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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】F-15JSIジャパンスーパーインターセプター計画中止とF-35B新田原配備決定

2021-10-05 20:21:01 | インポート
■週報:世界の防衛,最新12論点
 今回は航空防衛関連の話題に焦点を絞り紹介します、航空自衛隊のF-15近代化改修はどうなるのか、いっそF-2後継を兼ね新造F-15FXを190機ほど生産した方がと思うのですが。

 我が国防衛省はF-15戦闘機用AGM-158C-LRASM長距離対艦ミサイル導入計画の白紙撤回を検討しています。AGM-158C-LRASMはスタンドオフミサイルとして、敵防空圏外からの長距離打撃を目的として2019年に導入が決定しています。しかしボーイング社の提示したF-15改良計画は当初計画の見積もりが甘く、四倍以上に要求金額が増大しています。

 F-15近代化改修計画は1981年より導入開始されたF-15を2040年代まで第一線において運用させる野心的な計画ですが、増大した近代化計画費用は約100機のF-15を改修する費用だけで最新のF-35戦闘機50機分の新規調達費用に匹敵、更に増大する可能性があり、既にボーイング社によるF-15近代化改修計画を撤回、ミサイルもこれに従う形となります。 
■中止となったF-15JSI計画
 ジャパンスーパーインターセプター計画は名前だけはSFチックとなっているのですが。

 我が国防衛省が中止を決定したF-15戦闘機98機の近代化改修計画について。ボーイング社ではF-15JをF-15JSI,ジャパンスーパーインターセプター計画として羽本的に能力を向上させる計画でした。この為の費用として45億ドルが想定、しかし初期費用だけで22億ドル、この費用を支払っても最初の1機さえ改修とはならず計画が中止されたかたち。

 F-15JSI計画は、しかし103基のAPG-82-V1-AESAレーダーと116セットのミッションコンピュータ、アメリカ製電子戦システムなどをF-15に搭載するものです。ただ、ここまで費用を掛けるのであれば、1990年代に製造終了し機体寿命に限りあるF-15Jを用いるのではなく、新たにF-15戦闘機をライセンス生産し搭載した方が、合理的といえましょう。
■新田原基地へF-35B配備決定
 年度内にもヘリコプター搭載護衛艦を用いてアメリカ海兵隊によるF-35B試験が開始されるとの報道もありますが。

 航空自衛隊が導入する最新鋭のF-35B戦闘機について九州防衛局は7月15日新田原基地が配備先として最適であるとして地元自治体へ説明しました。伊藤九州防衛装備局長は新富町などを訪れ、鹿児島の馬毛島に新設される飛行場での訓練が行えるとともに呉基地のヘリコプター搭載護衛艦かが、艦上運用でも連携が採りやすいとして理解を求めました。

 F-35BはF-35Aと比較し垂直離着陸が可能、新田原基地への配備は令和6年度に6機、令和7年度に2機を配備し、新田原基地へは最終的に20機を配備し飛行隊を編成する方針です。新田原基地のF-35B配備は現防衛大綱が閣議決定し、F-35B導入が決定した際に既に既定方針として示されましたが、正式に防衛省が地元自治体へ説明したのは今回が初めて。

 新田原基地には第5航空団が配置され南九州及び南西諸島北部の防空を担当していますが、同時に新田原基地は航空自衛隊の戦闘機部隊として初めてF-15イーグルを配備し全国へ機種転換を支援するマザースコードロンとなった事でも有名です。第5航空団は現在F-15戦闘機を一個飛行隊装備し、また教育訓練用のF-15飛行隊、第23航空隊が展開しています。
■ナイジェリア空軍スーパーツカノ
 EMB-314スーパーツカノCOIN機は中等練習機としても用いられるプロペラ機を転用した軽攻撃機です。

 ナイジェリア空軍はEMB-314スーパーツカノCOIN機の12機の導入を開始します。EMB-314スーパーツカノCOIN機はブラジルエンブラエル社が開発したターボプロプ高等練習機で内6機がIRST前方赤外線監視装置搭載型です、ナイジェリア空軍は国内でのイスラム武装勢力への対応を主眼に2019年に3億2907万ドルでその導入を契約しています。

