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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

RQ-4無人偵察機、三沢基地到着 台風期における米空軍グアム配備機の分散配備計画一環

2014-05-24 23:20:47 | 防衛・安全保障

◆グローバルホーク、環太平洋が舞台

 NHKによれば配備計画が進められていた米空軍三沢基地のRQ-4グローバルホーク無人偵察機の第一機が24日、三沢基地へ到着したとのことです。

Eimg_30920 RQ-4,残念ながら手元に写真がありませんが、非常に大型で、監視範囲と滞空時間という部分で非常に高性能の無人偵察機となっています。航続距離は22000km以上、無人機ですので搭乗員の交代へ着陸する必要が無く36時間連続で任務飛行が可能です。これは、航空自衛隊が運用するE-767早期警戒管制機と比較した場合、E-767の航続距離は10370km、警戒飛行時間は13時間程度を想定していて、勿論空中給油などで延伸しますが、RQ-4は単体性能で、全体として無人機は無人ならではの長時間の飛行能力が特色といえるでしょう。

Img_9535_1p RQ-4は、合成開口レーダーと電子光学/赤外線(EO/IR)センサーを搭載し監視飛行を行います。この点では、巨大なレーダーを搭載し航空機を監視するE-767よりは洋上哨戒任務を行うP-3C哨戒機と似た運用を採るというべきでしょうか。合成開口レーダーの性能は明らかにされていませんが、概ね200km以上の小型目標を監視追跡可能とされ、電子光学/赤外線(EO/IR)センサーも100km以上の距離を隔て目標を監視可能です。同時追尾目標は1900とされ、偵察だけでなく広範囲の監視活動に威力を発揮します。

Adimg_9824 RQ-4は、巨大な無人偵察機です。これは、主翼を長時間飛行する任務へ対応を考え、低速で飛行できるよう細く長くしたもので、全幅は35.42mに達します。参考までにKC-767空中給油輸送機の全幅は47.57m、 C-1輸送機の全幅は30.6mです。主翼の幅はKC-767程ではありませんが、C-1よりは一回り大きく、その巨大さがわかるでしょう。ただ、空虚重量は6.71tとC-1の23.3tよりも軽く、本機が偵察機であることを示しています。RQ-4は全長13.52m、巡航速度343ノット、1998年に初飛行を果たし2004年より配備が開始されました。

Img_3305 RQ-4は、移動式管制装置と基地管制装置の二つで遠隔操縦可能で、今回配備されたRQ-4はカリフォルニア州の空軍施設より遠隔操縦され、グアム島から日本へ到着しました。無人機となりますと、他の航空機と衝突するのではないか、という問題がありますが、偵察飛行は19000mと旅客機の巡航高度の1.8倍から2倍の高高度を飛行するため、旅客機はRQ-4の巡航高度まで上昇できません、即ち現状では安全性に問題は無く将来成層圏を飛行する超音速旅客機が大量導入でもされない限り衝突の危険性は皆無と言えるでしょう。

Timg_9322 他方、過密空域では有人機ほど例えば異常接近機への回避行動などで迅速に行うことが出来ません。このため、同型機の導入を計画したドイツ空軍等は欧州の過密空域での運用は不可能、と結論を出していますし、米国内でも軍用機に限らず無人機全般の航空ルールの画定が急がれているところです。反面、我が国では新幹線に代表される鉄道網の比重が比較的高く一概には言えません。一方で、無人機の法律上の扱いが不明確で、国内での無人機運用が進まず、例えば東日本大震災などでも活用の機会が大きくはありませんでした。

Img_4577a 何故三沢基地へ配備されたのでしょうか。それは、台風への対策です。元々RQ-4はグアム島のアンダーセン基地を拠点として運用されてきましたが、アンダーセン基地は台風の影響を多く受けるのです。グアムの台風は物凄く、格納庫に収容していても格納庫ごと吹き飛ばされるほどで、コープノースグアム演習に展開する航空自衛隊機も、優先的に格納庫へ収容する協定を結んでいますが格納庫ごと飛ばされた際には米軍は責任を持てない、と返答されたこともあり、台風が発生する7月から10月までの期間に影響が生じるとのこと。

Img_0479 グアムの台風ですが、例えば2002年にグアムへ上陸した超巨大台風ポンソナは、最大風速128ノット以上で最大瞬間風速70mという、規格外の巨大台風が上陸しています。これこそ格納庫ごと吹き飛ばされる威力がある台風を示し、アンダーセン基地の空軍機等は移動可能な機体を全て沖縄の嘉手納基地などに退避させました。なお、グアム州ではこの巨大台風に対して犠牲者は無く、巨大ではありましたが想定内の規模でこの瞬間最大風速が生じた、といえるのでしょうか。

Gimg_2674 三沢基地は青森県にあり、冷戦時代はF-16戦闘航空団を展開させる北方の槍、航空自衛隊の北部航空方面隊司令部やF-2を運用する航空団にE-2Cの飛行隊が展開しています、そして台風は中々来ません。米空軍施設は、嘉手納基地は台風進路にあり適さない、岩国航空基地と厚木航空基地は海軍や海兵隊の施設、横田基地は首都圏航空過密空域にある、したがって、三沢基地が最適だ、と選ばれたのでしょう。 2機が配備され、10月まで三沢を拠点として運用されるほか、地上管制装置を三沢に展開させる、とのこと。

Img_2230 RQ-4ですが、航空自衛隊も3機を導入する計画があります。長時間の警戒監視飛行に寄与する機体ですので監視飛行に最適ですし、何よりも大規模地震へ対応する有力な航空機で、被害状況を常時エンジン音が救助活動に影響しない高高度から判定し派遣部隊の行動を支援することが出来ます、もちろん南西諸島防衛でも1900の目標を常時追尾できますから隣国がどれだけ多数の船舶を展開させても同時監視が可能です。ただ、運用に関する基盤や方法が未知数ですので、米空軍の支援を受ける事となります。そのノウハウ蓄積に三沢基地での運用は大きな機会ともなるでしょう。

北大路機関:はるな

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2 コメント

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読売新聞の報道によりますと、来年度予算にグロー... (アシナガバチ)
2014-05-25 07:53:44
読売新聞の報道によりますと、来年度予算にグローバルホーク導入の予算を計上し、実際に日本側に納入された際はやはり三沢基地に配備する模様です。そうなりますと日米両国のグローバルホークが三沢基地に配備される事となりますね。
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はるなさま (月虹)
2014-05-25 10:34:54
はるなさま

三沢基地が選ばれたのは秘匿性に優れる半地下構造の航空機用耐爆シェルターが纏まった数あり姉沼通信所に代表される米軍の偵察部門があることも関係しているかと思われます。

2006年に米空軍が行ったRQ-4の飛行試験ではオーストラリアから離陸後にグアム、硫黄島上空を経由して南西諸島上空に達し再びオーストラリアに戻るコースを取っていますので長時間の飛行と偵察能力には期待が持てます。
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