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かが空母化改修と台湾海峡情勢-艦隊を離れるヘリコプター搭載護衛艦長期改修と周辺情勢への対応能力を考える

2022-08-28 07:00:12 | 先端軍事テクノロジー
■かが空母化改修を考える
 空母化という言葉が良く用いられるのですがDDVとなるのかDDHのままなのかは発表はありません。

 F-35B新田原配備開始は護衛艦かが第一次改修工事完了翌年の2025年からとなります。F-35B戦闘機は航空自衛隊に既に配備されているF-35A戦闘機が空軍型であり滑走路を必要とするのに対し、F-35Bはアメリカ海兵隊のF/A-18C戦闘攻撃機やAV-8B攻撃機の後継であり、特にAV-8B攻撃機の強襲揚陸艦からの運用能力を継承する戦闘機となっています。

 海上自衛隊ではF-35Bの垂直離着陸能力を最大限発揮するべくヘリコプター搭載護衛艦からの短距離発進垂直着艦能力を構築する方針であり、既に全通飛行甲板を有する護衛艦いずも型の飛行甲板耐熱改修を順次進めています。ただ、この海上自衛隊のF-35B運用能力付与は、我が国周辺情勢に影響を与え得る事は無いでしょうか。例えば台湾海峡情勢です。

 台湾海峡情勢を考えるならば中国海軍は航空母艦建造を進めており、電磁カタパルトを搭載する003型航空母艦福建の進水式を2022年に挙行しました。しかし、海上自衛隊がF-35Bを運用する護衛艦部隊の整備を進めるならば、西太平洋地域におけるアメリカ海軍以外の巨大な艦上航空戦力が整備される事を意味し、タイムリミットを示した事になるでしょう。

 護衛艦かがF-35B搭載改修は台湾海峡情勢に影響を与えるのでしょうか。2022年3月より海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦かが、の改修工事を開始し呉で入渠中です。既に2021年に海上自衛隊は飛行甲板耐熱改修工事を完了した護衛艦いずも艦上へF-35B戦闘機発着試験をアメリカ海兵隊の支援とともに岩国基地沖および高知県沖にて実施しました。

 かが改修工事は大規模なものとなり、この改修工事により護衛艦いずも型の識別点でもありました独特の台形型艦首飛行甲板構造は全長を最大限戦闘機の短距離滑走に対応させるべく全通飛行甲板全体を長方形形状に変更する、つまり飛行甲板形状を造り変える大規模なものとなります、この為、飛行甲板耐熱工事実施よりも格段に改修工事の時間を要する。

 2024年にひと段落する、この規模の期間で艦隊から海上自衛隊最大の護衛艦が離れるという事は、はるな型護衛艦FRAM工事以来のもので、単なる全体修理と異なり飛行甲板の設計変更は完熟訓練を必要とするものです。一方、台湾海峡情勢を鑑みますと、2024年以降まで海上自衛隊の抑止力を現状のまま対応できるか、真剣に情勢をみなければなりません。

 F-35B戦闘機艦上運用と護衛艦F-35B戦闘機運用は法整備の面で踏み込んだ自衛隊法改正が求められるのかもしれません。それは航空自衛隊のF-35B戦闘機がアメリカやイギリスなどの航空母艦や強襲揚陸艦の艦上での共同訓練強化が見込まれる為で、これはイギリスの空母クイーンエリザベス艦上にアメリカ海兵隊機が展開した様な運用も考えられる。

 航空機の訓練展開は、既にSH-60K哨戒ヘリコプターやMCH-101掃海輸送ヘリコプターが行うような自衛隊以外の艦艇での訓練が行われていますし、アメリカ海軍やオーストラリア軍などの航空機が海上自衛隊護衛艦での発着訓練を実施しています。この現状を見る限り、航空自衛隊のF-35Bが外国艦へ訓練展開する可能性はある種当然といえましょう。

 法整備、しかし忘れてはならないのは、有事の際にSH-60Kが燃料補給を受ける場合とF-35Bが再発進の補給を受ける場合とでは、戦闘、特に集団的自衛権行使への関与の度合いが大きく異なる事を留意しなければなりません。現行法のまま法の運用で対応できるのか、法改正が必要なのかを含め、問題となる前に充分な検討が必要といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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