現在陸上自衛隊では、主力装甲車として軽装甲機動車の配備が急速に進展している。
年間100輌以上の調達が為される軽装甲機動車は高機動車と同じように大量配備が為され、全国の普通科部隊装甲化を迅速に進展させている。乗車戦闘を第一に開発された軽装甲機動車は、5.56㍉機銃MINIMIや01式軽対戦車誘導弾を駆使し、降車戦闘を主とする高機動車と連携する事により大きな効果が期待できる。
しかしながら、防衛大綱改訂に伴い戦車定数が削減される中で、普通科の火力戦闘を補完する装備として、現在技術研究本部を中心として“近接戦闘車”というものが開発されている。
さて、現段階では全く不透明なこの新装備を、様々な公開情報から情報の断片を摘出複合化し、出来る限り真相に迫ってみたい。
まず、開発開始の本格化は18年度(試作開発開始)、重量は15~20㌧、ファミリー化によりコストダウンを目指す、ということだ。
自衛隊は発足以来、ボフォースやエリコン、ラインメタル(試製器材用)というように長らく機関砲に関しては輸入に頼ってきたが、現在、次期戦闘車用として国産の80口径50㍉機関砲が開発中である。テレスコープ弾(薬莢に弾頭が内蔵されており体積などが縮小、携帯が容易になっている)機関砲であり、研究試作では初速1100㍍/秒、発射速度毎分313発、外部駆動部分や砲架を除く重量は3.35㌧とされている。
さて、この将来戦闘車たる近接戦闘車とは、87式自走高射機関砲や89式装甲戦闘車の後継装備として開発が進められ、現在では更に広範に自走榴弾砲・人員輸送車・対戦車自走砲・指揮通信車・偵察警戒車・弾薬運搬車としてファミリー化が目指されている。現段階で主力となる近接戦闘車の搭載機関砲としては同時にボフォース社製70口径40㍉機関砲なども想定されており、重量の関係から国産の50㍉機関砲ではなくボフォースの40㍉機関砲を支持する向きも大きいと聞く。現段階では機関砲は地上設置により実験が進められているというが、今後は装輪車において運用試験が為されるという。他方、陸上自衛隊内部では不整地突破性能に優れた装軌式を推す声も依然として高く、装軌式か装輪式かは、ほぼ装輪式で決定しつつあるが、装軌式装備の開発研究も継続される事となろう。
現代の装輪式車輌は制振性能に優れ、調達コスト面や運用コスト、稼働率に関して装輪装甲車が優れている事が証明されている。
ここで一つ装軌式装甲車を弁護する意見を述べれば、イラク戦争を見る限り、砂漠地帯という難所にあっても装軌式は進軍を続け、クウェート国境から600㌔以上離れたバクダッドに展開している。戦線に向かう戦略機動能力においては確かに路上機動が第一となる以上、装軌式は装輪装甲車には敵わないものの、戦線から一たび攻撃前進に移ったならば装甲防御力や火力に勝る装軌式装甲車は反撃を想定しつつ攻撃前進が可能であるが装甲脆弱性の高い装輪装甲車では反撃を警戒しつつの前進となる為その路上機動能力は著しく制限される。
また戦略機動性というものは、特に日本海など道路が制限される地域では、高速道路高架部分のような非正規戦に脆弱性を曝している為、逆に機動性を損なう可能性があり、この場合はLoLo船や貨物船などによる海上輸送のほうが戦略機動能力は大きい事が挙げられる。
対戦車自走砲であるが、これは戦車戦力の補完というよりも60式自走無反動砲のようなものを想定していると考えてよい、イギリスのスコーピオン軽戦車やフランスのAMX-10のような火力支援に用いる装備品が陸上自衛隊装備体系には欠如しており、その必要性からということであろう。火力支援任務にはコスト面から火砲が誘導弾よりも優れており同時に携行弾数も多い。これに国産の大口径機関砲が充当されるか、若しくは120㍉低圧砲が採用されるかは未知数である。
こうしてみると、徹底したファミリー化という点でアメリカのFCS(将来戦闘車輌)構想を彷彿させるが、自走榴弾砲というと果たして15~20㌧という車体に52口径155㍉榴弾砲が搭載できるかが疑問となる。背負い式であれば39口径155㍉の現用FH-70榴弾砲が搭載可能にも思えるが日本自走砲の特徴である自動装填装置が搭載できるかは疑問である。重装輪回収車のような大型車体にスウェーデンのA25Cトラック車載方式やフランスのカエサルのように車載する方式が現実的ではないだろうか、少なくとも装輪装甲車の車体に搭載すればチェコのズザナ155㍉自走砲(28㌧)、南アフリカのG6ライノ(47㌧)のように大幅な重量超過となる事は否めない。
また、偵察警戒車にしても威力偵察を行うには火力が必要であるものの、さすがに車体が大きすぎるのではないかといえる。対戦車火力の発達に伴い、威力偵察は命取りとなりうるため、各国はオランダのフェネク、スイスのイーグル、トルコのアセルサンのように隠密を目的とした斥候車に移行しており、C4I性能が優れた米軍では戦車部隊が発見した情報をデータリンクにより共有している。結果的に、斥候員を多数乗車させる大型の装甲戦闘車を偵察に当てるという方式もありうるかもしれないが、軽装甲機動車を元にした偵察車の開発の方が現実的に思われる。
加えて、自走高射機関砲を挙げると、機関砲と火器管制装置を同一車体に搭載すれば、重量もさることながら容積も必然的に大きくなり、果たして搭載できるかは疑わしい、前述のように重装輪回収車をベースに装甲トラックを開発し後部に搭載する方式の方が自走高射機関砲としては有利であろう。キャビンだけの装甲化であればそれ程予算を必要としないし、03式中距離地対空誘導弾や重装輪回収車とのファミリーも構成できる。無論、戦車に随伴するには八輪式でも不整地突破能力に支障を来たす事は言うまでも無く、装軌式ベース車体に搭載する方式が模索されてしかるべきと考える。つまりはハイローミックスの必要性である。
