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大怪獣ガメラ 公開五〇周年特別企画【1】 奮闘第七師団!精鋭第七戦車大隊夕張遭遇戦!

2015-12-14 21:27:29 | 映画
■大怪獣ガメラ 公開五〇周年
 2015年はどういう一年間か、と問われれば戦後70年、という答えが妥当なのですが、戦後20年を経て誕生した大怪獣ガメラの50周年でもあったわけです。

 大怪獣ガメラ、その日本上陸に際し最初に戦火を交えたのは創設間もない陸上自衛隊第七師団であった、ということをご存知でしょうか。大怪獣ガメラ、当方の世代は平成ガメラシリーズとして1995年より始まった平成三部作+一作、という印象が強いのですが、ガメラという巨大怪獣のシリーズの始まりは昭和に大映が世に送り出した八作のシリーズから始まりました。大怪獣ガメラ、60mの巨体はゴジラの50mを凌駕し、火炎放射で敵を火の海に、回転ジェットで空を飛ぶ、なるほど大怪獣です。そんなガメラを観直してみましょう。

 その大怪獣ガメラ、昭和ガメラシリーズは子供向け、という印象が強いのですが、特に自衛隊の描写については最初の三部作を見ますと、二作目が特に顕著なのですが、平成ガメラシリーズと見比べてもそん色がない程、考えさせられてしまいます。怪獣が出る=自衛隊が撃退、という構図はアメリカなどのモンスター映画を観ますと米軍が出てこない事もあり苛々するところがありますが我が国では人間の軍隊が侵攻した際以上に即座に自衛隊が展開します。

 1965年11月27日に公開となりました大怪獣ガメラ、劇中“明るく力強く、東千歳駐屯地、第七師団司令部”と、映画“大怪獣ガメラ”のガメラが北海道に上陸した際の現地対策本部が置かれている建物の正門には書いてありました。第七師団、そう陸上自衛隊の第七師団、新千歳空港着陸間近に見えるあの東千歳駐屯地が作中に出てきました。第七師団が展開した状況とはどんな状況なのか、といますと核爆発の影響で北極に出現した巨大な亀型の怪獣がついに日本に上陸した、というところ。

 襟裳岬の灯台を破壊し一旦海中に逃れた巨大怪獣はその後太平洋側から再上陸、内陸部に前進し夕張から岩見沢付近の地熱発電所を襲っているという描写です。怪獣が上陸したらば迎撃しなければなりません、保健所や猟友会で対処出来なければ110番で警察ですが警察でもどうにもならなければ自衛隊が出るしかないのです、北海道は陸上自衛隊発足以前の保安隊時代に北部方面隊が創設され、大陸からの脅威に備えていました。ソ連軍は強力な機甲部隊を有していましたので、陸上自衛隊でも機械化に重点を置いていました、其処に劇中ではガメラ上陸、と。司令官、と呼ばれている、恐らく師団長が上陸した怪獣の位置を陸上自衛隊の観測機L-19が捕捉、その情報を元に攻撃準備を発令しますと、M-41戦車やM-1榴弾砲等が土煙を上げて続々と展開します。

 指揮官先頭の伝統でしょうか、専門家の意見を聞きつつ師団長自らジープのハンドルを握り最前線へ、師団長が乗車する指揮車は第7普通科連隊と表示されているので第7普通科連隊は京都府福知山に駐屯しており少々考証に手落ちがありますが、当時の第7師団隷下の普通科連隊は第11普通科連隊、第23普通科連隊、第24普通科連隊、この当たりは交渉不足か玄海、というところでしょう。第七師団は当時自衛隊最強の機械化部隊との位置づけでした。元々第七師団は第七混成団として真駒内駐屯地に創設されています。

 第七混成団は1962年の陸上自衛隊師団制度導入に伴い第七師団へと改編、第11普通科連隊、第23普通科連隊、第24普通科連隊、第7特科連隊、第7戦車大隊を基幹とする編成を採っていました。師団改編後三年でガメラとの戦いです。さて、混成団とは、現在では方面混成団として予備自衛官や即応予備自衛官と教育大隊の混成部隊という意味合い、その前にあっては沖縄や四国等地域防備に当たる高射特科群や普通科連隊等連隊規模の部隊を中心に幾つかの支援部隊等を混成した小型旅団、という位置づけではありましたが、自衛隊発足当時の混成団は、管区隊という4000名規模の連隊を基幹とする歩兵師団型の部隊を機動力で支援する機動運用部隊、という位置づけにあったもの。

 当初計画では、機械化混成団として陸上自衛隊は全国の全ての混成団を装甲人員輸送車や自走榴弾砲と自走高射機関砲を配備し戦車大隊と協同することで管区隊が強力な人員規模を以て展開する防衛線に侵攻部隊を阻止し、機械化混成団が機動力と機械化部隊の機動打撃力を以て側面を叩き撃破する、という目的で創設されていました。ただ、60式装甲車やM-42自走高射機関砲とM-44自走榴弾砲の配備が進まず、第七混成団のみの機械化に留まりました。

 60mもの高さを誇るガメラ、京都の東寺五重塔よりも高い大怪獣へどう挑むか。対策本部は専門家の助言を受け、ガメラが夕張付近の地熱発電所を襲ったところで、地熱発電所の最大出力である35万キロワットを放電させ感電死させようとしますが、全く効果が無く戦車大隊と特科連隊による攻撃を師団長が命じます。一瞬ガメラへ至近距離まで接近して攻撃を加える61式戦車も映りますので、75mm戦車砲に加え国産90mm戦車砲まで投入された、という展開です。ちなみに自衛隊では戦車を施錠に配慮し保安隊への導入当初、戦車を特車と呼称していましたが1962年より特車を戦車と呼称変更しています。

 第七師団はこのように第七混成団の師団改編を受け間もなく、劇中ではありますが大怪獣ガメラと戦火を交えた訳です。そして、旧陸軍時代にあっては北海道の師団は旭川の陸軍第七師団がその名を轟かせていまして、日露戦争と太平洋戦争での獅子奮迅ぶりは旭川の北鎮記念館を始め多くの博物館や資料館で知る事が出来ます。実は昭和ガメラシリーズは大映の小道具のかんけいでしょうか、旧軍装備が多々見られ、その中に他移動の第七師団、と聞きますと大時代的な印象を受けてしまいます、こんな視点から、昭和の名画を再探訪、という主旨も面白いかもしれませんね。

北大路機関:はるな くらま
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