼りました。

 禅宗寺院、当時禅宗という仏教流派は中国で生まれた最新のものであり、栄西はじめ鎌倉時代初期に日本へ持ち込まれたものです。しかし、かの空海の真言宗が結局神護寺から高野山へ遷座したように当時の京都では比叡山の天台宗が影響強かったのはご承知の通り。

 栄西の頃まで遡りますと、結局仏教寺院御体系に禅宗が入り込む事が出来たのは中国に近い九州の博多など貿易港の近くと、そして禅宗をその日本の草創期に支持したのが源頼朝、鎌倉幕府であったということは、禅宗が親しまれた事には偶然も作用したといえるのです。

 九条道家は鎌倉将軍源頼経の実父、そして太政大臣九条良経の次男でもありまして、京都における影響力を強めすために寺院造営を試みた、という背景があります。これは言い換えれば大きな寺院で影響力があれば、それは禅宗である必然性は無かったとも、いえる。

 幕府の方から朝廷へ接近しており、結果的に貴族の子弟を鎌倉将軍に迎えた、という構図もあるのですが、考えて行かなければならないのは、武家社会と武家政権という概念は、鎌倉幕府と室町幕府と江戸幕府を経て近代史は現代へ、という理解が一考の余地もある。

 摂政に関白と左大臣、九条道家はこうした官職にありますので京都と鎌倉の一つの距離感、というものを感じるところです。ただ、確かなのは利用された構図というものはあるのですが、ここ京都の東山、比叡山に繋がる立地に前主の寺院が壮大な規模で開かれたという。

 藤原頼経を4代将軍に、この要請は三代将軍暗殺という鎌倉幕府特有の暴力による解決の収拾として求められ、名を源頼経と改めた上で東下りとなりました。ただ、東福寺はこれに乗じて権力基盤、というには余りに壮大であり、完成前に九条道家は失脚、没している。

 円爾による東福寺の完成は建長7年こと西暦1255年、実に造営に19年の年月を経て実現しているのですが、興味深いのはこの巨大な寺院は鎌倉幕府の権力闘争に間接的に巻き込まれる形で、しかし日本全体に禅宗を広める象徴的な役割を果たしているのです、それは。

 建長寺、鎌倉に造営された巨大寺院はもともと東福寺を越える寺院を鎌倉に、という目的で幕府執権北条時頼により造営されました。九条道家は失脚したと前述しましたが、これは北条時頼と宝治合戦という内乱を戦い敗北してのものであり、時頼は象徴を必要とした。

 蘭渓道隆、中国のやはり径山で修業した蘭渓道隆を招いて建長寺を造営したものの、造営の翌年に円爾を招いているのですね。建長寺も今日に壮大寺院として残るものですが、結果的に日本はごく短い時期で西日本と東日本に巨大な禅宗寺院を建立するに至った、と。

 宗教と権力、この関係性は今日的な視野で中世の視野を見通す事は出来ないのですけれども、一時坐禅すれば一時の仏なり、一日坐禅すれば一日の仏なり、一生坐禅すれば一生の仏なり、権謀術数渦巻く鎌倉時代にあってある種強かにも、禅宗は広まっていったのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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