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【京都発幕間旅情】揖斐三輪神社,最澄所縁木曾三川揖斐川総鎮守いにしえの揖斐城址麓に佇む

2021-06-02 20:12:02 | 旅行記
■美濃国揖斐川の歴史を辿る旅
 岐阜県に揖斐川町という町があります。ここは"えびがわ町の妖怪カフェ"というファンタジー作品の舞台ともなっている街です、この美濃国揖斐川を辿る旅を紹介しましょう。

 揖斐三輪神社、岐阜県揖斐郡揖斐川町に所在する神社で旧近鉄養老線、現在の養老鉄道終点と廃線となった名鉄揖斐線の本揖斐駅跡、その中間に位置し、近くには国鉄樽見線、現在の垂水鉄道が。揖斐川総鎮守という社殿は、かつてこの地を治めた土岐氏の山城、揖斐城城台山、その麓に位置しています。

 揖斐川町とは当方にとり若干の友人がいる他、中々に縁遠い場所ではあるのですが、少し前に所用ついでにこの地の神社を参拝する事が出来ました。こういう町との縁は大事にしたい。もう少し山奥へ進みますと、谷汲山華厳寺という荘厳優美な寺院があるとの事ですが、時間の関係で総鎮守へ御挨拶へ。

 大物主大神を祭神とする揖斐三輪神社、揖斐川の上流にあります。揖斐川とは東海道本線の主要駅大垣駅に近く、中京地区では長良川と木曽川と揖斐川の河川を総称、木曾三川といい、この木曾三川の中で唯一旧海軍が巡洋艦の艦名としなかった名が、揖斐川でもある。

 神武天皇の治世下には既にこの地に在ったという揖斐三輪神社は、創建の詳細について確たる伝えが無いのですが、神武天皇の頃まで遡るとも。流石にそれは、といい、しかし奈良時代中期にはこの地の現在地から少し離れた播隆山というところに神社の社殿はあったといい、諏訪大社の祭神、武御名方富命を祀っていたという。

 最澄、延暦年間の803年に比叡山延暦寺薬師如来像の双仏像を背負っての諸国巡幸の際に、この地で横蔵寺という寺院を建立しており、揖斐三輪神社はその際に立ち寄ると共に般若心経を拝読した事で歴史に登場する事となりまして、最澄との所縁というものは、それから播隆山に在って崇敬集めた。

 城址公園を見上げるこの社殿、成程、城山の周りには幾つかの寺院も並んでいまして、神社の石材等も豊富につかわれており、往時の活況を偲びます、石材も再利用されたのでしょうか。社殿などは幾度か遷座を経ていますが、当時の遷座は建材をそのまま移築する様式であり恐らく雰囲気は残っている。

 正和年間の1315年、荒廃していました揖斐三輪神社はその社殿を再興する機会に恵まれます。播隆山は現在の社殿よりも離れた場所にあるのですが、この現在位置というところが、当時揖斐城という山城があったのです。播隆山からの遷座は、もう少しだけあとのこと。

 揖斐氏、土岐氏の支族である揖斐氏がこの地に城郭を造営したのは康永年間の1343年で、揖斐城はここから安土桃山時代までの実に200年間、この揖斐三輪神社が現在あるこの地に在ったというのですが、天文年間の1547年に斉藤道三の侵攻を受け落城、最後は破却された。

 美濃国の城郭は江戸時代には加納城と大垣城に分かれるのですが、揖斐城はそのまま再興される事無く、跡地には城郭ではなく揖斐陣屋が建てられます。揖斐陣屋、天正年間の1577年、播隆山にありました揖斐三輪神社は、城郭破却を受け、その麓である現在位置へ、その前にも社殿があったともいうのですが、揖斐三輪神社が漸くここに遷座します。

 城郭は破却、その跡地に揖斐三輪神社が遷座します。しかし、揖斐陣屋も並びましたので、跡地が揖斐陣屋のかたちで行政中枢となった事により、期せずして揖斐三輪神社は人々が参拝に集う社殿ともなった訳ですね。江戸時代の寛文年間1672年には揖斐陣屋旗本岡田善政により大規模な修繕が行われる事になった。

 西国三十三所観音霊場第三十三札所、としまして谷汲山華厳寺が列せられますと、揖斐三輪神社は最澄がこの地を巡行した際の御縁ある場所としまして札所巡礼の経路ともなり、寛文年間の大修理を受けたままの姿のまま、明治維新、そして昭和の世界大戦を生き抜く。

 伊勢湾台風、1959年に中部地方を襲った戦後日本最大の台風災害、残念な事に寛文年間造営の建物群は、この巨大台風により倒壊します。しかし、散逸した部材を可能な限り用いる事で1961年、鎌倉期の様相を再現し現在の本殿はじめとする建物が再建されました。周りには水の流れが豊かで、歴史ロマンと共に時が流れているようです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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