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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第十師団創設44周年 守山駐屯地祭

2006-10-13 08:59:50 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■名古屋は燃えているか?

 十月八日、名古屋市守山区において実施された陸上自衛隊第十師団創設44周年記念行事が開催された。

Img_8935 今回は、毎回お世話になっており、前日も小牧基地航空祭でご一緒させてもらったC.ジョニー氏一行と今回もご一緒させていただいた。こののち、名古屋鉄道瀬戸線(名鉄の他線とは独立しており、独特の車輌体系を有する事から名鉄のガラパゴスと呼ばれる)も案内していただいた。ここでお礼申し上げたい。

 写真はグラウンドに整列した連隊旗。前日の小牧と同じく強風が吹き、旗が盛んに振られていた。

Img_9011  第十師団は第十混成団として編成され、1962年の師団改編において普通科連隊三個を基幹とする乙師団に改編され、また2002年の師団改編において即応予備自衛官基幹の第49普通科連隊を新編、甲師団編成での即応近代化師団(戦略機動師団)へと近代化されている。また、空挺部隊出身の火箱師団長のもと、イラク復興人道任務への部隊派遣により更に練度を高め、今日に至っている。

Img_9010_1  車輌行進における高機動車、完全武装の普通科隊員が乗車している。1992年より本格配備が開始された高機動車は、従来、徒歩とトラックによる輸送に依存していた普通科部隊の機械化を大きく前進させた。なお、抜けるような青空であるが、昨年撮影できた写真右側の建物脇煙缶所が本年は立ち入り禁止であった為、本年の撮影位置に落ち着いたが、観閲行進途中降雨に悩まされた昨年とは異なり、順光に恵まれ、抜けるような青空が高機動車を浮き上がらせている。

Img_9014_1  中隊旗を先頭に行進する軽装甲機動車。本車は地形の防御力に依存した従来の地上戦闘が火力の近代化と彼我索敵能力の向上により効率性が低下し、且つ、対歩兵能力に優れた敵機械化部隊の路上機動という特性に対応するべく、突発的戦闘に柔軟な対応を可能とする小型装輪装甲車として開発され、2001年より本格配備に入ったのが軽装甲機動車で、第十師団には第33普通科連隊が2002年に配備したのを皮切りに全普通科連隊一部中隊に配備されている。

Img_9026_1  普通科連隊の対戦車中隊に所属する79式対舟艇対戦車誘導弾。射程4kmの対戦車ミサイルで、各中隊に12基、一個師団で48基が配備されている。なお、車載した状態では発射できないとされる。昨年は旧型の73式小型トラックにより行進していたが、今年度は新型の73式に換装していた(49連隊のものは旧型)。師団長最後の手札とされた対戦車隊が各普通科連隊に配備された事で、普通科部隊の対戦車能力は大幅に向上している。

Img_9052_1  特科連隊のFH-70榴弾砲、155㍉榴弾を最大30kmまで投射可能で、豊川駐屯地よりの参加となった。73式特大トラックにより牽引されているが、補助動力装置により自走も可能である。牽引時の全長は実に19メートルにも達するので、公道を走行している際には注意が必要である。第十師団管区には中演習場が無い為(大演習場は中部方面隊管区全体でも無いが)、射撃訓練には東富士などの演習場に展開する必要がある為、もしかしたら他の師団管区よりは公道で見る機会が多いかもしれない。

Img_9080  観閲行進の最後に雄姿を見せた第十戦車大隊の74式戦車。戦車の無限軌道とエンジンの独特の音へ撮影をしていなかった招待者も思わず携帯電話のカメラを取り出して懸命に撮影を試みていた。滋賀県今津駐屯地(第三師団管区)に駐屯しており、師団改編に伴う普通科連隊増強に伴い、一個中隊を増強している。なお、戦車を撮影する際には一両目が通過した際に排気煙で視界が塞がれるため、その前に撮影する必要がある。

Img_9096  観閲行進に引き続き、訓練展示の模様。普通科一個中隊による執銃訓練の様子。89式小銃を用いて近接戦闘のガンハンドリングや部隊行動の様子を展示していた。戦闘防弾チョッキを着込んだまま小銃を水平に構えている。アメリカ軍によるイラク治安作戦の戦訓として、やはり戦闘の最後を決するのは小銃手であり、特に一般住民と敵対勢力がとり混ざった市街地での戦闘では民生被害局限化や友軍相撃防止の観点から冷静な部隊行動が必要となる。

Img_9134_1  訓練展示に向け移動する高機動車。

 偽装網を施し、誘導の隊員の指示に従い前進している。訓練展示は守山駐屯地に駐屯する第35普通科連隊により実施された。装甲防御力を有しない高機動車は自己位置の秘匿と地形による防御力に依存する必要があるが、逆に完全な地形偽装は最大の防禦となることが戦史により証明されている(なお、イラク派遣仕様の高機動車には耐破片材が装備されているとされる)。