さて、このようにして展望を俯瞰したかぎりでは、近接戦闘車に関しては未知数ながらも思い切りすぎたファミリー化が大きな弊害となる可能性を有しているという事だ、人員輸送車や指揮通信車、NBC偵察車、弾薬運搬車(多用途装甲輸送車)のファミリー化に加え機動砲(対戦車自走砲)、自走迫撃砲、対戦車ミサイル運搬車の範囲であればファミリー化が期待できるものの、これ以上の範囲では逆に運用に支障を来たすものではないかと思う、何故なら根本的に用途が異なるからである。
何が何でもファミリー化が良いという訳ではない、現行のC-X(次期輸送機)とP-X(次期哨戒機)のように可能な部分は共通化する(操縦機器、エンジン、タイヤ)という以上には現実的に不可能であると考える訳だ。技術者はNOと言う事を忘れてはならない、そして共通化を叫びすぎ、失敗した事例は枚挙に暇がないということも忘れてはならない。
火力支援には効果を期待したいものの、無理をし過ぎることなく、“使える装備”となる事を心から期待したい。
HARUNA
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さて、現段階では全く不透明なこの新装備を、様々な公開情報から情報の断片を摘出複合化し、出来る限り真相に迫ってみたい。
まず、開発開始の本格化は18年度(試作開発開始)、重量は15~20㌧、ファミリー化によりコストダウンを目指す、ということだ。
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ここで一つ装軌式装甲車を弁護する意見を述べれば、イラク戦争を見る限り、砂漠地帯という難所にあっても装軌式は進軍を続け、クウェート国境から600㌔以上離れたバクダッドに展開している。戦線に向かう戦略機動能力においては確かに路上機動が第一となる以上、装軌式は装輪装甲車には敵わないものの、戦線から一たび攻撃前進に移ったならば装甲防御力や火力に勝る装軌式装甲車は反撃を想定しつつ攻撃前進が可能であるが装甲脆弱性の高い装輪装甲車では反撃を警戒しつつの前進となる為その路上機動能力は著しく制限される。
また戦略機動性というものは、特に日本海など道路が制限される地域では、高速道路高架部分のような非正規戦に脆弱性を曝している為、逆に機動性を損なう可能性があり、この場合はLoLo船や貨物船などによる海上輸送のほうが戦略機動能力は大きい事が挙げられる。
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火力支援には効果を期待したいものの、無理をし過ぎることなく、“使える装備”となる事を心から期待したい。
HARUNA
陸自の機関砲は、従来スイス・エリコンのライ国が主でしたね。ここいらで国産機関砲も見てみたいもんですが…
もう一車種「機動戦闘車」、これは74式の105㎜砲と砲・弾薬を共用するって話ですが…(!?)、20t級の軽量装輪装甲車にこの砲の搭載はなんか少々不安な気もしますね。この砲こそ国産の低反動砲開発した方がいいように思うんですが…(!?)
近接戦闘車、機動戦闘車については、改めて記事を書いた方がよさそうですが・・・。
50㍉テレスコープ弾機関砲の開発成果というのは、どの程度だったのかな、という点が気になるのと、ファミリー化で様々な車種が開発されている一方で、あまりに装輪化偏重になっているのでは?と思います。
個人的には、装軌式車両で、高い路上機動力と、高い整備性、コストを両立させた車両を開発するべきなのでは?と思います。全てが全て、装軌式で統一するべき、とは思いませんが、引くべき一線はあるのだろう、と。
かの清谷信一さんが、自分のブログでかなり辛辣な事言ってますね。「国産CTA機関砲の開発なんて無謀だ、開発現場じゃ早くも実用に耐えない失敗作と言われ始めている」とかなんとか(^_^;;;)
まあこの清谷さんも、2ちゃんねるとかじゃかなり評判が良くない人ですが… 確かに少々心配ではありますね。国産CTA機関砲の開発、果たしてどこまで上手く行くのか…
大昔の記事なので、いまではちょっと違う部分も出てきています。
機動戦闘車は、関与している方を知っているのですが、それなりに研究して納得のいくものに仕上がってはいるようですよ、詳しい事は空気を読んで聞きませんが・・・。
CTA機関砲ですが、一時期、断念して30mm機関砲に落ち着くのでは、と技本が30mmを試験購入した時に危惧しましたが、この機関砲は掃海艇に搭載するようで。
どういう事でしょうか? やはり清谷氏の言う通り、「国産CTA機関砲の開発はやはり困難過ぎるので断念し掛けた」という事でしょうか!?
…そりゃやはり従来と全く違う兵器の開発なんて容易な事では無いでしょうし、「国産兵器は世界一!! 万歳!!」なんて言う気は毛頭ありませんが… なんかこの期に及んで国産CTA砲開発断念、海外メーカーの砲を購入するというのも残念な寂しい話ですよね。
まあ色んな事情との兼ね合いもあるとはいえ、ミリファンとしては国産CTA砲搭載の新型装甲車は実現して欲しいところです。
30mm機関砲の件ですが、これ数年前に調達品目に30mm機関砲というのが出ていて、時期的にCTA機関砲の話題が出ていた事もあり、もしかして、と勝手に勘違いしただけでした。
後日その機関砲は海上自衛隊が初めて建造するFRP製の新型掃海艇に搭載する30mm機関砲、ということが判明しまして、これは陸上自衛隊用の機関砲ですら無かった、という訳です。