北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛技術シンポジウム2014 展示会場に見る将来の陸海空防衛任務担う技術開発

2014-11-15 23:47:05 | 先端軍事テクノロジー

◆わたし、気になります!

 Weblog北大路機関のOCNからGOOブログへの移転準備中につき、少々サブタイトルに偏りがありますが。

Timg_8517 25DD、5100トン型護衛艦研究開発において現在は護衛艦あきづき型の改良型となる方針が示されていますがステルス性重視を要求された際に技術研究本部が想定した5100トン型護衛艦の将来護衛艦模型として具体化したもの。各種装備を低RCS構造物に巧く配置されています。あきづき型護衛艦もこの水準までステルス性を高め将来海上戦闘を志向したものがありましたが、要求はステルス性よりも建造費縮減が強く求められたため、現在の艦型となったのは御存じの通り。

Timg_8539 防衛技術シンポジウム2014、一通りまわり気になりました話題を。某衣装技術研究本部が将来の自衛隊が展開する陸海空自衛隊の任務運用に適した装備品が要求されることを前提に技術研究本部がその実現に必要な技術的蓄積を開発する機関で、技術研究本部は生産能力を持たず施策というよりは既存資材を元に研究を行う機関です。しかし、現場の意見などは開発官が第一線部隊指揮官を経た方から成るため、方向性は我が国防衛への指針そのもの。

Timg_8523 CBRN対応装軌車両、遠隔操作し核事故現場など有人車両が進入不能な汚染地域において活動するもの、ある程度の自動制御も可能なもの。先日陸上装備研究所一般公開にて一般公開された車両の模型です。一般公開自体の御話しを今津駐屯地にていつも世話になっている方からお聞きしました次第ですので、概算要求にこの種の車両が開発され始めた、という当方の認識はその程度のもの、しかし早速実物が出ていまして、防衛技術シンポジウム2014では一般公開時の起動展示映像を展示していました。

Timg_8524  CBRN対応装軌車両、意外に早く完成しましたので、原子力事故に対応する車両とのことでしたが思わず震災前から開発していたのか、と聞いていますと、福島第一原発事故を受け、既に装備開始となった施設作業車の車体を利用し既存技術を集成し大急ぎで完成させた車両、とのこと。中央特殊武器防護隊への配備への試作車、というわけではないそうで、この技術を元に新型車両が開発されるが、間もなく三号車が完成し、万一の万一の際にはこの実証車も投入は出来る、とのこと。

Timg_8520 水中グライダー、今回最大の目玉というべきもの。動力なしに水中を航行できる装備、というものは発想自体聞きません。重心変化と浮力調整で海中の海水温度層間を行き来し、動力を用いないので可変深度ソナーと同じ動きを極めて長期間展開でき、パッシヴセンサーにより自身からは完全に無音状態を維持しつつ対潜情報を収集し送信し続けられるもの。潜水艦や航空機などからの展開を行い、広範囲の情報を複数収集させたうえで集積し、かすかな潜水艦情報から確実に位置を捕捉するもの。

Timg_8511 軽量戦闘車両システム、気になります。この装備は火砲を搭載しているが10式戦車や機動戦闘車の後継に当たるものか、自走無反動砲の再来のようなこれまでにない装備の開発であるのか、と。基本的に試作車両ではないので技術研究本部の将来戦闘を見越した提示であるとの前提で、高速度にて路上を走行し戦域進入とともに車高を上げ耐地雷態勢へ、普通科部隊の近接戦闘と中距離戦闘を同時に展開する装備で、このかたちがそのまま装備に反映はされないのですが、構成要素の技術は全て反映される前提、との説明です。

Timg_8531  しかし軽量戦闘車両システム火砲型は低反動砲に機動戦闘車の105mm砲弾をそのまま流用し試験している、とのこと。気になる機動戦闘車ですが、74式戦車のAPFSDS弾を同じように射撃する事は出来ない、と。第三世代戦車はHEAT弾に対する防御が複合装甲により以上に高まっているため、APFSDS弾の衝撃で突き破るしかないのですが、現在の懸架装置や低反動技術ではまだまだ不可能なのだとか。じゃあ初速は総火演の畑岡で射撃と着弾の秒間差で推測します、と言ったらば、あれで結構正確に出ますよね、と笑われました。

Timg_8527   インホイールモーター、車輪部分にモーターを置くことで動力伝達系統を省略できるため車体底部を自由に用いる事が出来、戦闘室を広く確保し車高等暴露面積を抑えるもの。ただ、動力区画が車輪数と同数になるので整備要員が疲労困憊で倒れませんか、と聞きますと、整備自動化技術を含め開発中ですので現時点では何とも、と。装軌車両にも応用できるのかとの問いには出来うるが、現時点では装軌車両を稼働させるだけの出力を得られる技術は開発中、と。