Img_9160_1  訓練展示において仮設敵陣地を粉砕するべく前進する74式戦車。105㍉砲による直接火力支援は、精密な射撃による支援を友軍部隊に供することができる。これは特にゲリラコマンド対処に大きな威力を発揮する事が、朝鮮戦争からコソボ国連防護軍派遣などの戦訓から証明されている。また、旧式化が叫ばれる74式戦車であるが、伏撃戦闘では今なお侮りがたい威力を有しており、加えて普通科部隊と協力しての戦闘では大きな威力を発揮する。

Img_9199_1  我がほうの榴弾砲や戦車砲の射撃により炎上する仮設敵陣地、小銃にて抵抗する仮設敵背後で擬爆筒が焔を上げている。今回は昨年装甲車で返り討ちにあった戦訓から敵も戦車を動員しての攻撃をかけ、且つ本年は諸般の事情(霞ヶ浦のアレね)により航空支援が望めないにも拘らず、我が74式戦車は敵戦車を見事に撃破した。なお、この擬爆筒、不発弾が結構出たようで、状況終了後、不意に爆発し轟音が周囲を驚かせていた。

Img_9210_1  想定全滅した仮設敵を押しのけて突撃する我が普通科隊員。ちなみに第三師団千僧駐屯地祭では着剣した状態で突撃を実施していたが、グラウンドの広さの関係もあり、友軍相撃防止の観点からこの状態での突撃となったのだろう。この後、三階建ての“守山ビル”(駐屯地広報談)に突撃し、凄絶な市街戦闘の展示を行っていた。突撃は軽装甲機動車の火力支援の下、前進した高機動車より降車普通科隊員が実施した。

Img_9224  状況終了後、装備品展示を実施している中、金沢駐屯地(第14普通科連隊)、豊川駐屯地(第49普通科連隊)、久居駐屯地(第33普通科連隊)所属部隊が駐屯地へ撤収を開始していた。駐屯地正門を続々と出る車輌部隊は、あたかも映画の中の防衛出動のシーンを見るようである。写真は73式中型トラックで、高機動車導入までは、一個小銃班を輸送できる本車は普通科部隊機動の主力となっていた。各種装備運搬には丁度いい車体規模で、近年では高機動車の車体を用いた新型が登場している。

Img_9237  軽装甲機動車が続々と出てくるので、当然ここは大都市名古屋市内、此処から少し先では軽装甲機動車が渋滞していた。渋滞など名古屋市内では日常茶飯事であるが、装甲車の渋滞というのは少し珍しいのではないだろうか。ちなみに、交通事情への影響から、FH-70榴弾砲は夕刻、戦車は夜間に運搬されるという。

 HARUNA

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4 コメント

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テポドンはプラズマ発電か原子力発電で超強力マイ... (長尾広興)
2011-01-05 22:57:00
テポドンはプラズマ発電か原子力発電で超強力マイクロ波で撃ち落とすがいいです。また、射程圏外のビックスコ-プで接近できない北朝鮮のテロ防止です。アイデアです。
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長尾広興 様 こんばんは (はるな)
2011-01-07 00:50:01
長尾広興 様 こんばんは

プラズマ発電という核融合発電方式が実用化の途上ですので、難しいのでは、と思うのですが、マイクロ波による迎撃もマイクロ波はアルミ一枚で遮蔽されてしまうので、金属製の弾道ミサイルに対抗できるのか、と少々気になります。木製布張りのAn-2輸送機ならば、なんとかなるのかもしれませんが・・・。

射程圏外のビッグスコープ、射程圏外にスコープ、つまり照準器を置いても照準した目標は射程内しか対処できませんので、アイデアとして出しても、実用性の面で問題が出てしまうのではないでしょうか。例えば拳銃に50倍照準眼鏡を載せても逆に照準の意味が無くなり、テロは防止できないと思いますし・・・。
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重水素原理で分解機能式でマイクロ波に重水素を乗... (長尾広興)
2011-01-23 10:36:52
重水素原理で分解機能式でマイクロ波に重水素を乗せてで打つ方法でアルミを割りテポドンを迎撃などはできるといいです。重水素分解とマイクロ波をコンビです。アイデアさんです。
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長尾広興 様 どうもです (はるな)
2011-01-25 02:57:43
長尾広興 様 どうもです

重水素はマイクロ波を充てなくとも短時間で原子構造が崩壊してしまいますが、全くエネルギーが放出されませんので、軍事兵器には応用できないのではないでしょうか。
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