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海軍記念日-百十七年目の日本海海戦,山陰九州沿岸民間慰霊祭とウクライナに"Z"掲げるロシアへの正気の問い

2022-05-27 20:05:27 | 北大路機関特別企画
■日本海海戦戦没者慰霊
 日本海は大陸と列島を隔てる海です。さて、Zといえば日本ではZ旗か日産のスポーツカーや路線バスの旅を思い浮かべるところなのですが、ウクライナでは侵略ロシア軍の象徴となっている。

 1905年の今日、日本海軍は日露戦争が激戦を極めるなかに欧州から長躯展開したロシア太平洋第二艦隊ことバルチック艦隊を対馬海峡において迎撃、戦艦の数では日本側の4隻に対しロシア海軍は8隻と日本は劣勢でましたが、新鋭戦艦と高い練度により圧倒的勝利を果たしました。先の黄海海戦と旅順要塞攻略と併せ、大陸との連絡線を維持に成功する。

 日本海海戦、日露戦争の天王山となったこの戦いは先の3月10日に決着となった奉天大会戦により日露双方陸軍が対峙している中、日本本土と大陸を結ぶ補給路が遮断されるならば派遣部隊は戦闘不能となる切羽詰まる状況での海戦でしたが、東郷平八郎海軍大将を指揮官とする連合艦隊はロジェストヴェンスキー中将率いるバルチック艦隊を圧したのです。

 海軍記念日。日本海海戦のこの日5月27日は海軍記念日と指定される事となり、奉天大会戦に勝利した3月10日も陸軍記念日に指定されることとなります。もちろん、太平洋戦争敗戦と共に海軍の第二復員省改組等の歴史とともに海軍記念日の位置づけは大きく変わりましたが、しかしこの5月27日は、日本海沿岸の多くの場所で慰霊祭が営まれている。

 Z旗を掲げ日本海海戦において東郷平八郎司令長官は自ら旗艦三笠の艦橋露天甲板の羅針盤隣に陣取り、艦隊の先頭に三笠を配置し、指揮官先頭の範を執りました。Z旗は本来“本船漁網曳航中”という意味を有しますが、開戦においてはXYZのZであり最後の奮戦を命じる奮励の意味合いをもち、このZ旗はその後の日本海軍においても象徴的となりました。

 慰霊祭、双方の戦没者を、という慰霊祭はある種勝者の配慮といいますか、恩讐を超える美徳や、騎士道的なものの名残と云われるかもしれませんが、実はこの海戦の慰霊祭は、海上自衛隊において行われる式典とは別に、日本海沿岸の寺院などでおこなわれているのは海戦についてというものではなく、漂着した戦死者を弔うという慰霊祭が、というもの。

 殉職者、本来は戦死者と表現するべきなのでしょうが、島根県江津市では漂流した特務艦が沖合で沈没し漁民が救助した際の慰霊碑がありますし、石見では仮装巡洋艦等が漂着しています、長崎県対馬市の琴浦でも撃沈された装甲巡洋艦の乗員が漂着し住民に救助された、もちろん壮絶な海戦でしたので戦死者も多く重傷者が離艦出来ず沈んだ例も数多い。

 海はそして非情でもありまして、鳥取県ではいまの岩美市や境港市に大山町海岸に、戦死者が漂着しています、日本海海戦では多数のロシア兵が戦死しましたが、その一割ほどが日本沿岸に御遺体が漂着していまして、住民の希望から現地に埋葬されています、無論日本側が海軍や外務省と調整があってのことですが海難者として手厚く葬られた歴史がある。

 山口県長門市では慰霊祭とともに漂着した御遺体の捜索がそのまま海浜清掃の行事に発展したところもあるようで、海軍が、その軍艦旗を継承する海上自衛隊が行う慰霊祭とはまたちがった文化のようにも思えるのですね。もちろん漂着の日は違いますし、コロナ禍下にあって慰霊祭のかたちは例年通りとはゆかないことはあるのですが、伝統で定着します。

 Zの表示、さて冒頭に記しました通りZはロシアではウクライナ侵攻を正当化する象徴として扱われています、もともとはまともな敵味方識別装置を持たないロシア軍は彼我を区別する為にZを侵攻初日に戦車へ大書したのが始まりで、ΔやWなど識別記号は変化していましたが、ここまで長期化を予測していなかったロシア軍はZのまま侵攻を続けている。

 日本の視点から見ればZ旗はロシア艦隊が壊滅した日本海海戦という印象もありまして、信号旗かアルファベットかの違いはありますが、ロシア人は歴史も知らないと嘲笑する方も少なからず居ます、ただ、ロシア軍の蛮行は、日本も大陸では日中戦争以降、民兵掃討や敵性外国人摘発に、誇る事が出来ないような掃討作戦を行った事と重なるようにおもう。

 日本海沿岸での慰霊祭、民間で行われる受難者への慰霊祭は節度というものと倫理というものを伝える様に思えまして、受難者を丁重に扱う事を我が国では眉をひそめる様な方はいないでしょうし、誇るといいますと語弊が生まれそうで語彙力の多寡を痛感するのですが、戦争という狂気の中で勝機よりも正気に重きを置いた、こちら側に立つ努力といえる。

 ウクライナ侵攻のロシア軍、行っている事は市街地への無差別砲撃や住民虐殺と民間資産の破壊のみならず掠奪、とても正気とは思えない施策が組織的に行われ、これを命じた隣国の大統領は世界をも核兵器で脅すという、狂気の水平線を超えているように思う。しかし、日本海側の民間の慰霊祭を営む方の様な方は、ロシアではどうなのだろう、そう寂しく思ってしまうのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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