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【くらま】日本DDH物語 《第四一回》未成のF-4高速対潜機構想,石油危機と四次防未達成

2018-05-12 20:17:14 | 先端軍事テクノロジー
■第一次石油危機と高度成長終焉
 海上自衛隊航空集団へファントム配備が実現したならば、その後の防衛政策は大きく転換したでしょう、いい意味でも、勿論その逆も。

 海上自衛隊のF-4高速対潜機の導入は結果、時期尚早とされ、実現しませんでした。特に航空自衛隊がRF-4偵察機を導入する計画が具体化しており、F-4戦闘機を最終的に140機配備する航空自衛隊が包括管理する事で制空戦闘の他に海上自衛隊が必要性を提示していた洋上偵察任務についても、必要な作戦能力を確保できる、という見通しがありました。

 第五次防衛力整備計画において航空自衛隊が空中給油機の導入を展望していたことも大きく影響します、航空自衛隊はKC-135空中給油機を第四次防衛力整備計画当時に続く第五次防衛力整備計画へ盛り込む研究を実施しています。当時、F-4EJ戦闘機を導入する際に周辺国へ脅威を及ぼさないとの国会討議結論から社会党要求で性能の一部が省かれている。

 空中給油受油能力についても原型のF-4E戦闘機には含まれていませんでしたが、受油口はライセンス生産時に三菱重工により省かれていましたが、燃料系統は維持されていた為、改修として受油口を加工しただけで、KC-135空中給油機からの空中給油は可能となったとされ、第五次防衛力整備計画における空中給油機導入も現実味があったといえるでしょう。

 海上自衛隊には当然ながら空中給油機の導入計画はありません、勿論その余裕もありませんでした、第二次大戦中に建造された艦艇が若干残っており、国産護衛艦も海上自衛隊草創期の旧式艦が残る中、その更新を最優先しなければなりません。すると海上自衛隊がF-4高速対潜機を導入したと仮定した場合も、空中給油による戦闘行動半径増大はできません。

 RF-4を航空自衛隊が専用として運用するのであれば、第五次防衛力整備計画により導入される可能性が高かったKC-135空中給油機により洋上飛行時間を大幅に延伸する事が出来たでしょう。しかし海上自衛隊が導入した場合では航空母艦もない海上自衛隊としては基地からの行動半径に縛られる事となり、運用の柔軟性が確保できなかったというかたちだ。

 最大の計算外は、石油危機の発生により我が国財政が急激に悪化し、急速な防衛力成長を支えた高度経済成長も終焉を迎えた事で、航空自衛隊の空中給油機導入計画がとん挫し、我が国が空中給油機を導入するのは2000年代に実現したKC-767空中給油輸送機の配備を待つ事となった点でしょう、2001年の導入決定後、KC-767は4機が納入されています。

 第四次防衛力整備計画に期待され、しかし実現しなかった高速対潜機F-4,第四次防衛力整備計画当時は1973年の第一次石油危機、第四次中東戦争勃発に伴うアラブ連合の親イスラエル諸国への石油輸出機構を通じた対抗措置により世界経済は大打撃を受け、特に国内に油田がほぼ皆無である我が国への経済的打撃は狂乱物価、想像を絶する規模のものでした。

 防衛計画にも影響は多大であり、74式戦車、73式装甲車、ちくご型護衛艦、F-4EJ戦闘機、いずれも調達に影響が及んでいます。このため、第四次防衛力整備計画を完成させるに至らず、というのも同型護衛艦の建造費が原材料費拡大とインフレで倍増する程ですので、第五次防衛力整備計画の前にポスト四次防として中期計画を焼き直す必要も生じたほど。

 第一次石油危機の結果、海上自衛隊がF-4高速対潜機を希望しようとも財政状況は高度経済成長期の終焉と共に如何ともしがたい状況となった為、続く第五次防衛力整備計画に盛り込むことは勿論、第四次防衛力整備計画の完成以前に生じた財政難が第五次防衛力整備計画をポスト四次防へ焼き直しを強いる事になり、F-4導入の可能性を霧散させました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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