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【日曜特集】第14旅団創設6周年-善通寺駐屯地祭【8】訓練展示状況終了(2012-04-29)

2019-07-14 20:02:17 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■軽装甲機動車の躍進
 第14旅団祭善通寺駐屯地祭の訓練展示はいよいよ佳境を迎えてきていますが、撮影位置からは少々と遠い。

 創設記念行事を紹介していますが、本行事は即応機動旅団改編前の2012年のもの。現在の第14旅団は強力そのもの、主力の第15即応機動旅団が、北海道から東京と沖縄、又は世界の隅々まで、必要があれば即座に出動する即応機動旅団という編成となっています。

 2012年当時の第14旅団は、第15普通科連隊、第50普通科連隊、第14特科隊、第14戦車中隊、第14偵察隊、第14高射特科中隊、第14施設隊、第14通信隊、第14特殊武器防護隊、第14後方支援隊、第14飛行隊、第14音楽隊等、という編成になっていました。

 2020年代に向かう第14旅団の陣容は以下の通り。旅団司令部、同付隊、第15即応機動連隊、第50普通科連隊、中部方面特科隊、第14偵察隊、第14高射特科隊、第14施設隊、第14通信隊、第14飛行隊、第14特殊武器防護隊、第14後方支援隊、第14音楽隊、と。

 第15即応機動連隊は、久々に日本へ騎兵連隊が戻ってきた、との印象でした。96式装輪装甲車で充足された三個中隊に16式機動戦闘車の2個中隊、120mm重迫撃砲装備の火力支援中隊に75式装甲ドーザーから93式近距離地対空誘導弾まで備えた本部管理中隊という。

 騎兵連隊は機動力を活かして側面攻撃や後方連絡線遮断、相手の防御陣地が防御力薄弱であれば正面攻撃による突破も可能です。現代では航空騎兵部隊や戦車部隊へとってかわられた部隊ですが、敵情解明するという騎兵の任務はそのまま偵察部隊へ受け継がれている。

 96式装輪装甲車が三個中隊分整列した情景というものは、富士学校や北海道の旅団行事であればこのくらいは普通であったのですけれども、2018年の即応機動連隊編成完結式の居並ぶ迫力は、なるほど本州にも中央即応連隊のほかにも強力な部隊が、という印象でした。

 威力偵察、自衛隊はもう少し偵察というものに本腰を入れなければ、師団偵察隊には87式偵察警戒車が5両配備され、2000年代に入りここに機銃装備の軽装甲機動車が加わったのみ、これでは敵の前衛を突破できません、そして前衛を相手に生き残れるかも確証がない。

 16式機動戦闘車が2個中隊あれば、現在の配備定数から機動戦闘車中隊の装備定数が戦車中隊の14両編成よりも小型の可能性はあるのですが、それでも5両の87式偵察警戒車よりもかなり生存性が高くなったといえるでしょう、前衛を突破できる可能性も出てきます。

 即応機動連隊の96式装輪装甲車三個中隊は、16式機動戦闘車の打撃力では敵前衛を突破できない状況、例えば戦車部隊を前衛に派遣している状況や多数の歩兵戦闘車と共に複郭陣地を形成されている場合などに普通科部隊ならではの機動力により偵察が可能でしょう。

 普通科部隊はあらゆる地形を克服する唯一の職種、必要であれば下車戦闘を展開でき、これは普通科の錯綜地形を最大限活かす能力と相まって、主陣地を解明するには大きな能力となります。そして180名しかいない偵察隊よりも、長時間に戦闘継続が可能でしょう。

 偵察部隊として虎の子即応機動連隊を動員するのは、と思われるかもしれませんが、統合機動防衛力に関する防衛省解説では、武力攻撃を受けた場合、当該地域の地域配備部隊に続いて即応機動部隊が投入され、続く重装備の部隊の投入への拠点を、と説明されている。

 北部方面隊の重戦力を主体とした部隊が第三次動員部隊と理解するならば、その前に投入されるという第二次投入部隊である即応機動連隊の性質は、やはり機動力を以て展開し、敵の陣容と戦力を解明するための偵察部隊としての性格を有している、といえるでしょう。

 第14旅団は、しかし改編前の編成を考えますと、陸上自衛隊の将来を考える上で重要な要素を含んでいます。第14旅団の編成に第7高射特科群と中部方面航空隊を高射特科連隊とヘリコプター隊として編成に加えた場合、どうか。那覇の第15旅団と似た編成ですが。

