北大路機関

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特集:平成27年度防衛予算概算要求概要③・・・重要施策、水陸機動防衛力整備Ⅱ

2014-08-31 19:18:36 | 防衛・安全保障

◆ティルトローター機・両用装甲車の取得予算を要求

 平成27年度防衛予算概算要求概要は重要施策である水陸機動防衛力整備へティルトローター機と両用装甲車の取得予算を要求しています。

Img_7857 水陸機動は、単に上陸用舟艇の大軍で浜辺に乗り付けて押し込む単純なものでは無く、陸海空の連携が非常に重要となり、例えば米海兵隊の場合は独自の航空戦力を保有し海軍の指揮系統に入って運用する、という方式でこの難題に対応、自衛隊にとり有効な水陸機動部隊を編成することは一概に想像されるほど簡単なことではあり得ません。

Img_931181  海上からの空中機動と同時に艦艇艦砲射撃や航空機近接航空支援を展開し、海岸線と海岸線への連絡経路を空中機動部隊より降着した部隊が確保する短時間で艦艇より複合高速艇と水陸両用装甲車両を展開させる。それまでの僅かな時間に沿岸部を隠密裏に掃海部隊水中処分隊を投入し揚陸艇進入への機雷掃海を行わなければならない。

Img_6222  軽装備の偵察部隊と両用装甲車により海岸一帯を確保、空中機動部隊と両用装甲車両部隊を迅速に合流させ、海岸線への連絡経路の制圧を強化するこの間に揚陸艇を用いて海岸線一体に戦車をはじめとした重装備上陸部隊の増援を展開させる海岸堡を構築、戦車や装甲車両と兵站部隊を上陸させ、戦果拡張の策源地を構築する、というもの。

Thimg_7584  新たにこの任務へ対応するべくティルトローター機を取得すると概算要求に盛り込まれています。なお、機種選定中であり、現在のところ実用ティルトローター機は米海兵隊が運用し在沖米軍にも装備されているMV-22、これ以外には米沿岸警備隊が採用に向け開発を進めている小型のAW-609以外にありません。

Vimg_9939  なお米海兵隊ではMV-22は中型機扱いで、加えて重輸送ヘリコプターCH-53を海兵隊は有しています。概算要求にもティルトローター機の位置づけを現用のCH-47JA輸送ヘリコプターを航続距離と巡航速度の面から補完する用途で導入するとしていて、機種が未定であるので概算要求には具体的な取得費用の要求は盛り込まれていませんが、導入へに情報収集費用ではなく、取得として予算を要求しています。

Img_1950  CH-47Jの勢力維持改修、こちらには3機分が140億円で要求されています。概算要求には総飛行時間を新造機と同程度に延伸すると共に航続距離を延伸すると示されていますので、CH-47JをCH-47JA相当に改修する、と考えられます。JとJAでは航続距離が倍近く強化され、全天候飛行能力の有無などの性能差も大きい。

Img_5876  新造した場合の取得費用は1機あたり55億円、勢力維持改修と新造では3機分で165億円か140億円か、25億円程度の差が生じ、これを大きいと考えるかは視点が異なってきますが、既にCH-47Jの初期調達分の用途廃止が始まっていますので、勢力を維持すると同時に予算を縮小するためには延命改修を行うという選択肢はあるのでしょう。

Mimg_6979_1  陸上自衛隊には現在55機のCH-47J/JAがあり、ここにティルトローター機を導入するのですから予算面から苦肉の策として挙げられたのでしょう。もっとも、近年、陸上自衛隊に留まらず海上自衛隊の航空機なども勢力維持へ向けた延命改修の度合いが増大しており、装備を大事に運用するという意味で本来これがあるべき姿であったのか、新造機取得の予算不足が顕著化したというべきなのか、何とも言えませんが、ね。

Img_1506  水陸両用車についても取得が行われます、ただ、取得に向けた調査費用では無く取得で調整されているのですけれども、車種検証中、と概算要求には記載されています。既に参考品としてアメリカよりAAV-7両用強襲車を試験調達していますのでこちらが有力視されるのですが。

Img_2231  単に浮くだけの装甲車に推進装置を付けただけでは波浪で転覆してしまい会場では使用できません。海上機動性及び防護性に優れた水陸両用車を整備、と記載されているのみで具体的な車種についてはもちろんのこと、。調達数と取得費用についての記載はありません。

Himg_2731  国産車両に関する開発も過去に防衛省は各社に打診しているのですが具体化せず、一応調達は、AAV-7であれば増強一個大隊が充分機動できる数量が中期防衛力整備計画で取得が盛り込まれていますので、概算要求を財務省がいかに査定するのか気になるところ。

Inimg_6599  強襲揚陸艦、水陸両用装甲車とともに来年度予算の概算要求において注目されている分野は、この調査研究に関する予算が計上されたことでしょう。強襲揚陸艦と現在の輸送艦の相違点は航空機運用能力をどの程度重視しているか、というもので区別することが出来ます。

Simg_1978  強襲揚陸艦、多目的輸送艦と防衛大臣は表現されていますが、この艦艇の在り方についての研究費用が来年度予算に盛り込まれています。研究費用が盛り込まれているのみですので来年度予算で強襲揚陸艦/多目的輸送艦の建造費が要求されているわけではありません。

Img_1427  概算要求に記された防衛省の構想では、ティルトローター機即ち可動翼機を含む固定翼機とヘリコプターを運用可能な全通飛行甲板構造、更にエアクッション揚陸艇と必要に応じ水陸両用車両を搭載可能なドックを後部に配置し、指揮統制機能、医療機能、航空機運用機能、人道支援災害救援機能、水陸両用機能、補給機能、大規模輸送機能を有する艦艇を想定している、とのこと。これについては次回に検証することとしましょう。

北大路機関:はるな

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