 EMB-314スーパーツカノCOIN機は2021年6月時点でアメリカフロリダ州のEDSIエンブラエルディフェンスセキュリティインコーポレイテッド社にて試験中、ナイジェリアへの引き渡しは先ず2021年7月に6機を、2021年10月に6機を納入する計画です。ナイジェリア空軍は先ごろ中国設計のJF-17サンダー戦闘機も導入、空軍近代化が進行中です。
■タイ空軍はC-295輸送機を増強
 C-295輸送機といいますと日本のC-1輸送機やイタリアのC-27Jと同じくらいの航空機です。

 タイ空軍はC-295輸送機を増強する。タイ空軍ではC-295輸送機を既に2機運用しており、今回の増強で3機体制となる。エアバスディフェンスアンドスペース社によれば2023年に納入されるとのこと。本機はもともとは過疎地空港を想定した高翼型旅客機であるが、その胴体配置から軍用輸送機としても運用され、東南アジアだけで既に25機が運用中だ。

 C-295輸送機はエアバスディフェンスアンドスペース社が2001年に開発したターボプロップ双発小型輸送機で、原型は1983年にスペインのCASAがインドネシアのIPTN社と共同開発したCN-235で、C-295は最大離陸重量23.3t、9.2tの貨物を輸送し巡航速度は480km/h、航続距離は9t搭載で1450km、フェリー航続距離は5220kmとなっている。
■米空軍OC-135B観測機を退役
 OC-135B観測機、この135という機体はKC-135の派生型を示すものですが様々な用途に用いられています。

 アメリカ空軍は6月9日、オープンスカイ条約用のOC-135B観測機を退役させた。OC-135Bは偵察機であるRC-135と同じKC-135空中給油機の派生型で旅客機型のボーイング707と同じ大型胴体に様々な観測機材を搭載する。運用はオファット空軍基地の第55航空団であるが、今後アリゾナ州デイビスモンサン基地にてモスボール保管されるもよう。

 OC-135B観測機は1998年にアメリカとロシアの間で結ばれた信頼醸成措置であるオープンスカイ協定に用いる相互査察用航空機であるが2020年11月にアメリカのトランプ大統領が条約脱退を表明、続いてロシアの条約離脱が表明され事実上失効している。ただOC-135は第309航空機維持再生群により保管される為、将来の再活性化は可能とされる。
■オランダはF-16戦闘機12機を売却
 F-35戦闘機の導入が開始されたオランダでの旧式化したF-16の話題です。

 オランダ空軍はF-16戦闘機12機をアメリカの民間軍事会社へ中古販売すると発表しました。アメリカの民間軍事会社とはドラケンインターナショナル社で各国軍隊へ仮設敵部隊を提供し部隊訓練評価支援など実施、オランダ空軍はF-35戦闘機導入により余剰となったF-16を供給します。オランダは2024年までに保有するF-16全48機の運用を終了する。

 ドラケンインターナショナル社はフロリダ州レイクランドに本社を置き、仮設敵業務についてはネリス空軍基地を中心に実施、ミラージュF1を22機とミラージュⅢコピー機のチータ戦闘機12機、MiG-21戦闘機27機やA-4攻撃機13機など多様な戦闘機を保有していますが、近年はイスラエル中古のF-16Aなど各国よりF-16戦闘機の導入を進めています。
■スリランカのクフィル戦闘機
 クフィル戦闘機といいますと世代的にはファントムが活躍した世代の戦闘機なのですが。

 スリランカ空軍は運用するクフィル戦闘機の近代化改修に関してイスラエルIAI社との間で5000万ドルの契約を結びました。クフィルはイスラエルがフランスのミラージュⅢの輸出中断を受け諜報機関要員の手により設計図を盗み出し1973年にコピーに成功した戦闘機で、原型のアター9エンジンよりも高出力のアメリカ製J-79エンジンを搭載しています。

 クフィル戦闘機をスリランカ空軍は1995年より中古機を取得しており、2005年までに15機を取得、タミルイスラム解放の虎による飛行場攻撃等で5機喪失しているものの10機が現役です。IAIは改修で性能を第四世代戦闘機程度まで向上する方針です。クフィルはイスラエルでは退役しましたがコロンビア空軍等で現役、アメリカも研究用に装備しています。
■マレーシアのRMAF-CAP55
 RMAF-CAP55計画という新しいマレーシアの戦闘機と練習機の計画について。

 マレーシア空軍は6月22日、RMAF-CAP55次期戦闘機次期高等練習機選定の入札を開始しました。この計画はフェーズ1とフェーズ2にわかれ、空軍が運用する旧式化したホーク練習機とホーク軽戦闘機を置換える構想です。ホークはイギリスのBAe社製中等練習機ですが単座式の軽戦闘機としてホーク200が開発、マレーシア軍は18機を運用中です。

