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岸田文雄第100代内閣総理大臣指名,ポストコロナ時代の世界変容見越す外交防衛の重責と期待

2021-10-04 20:11:43 | 国際・政治
■岸田文雄第100代総理大臣
 第100代内閣総理大臣という日本の憲政史上一つの節目となる新しい内閣総理大臣が今日誕生しました。

 菅内閣総理大臣は自民党総裁任期満了を受け本日、内閣の総辞職を発表、これを受け岸田文雄衆議院議員が本日召集された臨時国会首班選挙において内閣総理大臣に指名され、岸田内閣が本日、正式に発足しました。岸田氏は1957年生まれ64歳、実父岸田文武氏は広島出身で通産官僚で衆議院議員、1993年に父を継ぎ広島一区から衆議院議員となります。

 菅総理大臣は新型コロナウィルス対策に全力を傾注する為、自身の任期満了まで政治空白を作らないとの配慮から自らの自民党総裁選出馬を断念し、自民党総裁選では岸田政務調査会長が次期総裁に選出されました、総裁選では持論である憲法改正、新自由主義への決別と日本型資本主義の再興を提唱、安倍内閣時代に防衛大臣と外務大臣を歴任しています。

 第100代内閣総理大臣となりました岸田文雄氏は2001年の第1次小泉内閣で文部科学副大臣に任命され、初入閣は2007年の第1次安倍改造内閣で内閣府特命担当大臣、2012年からの第2次安倍内閣では第143代外務大臣、改造内閣でも第144代外務大臣を務め、また防衛大臣辞任を受け第16代防衛大臣として短期間ですが外務と防衛大臣を兼務しました。

 岸田内閣、この新内閣はCOVID-19との戦いを続けつつ、明確な姿をおぼろげながら見せ始めているポストコロナの世界への日本国家のかじ取りを進めねばなりません。ポストコロナの世界というものは単に感染力と致死率が高い感染症の流行収束という簡単なものではなく、近現代史で最悪の景気後退を経験した諸国では復興に膨大な変革を伴うでしょう。

 ポストコロナ時代は、世界的な景気後退と共にサプライチェーンの破綻と世界規模での各国都市封鎖等を通じ、産業構造の変革や社会観念の変容を伴うものであり、仮にWHO世界保健機関がPHEIC公衆衛生非常事態宣言を解除したとしても、即座に2019年までの世界が回帰するとは考えにくく、また十年後にも2019年に思い描いた2031年は来ません。

 危機管理の課題。新内閣には経済問題が重くのしかかっていますが、経済政策では新自由主義からの日本型資本主義の復興という新展開により応えようとしている一方、外務大臣と防衛大臣が菅内閣から再任されているように、防衛問題については拙速の革新よりは、手堅い現在の防衛政策と外交政策を堅持する必要性が明白であった為、とも受け取れます。

 外務と防衛大臣を兼務した岸田新総理は、2020年の欧州感染拡大と共に欧州で明確となった産業停滞による所得格差問題と気候変動問題、共に未来への致命的課題でありながら産業復興による経済復興と、環境対策のグリーン政策、解決策が共に不協和音を奏でる命題が、欧州を中心とした国際公序形成への影響というものを真剣に直視する必要があります。

 欧州の変容と動揺、ポストコロナ時代は“間の悪さ”というものを体現するのかもしれません。それはドイツのメルケル政権退陣とイギリスのEU離脱、この変容とともに加えてフランスマクロン政権の対外政策、この三点がかつて外交研究者に価値観の共同体と慨した欧州の共通に深刻な動揺を与えています。ドイツでは総選挙により政権交代が決まった。

 日欧関係、安倍政権時代まではこの論点で欧州の一体性が外交に恩恵をもたらしていますが、メルケル政権の退陣により実に16年間、ドイツによる対仏関係を通じての欧州一体化を進めてきましたが、メルケル首相は政界引退を表明、その後継者を画定する総選挙に与党キリスト教民主同盟は敗北し社会民主党が第一党、ショルツ連立政権が成立することに。

 EU,メルケル政権は欧州唯一の核兵器国であるフランスの政策をEUに内部化する際の欧州最大の経済大国ドイツとしての要諦にありました、しかし、フランスマクロン政権の独特な欧州安全保障政策を、対米関係重視とも伝えられるショルツ新政権は今までの様に欧州の一体化を支える事が出来るのか、イギリスEU離脱により揺動期のEUには課題です。

 岸田内閣とEUの関係は一見無関係にも見えますが、実は真逆で、安倍政権とその外交方針を継承した菅政権は“開かれたインド太平洋構想”を提唱した際、敢えて同盟条約の度合いを抑え、既に国際規範となっている海洋自由原則や民主主義等の国際公序を通じ協力関係を模索、中国やロシアによる圧力に対し、欧州の参画を障壁を下げる事で実現させた。

