北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防災の日九月一日:関東大震災犠牲者十四万名/南海トラフ連動地震最大犠牲者想定三十二万名

2018-09-01 20:12:32 | 防災・災害派遣
■自衛防災と国家危機管理
 伊勢湾台風と同じ経路の巨大台風が来週にも本土上陸が懸念される中、防災の心構えは実行に移しておきたいところ。

 本日は防災の日、1923年に発災した関東大震災の鎮魂の記念日です。戦災を除けば関東大震災を超える巨大災害は間もなく100年を迎えますが発生していません。こう言いますのも、関東大震災はあの3.11東日本大震災の七倍もの犠牲者を出しており、一方で忘れてはならないのは、関東大震災規模の地震被害が再来する事だけは確かで、時間の問題という。

 巨大災害は、個人でも十分準備を行う事は可能です。しかし、歴史地震という規模の巨大災害は個人の蓄財や防災準備で出来る事は、生命を護るという最小限の事であり、その後の救助が行われなければ、少なくとも千年単位での防災を行う事は個人の限界を超えており、国家や社会が次世代を見越した防災、危機管理体制を構築する他、方法はありません。

 防災といえば消防警察に民間防衛と自衛隊、という枠組みが筆頭に浮かぶのですが、歴史地震のような長い間隔で襲来する脅威へは、例えば航空機や艦船と水陸両用能力や空中機動能力による救助と搬送に衛生と物資集積や末端輸送、という枠組みが必要となり、個人では発災数時間の、地域では発災十数時間、それ以上はより大きな枠組みが必要でしょう。

 関東大震災は、江戸時代の旧市街を急速に近代化する中、都市防火や避難路整備と耐震構造という構造への留意が不充分である中、日中の活動時間最中に発生し、強風を伴い降雨の無い天候という諸条件が重なり、死者行方不明者14万という大被害が発生しました。戒厳令が発令され、その復興には非常に長い期間を必要とし、日本の防災体制が替りました。

 伊勢湾台風、1959年9月21日に発生した巨大台風は最大風速75m/sの巨大台風は最低気圧895hPaまで勢力を増したのちに中京地区を直撃し、同時に発生した高潮が沿岸部の木造建築物や貯木場を破壊し住民に襲い掛かり死者行方不明者5000名以上、湾の形状と高潮の発生時刻や規模が悪く重なり、沿岸施設の配置と住宅街の位置が大被害を及ぼしました。

 阪神大震災、1995年1月17日の早朝に発生した淡路島北部を震源とする直下型地震です。都市を襲う直下型地震は従来の耐震構造にも限界がある事を冷酷に突き付け、6500名もの犠牲者を出すとともに、神戸市では地震よりも水害への警戒を重視した住宅構造、揺れの特性が高架道路や中層建築物へ被害を及ぼし木造建築の火災への脆弱性も突き付けました。

 東日本大震災、2011年3月11日に発災したマグニチュード9という巨大地震は、一つの地震が広範囲の震源域において連動させる事で巨大な津波を引き起こし、沿岸部に千年に一度という規模での津波被害を及ぼすと共に、その過程で発生した福島第一原子力発電所事故は原子力と地球温暖化対策という世界規模の論点問題点を提起したのは御承知の通り。

 二万名以上の人命が地震と津波、そして関連災害で亡くなった東日本大震災、東北地方太平洋沖地震、重要視しなければならない教訓は個々人での準備では想定外といわざるを得ない歴史地震の規模であっても、国家の危機管理という視点からは想定外とする事は妥当とは考えられません。その上で巨大災害の想定を列挙しますと、考えるべき視点は、多い。

 南海トラフ巨大地震、地震災害は歴史地震として千年に一度の周期で発生する巨大地震への研究が進み、海溝型地震、巨大津波を誘発する危険な地震は、連動発生したならば大阪と名古屋を含めた都市部が震度七の激震に襲われると共に最大32万もの人命、関東大震災の倍以上、広島核攻撃や東京大空襲を上回る人的被害を引き起こす事が懸念されています。

 東海地震、1974年大規模地震対策特別措置法により海溝型地震にあって唯一発生前に予知可能であるとされ、厳重な監視体制が組まれてきました。その背景には東海地震が第二次大戦中の測量により唯一海溝型地震として震源域が地上まで延伸しており、体積歪計や地下傾斜装置にて前駆現象を感知できるとされていましたが、2017年に無理と撤回しました。

 東京湾直下地震、関東大震災型の首都直下型地震という9月1日防災の日の懸念した地震の再来です。東京都内は関東大震災後、多くの地震には見舞われていますが、震度七や震度六強の地震を経験していません。耐震基準を筆頭に耐震補強や免震構造と制震構造や防火対策、燃えない都市計画は長く進められてきましたが経験が無い、という懸念は大きい。

 カルデラ噴火災害や巨大台風、想定しなければならない巨大災害は多々あります。もちろん、防災を御上に任せる、という提案を行うものではありません、歴史地震の規模の災害では個人が出来る自衛防災の準備には限界があるという事を示したまでですが、自己責任で復興までは出来ずとも発災後数時間十数時間を生存する体制への備え、というものは当然必要です。

 しかし、その上で政府や社会の準備体制を見ますと、一定以上の災害に対しては世論の支持が無ければ、防災への費用を要する準備の遅延の陰に、想定外、というあの東日本大震災の際に連発された単語が介在しているように感じてなりません。もちろん、災害準備を理由に人権が制限される状況は避けねばなりませんが、その上で主権者も責任があります。

 F-35やAAV-7、RQ-4にLSTとDDH、広範囲の巨大災害にはF-35戦闘機の戦域情報管理能力、複合光学センサーと無人機管制能力を活かした情報収集能力が無ければRF-4偵察機の様に被災状況をいちいち着陸し現像する体制では被害を把握できない。都道府県規模で沿岸部が長期浸水すればAAV-7のような水陸両用車輌が多数無ければ身動きがとれない。

 歴史地震や巨大災害に備えるには、まず被害想定を冷静に算出し、どの程度警察と消防に初動対応能力を持たせるのか、自治体の備蓄の限界を超える際の広域輸送に必要な規模、広範囲の浸水被害を念頭に必要な水陸両用作戦能力や空中機動能力の算定、広範囲の情報を迅速に把握するための手段にどういった機材がどれだけ必要か、こうした視点がまず必要になると考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補足-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 平成三〇年度九月期 陸海空... | トップ | 【日曜特集】金沢駐屯地創設6... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防災・災害派遣」カテゴリの最新記事