北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

イラン報復軍事行動切迫の可能性,イスラエルのテヘランハマス指導者暗殺事件受け中東情勢切迫

2024-08-04 07:01:01 | 国際・政治
■中東情勢-更なる緊迫化
 日本への影響はと問われればシーレーンへの影響や在留邦人保護の問題という短期的な影響と、より長期的な影響の懸念というところでしょうか。

 イランによるイスラエルへの報復は数日から一週間以内の可能性が高い、アメリカ当局者の話をNHK報道が報じています。これはイラン大統領就任式に出席すべくテヘランを訪問していたハマス指導者のイスラエルによる暗殺事件を受け、イラン最高指導者ハメネイ師が報復を宣言しており、これがイスラエルへの実際の攻撃が切迫しているという。

 エイブラハムリンカーン空母打撃群が中東へ追加派遣された、アメリカのCNNが国防総省のシン副報道官の発言を報じており、既に中東にはセオドアルーズベルト空母打撃群が展開していますが、この増強に当てられるという。更にミサイル巡洋艦などを地中海に遊弋させ、イランがイスラエル本土攻撃に踏み切った場合のミサイル防衛にあてるかまえ。

 戦闘飛行隊を1個飛行隊増強しているとシン副報道官はオースティン国防長官の命令が在った事も発表しており、これは2024年4月にイランがイスラエル本土を大規模ミサイル攻撃に踏み切った際に展開した地中海の艦艇がミサイル駆逐艦2隻であったことを踏まえますと、より大規模な戦力が中東周辺に増強されている事を意味します。

 ハマス指導者の暗殺により、イスラエルは出口戦略を確保しえたのかもしれませんが、時機と場所が悪すぎた。イラン国内の大統領就任式に併せて暗殺を実行するなど、しかもオリンピック期間中という真の悪さです。イランが報復しないというのは、1941年の時点で真珠湾攻撃を看過すべきだったとアメリカに主張する程無理があることでしょう。

 イラン報復はどの規模となるのか。今年4月に、イランは大使館へのイスラエル軍空爆への報復として数百発の無人機と数十発の弾道弾をイスラエル本土に発射し、ほぼすべては迎撃されていますが、イラン本土からイスラエル本土へ攻撃を行うという前例を残しました。そして、大半が自爆用無人機であった為、友好国などと共に迎撃が出来た構図です。

 中距離弾道弾による飽和攻撃が行われた場合、イスラエルの防空は可能なのか。イスラエルはアロー3迎撃ミサイルを装備し、アメリカ海軍はスタンダードSM-3をミサイル駆逐艦やミサイル巡洋艦から発射可能なのですが、友好国などが運用するペトリオットやTHAADは、放物線を描く途中のミッドコース迎撃能力が無い為に飛び越されてしまうでしょう。

 報復、イランの目的はイスラエルによる再発を抑止する懲罰的攻撃となる可能性が高いのですが、イランとしてはこれを4月のミサイル攻撃により達成した自己評価が在ったのでしょう、それは一回で完了した事が何よりも示しています。しかしイスラエルはこの攻撃におくせず、今度はイランの首都テヘランで暗殺作戦を無人機等を用いて実施しました。

 4月の攻撃よりも大規模な攻撃を行わなければ、イスラエルに対して、イラン本土での破壊工作を抑止できないとイラン指導部に突き付けた可能性がある。他方、4月の攻撃ではイラン本土へイスラエルが報復を行わなかったのは大半を迎撃成功させ被害が無かった為という背景があります。では今回、大規模な攻撃を行い被害が生じた場合は、どうなるのか。

 スタンダードミサイルの備蓄、もう一つ課題は、イスラエルのアロー3がどの程度備蓄されているかは未知数ですが、アメリカ海軍のスタンダードSM-3迎撃ミサイル、大気圏外の弾道弾を迎撃した実績がある唯一のミサイル、その備蓄がイランの中距離弾道弾備蓄数ほどあるのか、という。すると2隻の空母の意味も考えると、中東情勢の行方が懸念されます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【G3X撮影速報】春日井駐屯地... | トップ | 【京都発幕間旅情】榛名さん... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

国際・政治」カテゴリの最新記事