 インド太平洋地域における“開かれたインド太平洋構想”、これは欧州が一枚岩であり、理念の共有者としての参画が前提であり、根底が揺さぶられている状況に他なりません。一方でマクロン政権は2022年に大統領選挙を迎え、増税とコロナ下の強権により与党共和国前進は求心力に限界があり、日欧関係は日仏日英日独個々関係に再編されかねない懸念も。

 日中関係、外交と云えば現在では隣国との関係が筆頭に突き付けられる構図ですが、日本が高度経済成長偉大と安定成長時代に実現していた平和外交は、札束で周辺国の横面を叩く構図での一国平和主義が成立つ環境とは言えません。日本の札束はかつてと比較し威力が減じ、特に海軍力による海洋進出、周辺地域での軍事力による現状変更は現実の脅威だ。

 中国との関係は、軍事力による現状変更への拒否と、国際公序を奉護する国際社会のステイクホルダーとしての関係を構築する視点も必要ではありますが、しかし、例えば南西方面におけるわが国領域周辺での行動、例えば台湾海峡での露骨な強い皇位、例えば南シナ海での周辺国領域への人工島建設と、実行されている施策は真逆であり、危機的でもある。

 日米関係、岸田氏の初入閣は沖縄及び北方対策内閣府特命担当大臣としての入閣でした。外務大臣就任の際は1963年から3年間、ニューヨークでの生活経験がある以外に外交経験が無いとも報じられた岸田氏ですが、第二次安倍内閣時代に、民主党鳩山政権が破綻させた沖縄基地問題へ沖縄及び北方対策内閣府特命担当大臣では対応し、実は外交経験は長い。

 バイデン政権下のアメリカとの日米関係は、しかし一筋縄では行かない点が大きいでしょう。アメリカはブッシュ政権時代のようなユニラテラリズムに回帰しているのではないか、これはアフガニスタン撤退強行に際し指摘していますが、豪州原潜問題により、米仏調整を省き突如同盟国同士の巨額防衛装備品導入を横取りする構図で再度認識させられました。

 アメリカとの関係、日米同盟は日本にとり唯一の同盟条約となっていますが、バイデン大統領の太平洋戦略は未知数である部分が多く、例えば前述のアフガニスタン撤退も、インド太平洋への国防資源集中を期したと説明されていますが、同時にアメリカ国益第一主義を掲げており、太平洋におけるAUKUS防衛枠組みは逆に周辺へ不評和音となりかねない。

 ユニラテラリズムは、アメリカに唯一超大国として世界に国際公序を提供するプロバイダーとしての能力があって初めて成り立つ理念ではあるのですが、しかし、アメリカはもはや世界の警察官ではない、こう発したのはオバマ大統領、現在はステイクホルダー同士の有志連合を組まなければならない時代であるのに、ユニラテラリズムでは足枷と成り得る。

 日米関係、しかしここで課題となるのは、日本周辺の安全保障関係が東西冷戦時代と比較してさえも緊迫の度合いを増しているという状況、特に専守防衛を国是とした現行憲法において、我が国周辺情勢には専守防衛の枠外地域での緊張、例えば南シナ海、例えば台湾海峡、こうした情勢への対応には日米同盟でのアメリカの関与に憲法上期待するほかない。

 バイデン政権下のアメリカ、一方でユニラテラリズムは、アメリカ第一主義を掲げたトランプ政権以上に読みにくいものがあり、例えば沖縄への中距離ミサイル配備という可能性や、日本前方展開部隊へ極超音速滑空兵器配備等、唐突に提案される可能性もあり、沖縄基地問題へ沖縄及び北方対策内閣府特命担当大臣経験以来の頭痛の種ともなりかねません。

 世界における日本の地位は、しかし皮肉にも安全保障分野での札束で叩く方式という一国平和主義基盤の崩壊により向上する事となっています。一例としてTPP環太平洋包括連携協定、一例として自由で開かれたインド太平洋構想理念に基づくQUAD,単なる経済力偏重の国家から国際公序や規範形成への影響力は増大し、その分、外交手腕が重要となります。

 日欧関係、日中関係、日米関係、インド太平洋関係、その重要性は、これは繰り返す事ともなりますが、茂木外務大臣と岸防衛大臣の留任にも表れています。さて。岸田総理大臣は10月21日の衆議院議員任期満了を見越し、その二日前である19日に衆院選公示、総選挙に臨む方針です。これを超えねば政権運営は成立ちませんが、先ず、手腕に期待しましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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