Timg_8529  話題に装軌車両が上ったので思い切って更に気になる10式戦車後継へのこれら技術の応用を聞きますと、具体的に進んでいるものでは無いが、現在の技術開発は将来戦車に応用できるものが多く、付け加えるならば陸上装備研究要員に戦車が嫌いな人はいない、10式戦車に続く戦車に要求される能力はどういうものになるかを含め検討中である、とのこと。機動力重視か火力重視か防御重視かの選択のことでしょうか、と聞きますとそれを含め戦車は火力重視だが、何処まで求められるか、いつごろ必要になるか、で変わるとのことでした。

Timg_8510 かなり気になるのはE-10統合管制機の小型版のようなイメージ図、E-8のような戦域監視機かとおもえば陸上車両の警戒などは含まれておらずどちらかと言えばP-8哨戒機にように主翼下に兵装架が描かれているのが見えます、センサーはレーダーと赤外線を主軸、将来光波センサシステム構成要素技術の研究AIRBOSSを思い出すもの、対航空機や巡航ミサイルなど飛行する対象を想定しているもよう。早期警戒滞空型レーダ技術の研究、2波長赤外線センサ技術の研究、既に進められている関連技術と共に将来早期警戒機の国産はあり得そう、という印象がありました。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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23 コメント

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はるな様 (PAN)
2014-11-16 02:00:28
はるな様

僕も12日に行ってまいりました。ただしさほど時間が取れなかったので、展示セッションとポスターセッションのみ見て回ったのですが。

記事にもある軽量戦闘車両システム用のインホイールモーターですが、気になっていろいろ話を聞いたところ、現在は展示されている1基のみ完成しており、来春以降に6基揃えて、実際の車台に組み込んでのテストが始まるそうです。
さらに突っ込んで話を伺うと、1基の出力はソコソコですが、高いトルクを出せる仕様で、不整地での走破性の向上にはかなり有効だとか。ただし今後はさらなる軽量化を図る必要があるとのことでした。

ところで、ほぼ実物が展示されたXAAM-5の横にほぼ同じ形状のスケールダウンモデルで「新艦対空ミサイル」が展示されているのに気付かれませんでしたか? 説明担当の方にお聞きしたところ、XAAM-5をベースにしたものでESSMの後継ミサイルを想定しているとか。
XAAM-5のサイズは、現行のAAM-5より全長が25cmほど長くなるようで、おそらく射程延長が図られていると思われますが、それでもESSMよりはかなり小型です。とはいえ、Mk-41の1セルに4発収納は変わらないと思いますが、個人的にはなかなか興味深い展示でした。

それと CBRN対応装軌車両は、現場からドーザーとの併用の要望があって施設作業車ベースでの試作となったとのことですが、あの遠隔操縦システムや遠隔マニピュレーターシステムそのものは、もっと軽便な車両への搭載も可能だと説明をいただきましたよ。
屋外展示にあったIED処理システムと組み合わせると、かなり有効的な装備になりそうですね。
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はるな様、直近で最後?の御邪魔です (専ら読む側)
2014-11-16 12:24:59
はるな様、直近で最後?の御邪魔です

>気になる機動戦闘車ですが、74式戦車の
>APFSDS弾を同じように射撃する事は出来
>ない

「此ノ機材ハ戦車ノ代用ニ非ズ」と明言せるものと実感、併せて野戦スポーツカーかぶれ共への必中弾と快哉するばかり(土建最大手なんか居なくなっても何も起こらないことも再認)

返信する
はるな様 (あきつまる)
2014-11-17 00:24:10
はるな様
つまり、機動戦闘車では戦車に太刀打ちできないということですか?そうであるならば、本州の戦車を廃し、代わりに200両配備するのはどういう意図があってのことなのでしょうか
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専ら読む側様 (あきつまる)
2014-11-17 01:26:38
専ら読む側様
「野戦スポーツカーかぶれ共」と仰りますが、別の言い方は無いのでしょうか?機動戦闘車に疑問を呈するのは分かりますが、だからと言って煽るような言い方はどうかと
返信する
>あきつまる様 (PAN)
2014-11-17 12:29:54
>あきつまる様
>州の戦車を廃し、代わりに200両配備するのはどういう意図があってのことなのでしょうか?

まず、機動戦闘車が配備される本州に、現状でいかなる脅威が想定されているかを、お考えになったらいかがでしょうか?
正直、第3世代より新しい敵MBTが上陸してくる可能性は想定されていないでしょう。

本州での防衛で想定されているのは、せいぜい軽戦車や水陸両用戦車、兵員装甲車などであって、それならば105㎜HEAT-MPで十分。また対ゲリコマ等を考えると、むしろ榴弾を撃てることのほうが重要です。

また仮に(可能性は低いですが)敵MBTが現れたとして、74式の105㎜APFSDSでは威力不足です。その場合は、対戦車戦闘の主役はATMになるはずです。ならば、低反動性(命中率)を犠牲にしてまで、APFSDS対応の高初速砲を積むメリットは少ないのではないでしょうか?

