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COVID-19,政府緊急事態宣言全国解除-日本型感染対策能力検証必要性と冬季第二波への警戒

2020-05-26 20:00:14 | 国際・政治
■収束と保健所制度の意義
 COVID-19,実はもう少し悲観的な将来を想定していましたが日本は既存制度の枠内で一時的に成果を示したもよう。

 全国緊急事態宣言解除。政府は昨日26日、一週間前の時点で感染拡大の収束度合いが緩慢であった首都圏及び北海道について、感染源の不明な感染者の比率や集中治療施設などの収容余力などを政府諮問員会にとうた上で解除妥当の助言を受け、これをもって今月31日までの予定であった全国緊急事態宣言の解除に踏み切りました。一時は緊迫していました。

 COVID-19、この新型コロナウィルスの恐るべき点は高い感染力と長い潜伏期間に感染を広げると共に、発症後の高い致死率にあり、もちろん緊急事態宣言解除は、四月中旬の状態までの緊急事態宣言前夜へ急速に感染者数が増大する懸念は否めませんが、しかしながらアウトブレイク感染爆発、国内で手のつけられない緊迫の状況までは猶予をえたかたち。

 ワクチン開発と治療薬開発、今後はこの二点を軸に冬にも予想される第二波に警戒することとなります。今後は国内においてクラスター感染が断続的に続く懸念があり、ワクチンが開発され予防接種が世界規模で普及するまで、いったいどの程度の期間を要するかは全く未知数であり、感染爆発と隣り合わせる“新しい日常”というものが模索されることに。

 都市封鎖に踏み切らず感染爆発を沈静化させた。我が国の感染対策は一つの勝利と言わねばなりません。警察軍隊が都市部を封鎖し政府が国民一人一人の動向を直接監視し自由な身動きも自己実現も出来ない、こうした施策は異常であるとともに将来の自由の放棄へ直結しかねないものであり、次の感染到来まで、今回の僥倖といえる成功背景を探る必要が。

 保健所制度の勝利。結核拡大を背景とした1930年代からの全国保健所整備とともにハンセン病を筆頭に感染症対策に置き去りとされる感染者の権利と社会の安全への長い人権への法廷闘争が、クラスターを早期に発見して隔離しつつ、感染者の人権へも配慮するとの、基本的人権と公共の福祉へ難しい均衡を果たしたのではないか、こうした分析もあります。

 日本特殊論に帰結しては安易すぎるのですが、保健所網全国整備が果たした感染症への早期警戒態勢と中央からのクラスター対策班による増強態勢、これが成功の背景として説得力を有するのですが、このほかにも法的自粛要請による厳しすぎない自粛への同調圧力が厳しすぎる都市封鎖以上に感染を効果的かつ迅速に、沈静化させたという分析もあります。

 国内感染沈静化、しかしこれは収束であって終息宣言ではありません。そして社会に及ぼした影響も大きい。内需拡大とともに外需依存度を高度経済成長時代から抑えたとはいえ、国内製造業のサプライチェーンは2010年代前後から急速に中国へ製造移転したことで、中国国内の感染拡大による製造業の停滞とサプライチェーン破綻影響が極めて大きい。

 学校教育へも影響は巨大で九月入学への転換が授業の三ヶ月間に及ぶ停止から真剣に検討されています。会計年度と離隔することはしかし非効率を醸成しますが、授業時間が足りないことも事実であり、九月とラジカルに進まずとも今年は六月入学、来年は五月入学、一日あたり一校限余分に授業し土曜授業の臨時再開、何かの施策は必要となりましょう。

 感染収束、しかし一応の勝利ではあります。欧州や北米では最悪期に一千人以上が死亡し冬を迎える南米ブラジルでは昨日だけで800名が死亡、アメリカの600名を越える状況となりました。COVID-19は季節性であるかどうかについてはまだまだこれから症例が積み重ねられる感染拡大初期です。なんとか冬の第二波を乗越えられる体制構築をのぞみます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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