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米英仏有志連合シリア攻撃!アサド政権東グータ自国民化学兵器無差別使用へ軍事制裁を実施

2018-04-17 20:09:13 | 国際・政治
■シリア政府サリン使用へ制裁
 土曜日日本時間早朝にBBCが米英仏有志連合によるシリア攻撃を速報、当方は高崎で知りました。

 トランプ大統領は日本時間14日土曜日午前、シリアの化学兵器使用に対する軍事制裁として、巡航ミサイル攻撃を実施しました。2011年から続くシリア内戦、シリアのアサド大統領率いるシリア軍が首都ダマスカス近郊のシリア反アサド勢力拠点、東グータ地区への化学兵器攻撃を実施、窒息系塩素ガスに加え神経ガスサリンが使用された事への制裁です。

 アメリカ、イギリス、フランスの有志連合によるシリア空爆は、アメリカ海軍より紅海海上を遊弋する少なくとも一隻のイージス艦よりのトマホーク巡航ミサイル、空軍のB-1戦略爆撃機よりの巡航ミサイル攻撃、イギリス空軍のトーネードGR4攻撃機4機より恐らくストームシャドウ巡航ミサイルが、またフランス空軍もラファール戦闘機を運用しました。

 日本政府はこのシリア空爆を支持しており、ドイツ政府やカナダ政府など先進七か国G7は有志連合支持で一致しています。一方、シリア政府を支援し大規模な軍事援助を継続しているロシア政府は強く反発しており、この米ロ対立が我が国安全保障情勢へも、北方領土での軍事訓練強化や爆撃機の長距離飛行訓練等、間接的な影響を及ぼす可能性があります。

 日ロ関係は北朝鮮核ミサイル攻撃脅威へのミサイル防衛システム構築を前に当初ミサイル防衛へ理解を示していたロシアが一転し、陸上配備型イージスシステム“イージスアショア”の東日本防空用建設へ強く反発している事から摩擦要素があり、間接的ながらもシリア攻撃への支持は、即日ロ緊張まではいかずとも影響を及ぼす可能性も否定できません。

 シリア軍東グータ地区化学攻撃は今月7日に実施、多数の死傷者が現地からの写真多数などで判明しました。過去に神経ガスによる攻撃は数回のみですが、激しい国際社会からの批判を受け塩素ガスによる攻撃や大量の爆発物を樽に詰め込み市街地へ航空機から投下する通常攻撃に切り替えられていましたが、7日の攻撃は神経ガス使用が濃厚とされています。

 グータ地区への化学兵器使用は今回が初めてではありません。2013年8月21日にも実施され、122mmロケット弾改造のロケット弾12発が発射、60リットル程度の化学剤が1500m範囲内に投射され、2000名の死傷者が出ました。国連調査団は現地調査の結果、ロケット弾残骸、遺体や土壌からサリン残留物質を検知すると共に死者350名を報告しています。

 2013年サリン攻撃は当時のアメリカオバマ大統領が軍事制裁を決定、上院軍事委員会がその権限を付与しましたが、シリア政府を支持するロシア政府が全てのシリア軍化学兵器の廃棄と化学兵器全廃条約へのシリア加盟を条件に空爆の中止を要請し、軍事行動は中止されています。しかし、塩素ガス等簡易化学精製有毒剤による攻撃はその後も散発しました。

 サリンの保有は化学兵器禁止条約に違反し、非戦闘員への無差別攻撃はジュネーブ文民保護条約に明白に違反しています。トランプ大統領は2017年4月6日にもシリアのサリン使用に対して巡航ミサイルによる制裁を実施しており、地中海を遊弋するアメリカ海軍イージス艦よりトマホーク巡航ミサイル59発を投射し、シリア空軍飛行場等を破壊しました。

 ミサイル攻撃、意外であったのは三点。一つはシリア首都の化学工場を攻撃した点で昨年のミサイル攻撃が空軍基地へ限定されていた点と比較し精密誘導兵器を使用とはいえ首都攻撃に踏み切った事、もう一つは継続的な攻撃ではなく現時点では次の攻撃の可能性を示唆しつつ、トランプ大統領が既に攻撃終了を宣言しており一回限りの攻撃であった事です、これにより株式市場などへの今回の影響が限定的なものとなったもよう。

 トランプ大統領はシリアにて活動中の米軍撤退を宣言していましたが、これがミサイル攻撃という大規模介入により撤回された事、これが三つ目の意外な点でした。シリアへはISIL掃討支援へ米軍特殊部隊が派遣されており、その派遣兵力も相当規模である事が報じられています。これがロシアとの摩擦要素となっていましたが、撤収を宣言し、その摩擦要素の解消が示唆されていましたが、新しい緊張要素となってしまいました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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