そもそも、機動戦闘車の装甲や重量を考えると、対戦車(第3世代以降のMBT)戦闘を期待することは無謀です。で、相手がMBTでないのならば、低反動の105㎜で威力は十分なんです。

さらに機動戦闘車が将来的にPKO等に派遣されるとしましょう。(IED対策がなされていないので、個人的には懐疑的ですが)。任務を考えると想定される相手は非正規軍です。やはり必要なのは榴弾であって、せいぜいHEATがあれば十分。APFSDSを使うシーンは想定されませんよ。それは少なくともPKOの範疇ではなく、正規軍相手の戦闘です。

僕個人としては、現状の機動戦闘車をすべて肯定しているわけではないです。装輪戦車にはそれなりの意味はあると考えますが、せめてIED対策を施した車体にすべきでした。しかしそれと、機動戦闘車に対戦車戦闘を期待することは、別の話です。
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あきつまるさま (ドナルド)
2014-11-17 13:39:27
あきつまるさま

横から済みません。

私の理解では、APFSDSを撃てないのは、軽量戦闘車両15tであって、MCV27tは、確か、撃てたはずです。

一方で、いずれにせよ、戦車に対しては、主力の対抗兵器ではないはずです。防御力も、戦術機動力も、比較になりませんから。対戦車は、あくまで、中多ミサイルでしょうね。

つまり、MCVに期待されているのは、歩兵への火力支援、補助的な対戦車戦闘(近距離なら撃破できる)、そして、戦車以外の装甲車の確実な撃破かと思います。

敵の上陸第1波が多数の戦車をもつはずはないので、港湾を抑えられたあとの、第2波は北海道からの増援の機甲部隊で対応する考えでは?

因みに私は、MCVには懐疑的な立場で、そんな予算があったら、IFVを買うべき、と考えます。
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Unknown (軍事オタク)
2014-11-17 14:20:03
APFSDS弾を同じように射撃する事は出来
ないのは、
機動戦闘車ではなくて、軽量戦闘車両システムのことなのでは?
と考えたいのは私だけでしょうか?
もし本当に機動戦闘車が同じように撃てないのであれば、魅力が半減しますね。
返信する
>>水中グライダー (謎チキン)
2014-11-17 22:12:24
>>水中グライダー
コレそのものは真新しいものでもなく、民間ではかなり前から開発が行われています。
そのためマンガなどにも水中グライダーを描いたものが有ります。(例:ダークウィスパーに出てくる水中グライダー方式のタンカー等
http://www.sof.or.jp/jp/news/251-300/264_3.php

日本の広大な海域をカバーするための装備として優れたプラットフォームになる可能性があるので、これからの開発が楽しみです。
米軍との共同開発が噂されている無人潜水艦と併せて、日本の海上防衛のあり方を大きく変える事になるのではないかと期待しています。
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私の勘違いで、撃てないものとばかり思い込んでい... (あきつまる)
2014-11-17 22:13:58
私の勘違いで、撃てないものとばかり思い込んでいました、、、
ご指摘して下さり、有難うございます
返信する
機動戦闘車の105㎜砲の件ですが、ほんとにAPFSDSに... (PAN)
2014-11-18 00:04:18
機動戦闘車の105㎜砲の件ですが、ほんとにAPFSDSに対応しているんでしょうか?
たしかに砲そのものの開発段階での試験では、74式で使っているAPFSDSを試射しているという話は聞いていますが、機動戦闘車に搭載した状態でAPFSDSが使えるかどうかについては、公式な発表はあるんでしょうか?

L7系列の新設計国産砲で、砲の長さは52口径と長くなったとはいえ軽量の低反動砲ということしかわかりません。射撃したときの反動の少なさ(あの公開された画像のみしか射撃シーンは見てはいないですが)から、もしかしたら発射は可能だが低反動化したため、APFSDSの威力を発揮する高初速が得られない。もしくは車載した状態では反動の問題から、高初速弾であるAPFSDSは事実上使えないのでは?と疑っております。

今回のはるな様の記述には、「気になる機動戦闘車ですが、74式戦車のAPFSDS弾を同じように射撃する事は出来ない、と。」とあり、やっぱりHEAT-MPのみなんだと個人的に合点していたのですが。

はるな様、そのあたりはどうなんでしょうか? 
記事にあるとおり、機動戦闘車ではAPFSDSはNGなのか、それともパネル展示されていた「軽量戦闘車両システムの火砲型」の話なのか、そこをぜひもう少し詳しくお聞きされた内容を教えていただければと思います。
(記事中に実射から初速を割り出す話をされているので、起動戦闘車のAPFSDSの話だと思うのですが)

僕は現地では、インホイールモーターについてはしつこく話を聞いたのですが、砲のほうはちょうど担当者さんがいなかったことと、時間があまりなかったこともあり聞きそびれてしまいました。
非常に気になるところですので、ぜひ教えてください。
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