 師団という作戦単位が、相次ぐ人員の抽出、これは中央即応集団や水陸機動団という新部隊を自衛隊全体の定員をほぼ動かさないまま新編し続けたためですが、年々人を減らし、定員割れではなく定員そのものを縮小、ほぼ形骸化、名ばかり師団を生んでしまいました。

 2000年代までは、人員は少なくとも戦車大隊と特科連隊があり、地対空ミサイルと防空レーダーまで一通り備えている、一方面を担任できる作戦単位としての師団の体裁は保っていましたが、2020年代を前に、特科火砲は方面直轄へ、戦車は廃止、という流れが進む。

 地域配備部隊としての部隊を維持するのであれば、要するに動かさない部隊として、方面隊が有するホーク部隊、ホークは年々03式中距離地対空誘導弾へ換装されていますので戦域防空部隊というべきか、これと方面隊が有するヘリコプター部隊を加えてはどうか。

 旅団として一つの方面を、地域警備と戦域防空を担える部隊として維持できるでしょう。しかし、これでは旅団であり師団ではありません。続く選択肢として、方面混成団と旅団を統合し、師団を構成する。これで少なくとも定員は10000名規模とできるでしょう。

 即応機動師団と即応機動旅団以外の部隊は、こうした旅団混成団統合型地域配備師団としたほうが、部隊の体裁が取れるのではないか。もちろん、地域配備とはいっても第14旅団型の部隊ですので、連隊戦闘団を編成し初動部隊としての任務も担える事は確かですね。

 北部方面隊のように自衛隊全体で重装備が集中配備される部隊は別として、本州の戦車部隊を廃止し特科部隊も方面隊直轄であり、配分された場合でも特科火砲が師団あたりに一個大隊のみ、という師団については方面混成団との混成を真剣に検討するべきと考えます。

 地域配備師団の概案を。中部方面隊は第3師団を中部方面混成団と統合し、地域配備師団へ。東部方面隊は第1師団を東部方面混成団と。西部方面隊は第4師団を西部方面混成団と師団を。東北方面隊も第9師団を東北方面混成団と統合し師団へ。五個師団が望ましい。

 即応機動師団改編は北海道以外では東北方面隊第6師団が予定されており、現在既に改編が成った西部方面隊の第8師団がある。即応機動旅団は第14旅団が改編完了で、続いて東部方面隊第12旅団が即応機動旅団へ改編予定となっています。これらを本土に集約すべき。

 北部方面隊に新たに即応機動師団と旅団が改編されますが、現状充分な防衛力を有する師団の即応機動師団改編を二つ棚上し、資材を中部の第10師団、第13旅団へ充当する事で、基本的に本土の師団旅団を地域配備部隊は一応の規模を、機動運用部隊は装備をまわせる。

 地対空ミサイル部隊と地域配備部隊の統合という視点は、第14旅団よりも那覇の第15旅団を彷彿させるものですが、第15旅団以上に特科部隊と戦車部隊を少なくとも隷下に置いており、火力戦闘と機動打撃、独立運用できる野戦部隊として充分な能力を有しています。

 第14旅団は、陸上自衛隊が長年研究した部隊編制の集大成の一つといえる。その上で、十年単位の長期計画である防衛計画の大綱が数年おきに改訂される状況下で次々と加えられる新任務対応へやせ細る師団へ、何か打開策を第14旅団が有しているように見えますね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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2 コメント

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Unknown (ドナルド)
2019-07-14 22:11:42
記事ありがとうございます。

師団ですが、
・全ての戦闘部隊を旅団編制とし
・方面隊隷下の旅団を全てまとめる一つの師団の下にまとめる
・東部と東北方面隊を統合する
のが一番良いのではないでしょうか?

こうすることで、
・旅団と師団が並列し、連隊が2種ある不合理を解消。
・師団の人員規模は2万人ほどとなり、世界基準に達する。世界よりも1階級高い中将の指揮する部隊としては、これくらいでないと。。

こうすると、例えば、
・北部方面隊:第2師団(3個現役旅団+1個予備役旅団)、第7戦車旅団

・東部方面隊:第1師団(3個現役旅団+1or2個予備役旅団)、第1空挺旅団、第12空中機動旅団

・中部方面隊:第3師団(3個現役旅団+1個予備役旅団)、第14山岳機動旅団

・西部方面隊:第4師団(3個現役旅団+1個予備役旅団)、第16両用旅団

こうすると、師団は全て3個現役旅団+1or2個予備役旅団で合理的な配置となるかと。。

まあ、妄想ですが。。(苦笑)
返信する
Unknown (渋川雅史)
2019-07-16 22:41:11
ドナルド様
私も同じような妄想をいだく一人でございます(笑)
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