 ホーク練習機とホーク軽戦闘機の後継機選定は、今後十年間で耐用年数を迎えるホークを置換え、マレーシア空軍が運用するアメリカ製F/A-18D戦闘攻撃機とロシア製Su-30MKM戦闘機という、マレーシア独特の東西混成戦闘機部隊の支援に充てる構想で、練習機型のホーク100を4機、軽戦闘機型ホーク200を14機運用中で、これを単機種で置換えます。
■RMAF-CAP55の候補機種
 マレーシアが進めるRMAF-CAP55計画の候補についてみてみましょう。

 マレーシア空軍の次期戦闘機選定候補機について。RMAF-CAP55次期戦闘機次期高等練習機選定の候補戦闘機は有力とされるのがスウェーデン製JAS-39戦闘機、韓国KAI社製FA-50戦闘攻撃機、イタリアレオナルド社製M-346練習機と派生型であるロシア製ヤコグレフYAK-130攻撃機、中国製JF-17サンダー戦闘機、そしてインドのテジャス戦闘機など。

 ホーク200軽戦闘機を置換える次期戦闘機選定、ホーク200軽戦闘機はアドゥーアエンジンを単発装備する高度な亜音速練習機ではあるものの、搭載するアドゥーアエンジンはジャギュア攻撃やF-1支援戦闘機搭載の様なリヒート機能は省かれており超音速飛行には対応せず、レーダーを省いている為に短射程のサイドワインダーミサイルしか搭載できない。

 RMAF-CAP55次期戦闘機次期高等練習機について入札は9月22日に締め切られ、18機を導入しますが、更に追加のオプションが示唆されています。候補機種は戦闘機としては優れているが練習機として過剰性能であるか、練習機としては評価が高いものの攻撃機としての性能が未知数、若しくは実運用開始直後で未知数の性能という機種などが並んでいる。
■パキスタンJ-10Cを増強へ
 J-10C戦闘機は必要な性能を重視し他の性能をオプションとした非常に洗練された戦闘機となっています。

 パキスタン空軍は2021年内に36機のJ-10C戦闘機を中国より取得する、パキスタン国内のHSIA誌がパキスタン高官の発言として報じました。J-10は2005年に開発された中国の単発多用途戦闘機でJ-10Cについては2015年ごろに開発、ロシア製AL-31FNの第三世代型を搭載、AESAレーダーを搭載するなど第4.5世代機相当と考えられています。

 J-10C戦闘機は中国からは緊張が増大するパキスタンの隣国アフガニスタンの安定化に寄与する事が期待されていると考えられますが、パキスタンの視点からは建国以来の関係悪化が払拭できない隣国インドのラファール戦闘機への牽制という意味合いが大きいでしょう。中国はアフガニスタンへ大規模なインフラ整備と資源開発を進行中となっています。
■テジャスにアメリカ製エンジン
 テジャス戦闘機の量産は難航続きの開発と評価試験に対して進みが順調に軌道に向かっています。

 インド国防省はテジャス戦闘機用にアメリカ製F404エンジン100基の取得を希望している。テジャスはインド空軍がナット軽戦闘機の後継として実に半世紀に渡り開発と試行錯誤や重大問題を続けた戦闘機で2020年に遂に完成し量産が決定した。このテジャスはエンジンとしてアメリカのジェネラルエレクトリック社製F404エンジンを採用している。

 ジェネラルエレクトリック社製F404エンジンはF/A-18C戦闘機等に採用された実績あるもので、テジャスと同じくスウェーデンのJAS-39A戦闘機や韓国のFA-50軽戦闘機などが単発搭載している。テジャスMk1を83機量産する決定が為されており、予備エンジンを含め100機を希望している。テジャスMk2はより強力なエンジンを搭載する計画である。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

