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AH-1Z沖縄県渡名喜村村営ヘリポート予防着陸,今月三度目の高頻度異常事態と原因検証

2018-01-24 20:18:51 | 国際・政治
■日米共同検証共同対処の必要性
 AH-1Z攻撃ヘリコプター、予防着陸事案が発生しました。今月だけで三度目、この頻度は異常事態です。影響を考えれば単なる抗議声明で終わらせてはならないでしょう。

 アメリカ海兵隊のAH-1Z攻撃ヘリコプターが昨夜、沖縄県渡名喜村村営ヘリポートに緊急着陸しました。AH-1Zは陸上自衛隊が運用するAH-1S対戦車ヘリコプターと同系統の機体で、UH-1多用途ヘリコプターから発展した航空機です。AH-1ZはAH-1の最新型で運用開始は2010年と最新鋭機で陸上自衛隊次期戦闘ヘリコプターの候補機ともなっています。

 予防着陸、という用語がありますが、アメリカ軍では異常通知を示す計器表示と共に一旦緊急着陸する事で墜落事故を予防する、という運用があります。厳密には事故ではなく、旅客機が機体異常により着陸地を変更する状況に似ているものです。ただ、発生頻度は通常では考えられず、AH-1Sを60機運用する陸上自衛隊でもこの頻度では発生していません。

 UH-1Y汎用ヘリコプターの沖縄県うるま市における緊急着陸事案が1月6日に発生しており、UH-1Yについては砂浜に予防着陸後、自力飛行不能となりCH-53重輸送ヘリコプターによる吊下輸送にて撤去されました。続いて1月8日には沖縄県読谷村におけるAH-1Zの予防着陸事案発生し、河野外務大臣がアメリカのハディ大使へ抗議を申し入れています。しかし、日米同盟の重要性を考える場合、抗議だけではなく協同解決として関与する必要性は無いのでしょうか。

 影響は大きい、日米ども同系統の機体を運用し、日本は米軍並に航空機延命を進め、同系統の作戦運用基盤も構築に向かっているのだから、アメリカだけの門d内ではなく日本の防衛力にも直結し得る。AH-1Z攻撃ヘリコプターにUH-1Y汎用ヘリコプター、沖縄県への米軍ヘリコプター緊急着陸は今月だけで三回目となり、予防着陸の頻度としては異常事態であり、整備補給体系や航空機基本設計と回転翼機航空部隊運用体系の何れかに何らかの問題があるのではないか、住民不安は勿論、海兵航空部隊の運用能力全般に不安定要素を考えねばなりません。

 老朽機ではありません、新型です。UH-1Y汎用ヘリコプターは2009年に海兵隊において運用開始となった最新型で陸上自衛隊も同系列のUH-1J多用途ヘリコプターを運用しているほか、改良型のUH-Xが富士重工において開発中です。UH-1系統の航空機は原型初飛行が1957年、陸上自衛隊も1961年よりHU-1Bを運用し、機体由来事故が皆無という高い信頼を航空要員から勝ちえています。

 整備補給体系や航空機基本設計と回転翼機航空部隊運用体系とある可能性の中で原因は何か、整備補給体系の可能性を考える場合、アメリカ海兵隊の航空機整備間隔や平均故障間隔等の点検面、そして定期整備を行う日本飛行機や大韓航空の整備体制等に大きな変更は無かったのか、点検項目変更や維持部品の品質管理等の視点から精査してゆく必要がある。

 航空機基本設計に問題がある可能性、AH-1Z,UH-1Y共に最新鋭機ですが、AH-1ZはAH-1W攻撃ヘリコプターを近代化改修した機体であり、UH-1YもUH-1N汎用ヘリコプターを近代化改修した機体です。ただ、機体フレームの一部など5%が原型のままであり、95%の部品は新造という事実上の新造機といえます。それでも老朽部分問題は理論上皆無ではない。

 航空機基本設計は陸上自衛隊でもUH-1系統を1961年から、AH-1Sを1981年から今日まで長期運用していますが設計上の欠陥は見つかっていません。しかし、改良型として米軍のAH-1ZやUH-1Yは別物の高性能で、特にAH-1Zは陸上自衛隊の最新型AH-64D戦闘ヘリコプターとエンジンが同型という程、改良幅が大きすぎるという視点は必要でしょう。これは今後自衛隊の航空機延命改修が続けられるのならば、検証し解決策の共有が必要となる問題です。

 回転翼機航空部隊運用体系の変更に原因を考える場合について。JASBC統合エア-シー-バトル構想としてアメリカ軍は2010年のQDR2010四年ごとの国防見直し報告書に新運用体制を盛り込み、特に中国軍の第一第二列島線太平洋上画定に基づく接近領域拒否戦略へを将来の脅威と位置づけ、海空軍海兵隊へ戦力投射へ遠距離打撃戦力の向上を求めています。

 JASBC統合エア-シー-バトル構想は文字通り両用作戦能力強化を当然必要とするものであり、海兵航空部隊は両用作戦における不可分の航空支援を担う。重要なのはこのJASBC統合エア-シー-バトル構想を実現する上で、現在のAH-1ZやUH-1Yの能力以上、若しくは部隊数の運用を求めている可能性で、運用上の限界を超えた可能性を考える事も出来得る。この視点については日米共同対処の必要性があります、日米同盟の根幹に関わる運用なのですから。

 同型機の飛行停止求めるべき、自民党の二階幹事長と公明党の井上幹事長は23日夜の会談でこう一致しました。この頻度で今後も予防着陸が継続したならば、墜落事故の懸念も払拭できません。海兵隊の抑止力は重要ですが、墜落事故が生じれば抑止力の根底が同盟関係にあり、同盟関係は日米両国民の信頼が担っている基盤そのものを破綻させかねません。

 日米は同盟国ですので自衛隊のAH-1SやAH-64Dが訓練支援を行う選択肢がある。実際オーストラリアのレオパルド1戦車やM-1A1D戦車が米海兵隊訓練支援を行った事例があります、在沖米軍は第3海兵師団や第31海兵遠征隊等陸上戦闘部隊を有しますが編成上戦車部隊を欠いている為、両用訓練を行う場合に豪州にて戦車と共同訓練を実施していました。日米両国民が納得できるよう検証を徹底する選択肢は当然あるでしょう。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-01-31 15:18:32
予防着陸は事故ではないというが、平常運行でも無い

ただ、この現象を指摘すると反基地だ、左翼だとネット上で叩かれる

基地賛成派や容認派は予防着陸も賛成し容認しなくてはならないのか
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Unknown (ドナルド)
2018-01-31 23:50:16
小さな話ですが、AH1S系列と、AH-1Z/UH-1Y系列は、エンジンもミッションも全く異なると理解しています。AH-1Z/UH-1Y系列は、412とも全然違うのでは?

AH-1Z/UH-1Y系列の駆動系で何かが起きているのでしょう。当然、看過できない問題です。が、陸自とは関係ないと思います。

ところで、陸自、AH1Sは骨董品と化しているし、OH-1は飛行停止がまだ解けていないようですし、アパッチも数が足りず、かつ、旧式化している。

英軍が大規模なカットを予定しているので、そのAH64E(たしか発注済み。ちなみにエンジンもイギリス製でなくなった)を一部、日本にも分けてもらってはどうでしょう?オスプレイのせいで整備体制・コストがあっぷあっぷで、どうにもならないと思うので、アパッチも24機もあれば十分かと。




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