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F-15JSI (通りすがりの情報収集者)
2021-11-13 19:15:55
令和3年度防衛白書の中期防衛計画には現状F-15Jの改修は計上されているままであり、一機当たりの改修計上単価は35億円となっています。
また、F-15JSI計画の中止の記事を探しましたが、いまだ出て来ていません。防衛省からの発表との事でしたが、防衛省が記者会見を開いて発表したものでしょうか?それとも防衛省HPでしっかりと公式に発表がされた裏のある情報なのでしょうか?
基本的にこの手の情報と言うのは出てきにくいのですが、ソース元をご提示いただけると大変助かります。
F-3計画にしろ、F-15JSIにしろ、探しても最新情報が中々手に入りにくいもので……。
F-15JSIの計画が実際にどうなっているのか非常に気にかかっています。
防衛省の航空自衛隊における航空戦力の整備計画にはF-35、F-15改修型、F2(F-3に2035年に順次更新開始予定)の三本柱が必須になっており、F-15が欠けるとこの防衛計画そのものが頓挫し、日本の空を守る事が出来なくなるかもしれません。
防衛ドクトリン状F-15の改修は絶対に必須になりますので、F-15の更新がなんらかの形で進められるのは絶対なはずです。
それがF-15JSIを中止にしたのなら、今後はどういった動きをしていくのかを注視しないといけませんよね。
機体寿命も含めて考えたら、改修するよりも、F-15EXを購入するかライセンス生産するかした方がいいかもしれませんが、そうするとアメリカは改修する倍の金額を最終的には吹っ掛けて来そうですしね……。
F-15の改修内容から見ても、F-15はあくまでも後方からのミサイルキャリア運用を想定しているでしょうから、F-3とF-35との戦術データリンクをできる機体に改修と言うのは利にかなってます。
あと、99機+αと言う数字もミサイルの搭載数を増やして、運用機数を減らして予算の節約をする面と、人員確保が難しい自衛隊の現状を鑑みた数字ともいえますからね。
あと、自衛隊は第六世代の性能+F-2後継を狙ってますからねえ……。
第六世代が実現すれば連動して飛行する無人機のミサイルキャリアから対艦ミサイル発射等も可能になるでしょうし、人員不足の自衛隊の将来的な防衛能力向上を考えると、F-15を大量導入と言うのは少し現実的ではないですよね。
F-15に置き換えてしまうと将来的に次世代機で担わなければならない防衛能力を損失する恐れもあるので、F-3戦闘機の開発をここで気張って成功させて欲しいものです。
返信する
F-15JSI (通りすがりの情報収集者)
2021-11-13 19:15:57
令和3年度防衛白書の中期防衛計画には現状F-15Jの改修は計上されているままであり、一機当たりの改修計上単価は35億円となっています。
また、F-15JSI計画の中止の記事を探しましたが、いまだ出て来ていません。防衛省からの発表との事でしたが、防衛省が記者会見を開いて発表したものでしょうか?それとも防衛省HPでしっかりと公式に発表がされた裏のある情報なのでしょうか?
基本的にこの手の情報と言うのは出てきにくいのですが、ソース元をご提示いただけると大変助かります。
F-3計画にしろ、F-15JSIにしろ、探しても最新情報が中々手に入りにくいもので……。
F-15JSIの計画が実際にどうなっているのか非常に気にかかっています。
防衛省の航空自衛隊における航空戦力の整備計画にはF-35、F-15改修型、F2(F-3に2035年に順次更新開始予定)の三本柱が必須になっており、F-15が欠けるとこの防衛計画そのものが頓挫し、日本の空を守る事が出来なくなるかもしれません。
防衛ドクトリン状F-15の改修は絶対に必須になりますので、F-15の更新がなんらかの形で進められるのは絶対なはずです。
それがF-15JSIを中止にしたのなら、今後はどういった動きをしていくのかを注視しないといけませんよね。
機体寿命も含めて考えたら、改修するよりも、F-15EXを購入するかライセンス生産するかした方がいいかもしれませんが、そうするとアメリカは改修する倍の金額を最終的には吹っ掛けて来そうですしね……。
F-15の改修内容から見ても、F-15はあくまでも後方からのミサイルキャリア運用を想定しているでしょうから、F-3とF-35との戦術データリンクをできる機体に改修と言うのは利にかなってます。
あと、99機+αと言う数字もミサイルの搭載数を増やして、運用機数を減らして予算の節約をする面と、人員確保が難しい自衛隊の現状を鑑みた数字ともいえますからね。
あと、自衛隊は第六世代の性能+F-2後継を狙ってますからねえ……。
第六世代が実現すれば連動して飛行する無人機のミサイルキャリアから対艦ミサイル発射等も可能になるでしょうし、人員不足の自衛隊の将来的な防衛能力向上を考えると、F-15を大量導入と言うのは少し現実的ではないですよね。
F-15に置き換えてしまうと将来的に次世代機で担わなければならない防衛能力を損失する恐れもあるので、F-3戦闘機の開発をここで気張って成功させて欲しいものです。
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