北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

技術研究本部、陸上自衛隊UH-Xと海上自衛隊SH-X開発開始を発表

2014-12-22 21:20:01 | 先端軍事テクノロジー
◆平成二七年度研究開発計画
 防衛省技術研究本部は平成27年度研究開発計画に二機種のヘリコプター開発開始を盛り込みました。

 開発開始となるのは陸上自衛隊の次期多用途ヘリコプターUH-X,そして海上自衛隊の次期哨戒ヘリコプターSH-Xです。UH-Xは川崎j港を主契約企業として一時開発開始まで直前の段階に進みましたが、要求性能などの盛り込みに過度な競争入札方式を練り込もうとしたところから無理が生じ、一種官製談合の様相を呈したことから白紙撤回され、陸上自衛隊は現在UH-1J多用途ヘリコプターの後継機を真剣にいち早く必要とする状況となっています。

 海上自衛隊のSH-Xは現在のSH-60J哨戒ヘリコプターとSH-60K哨戒ヘリコプターを置き換える新型ヘリコプターの開発で、現在予算難により必要なSH-60Kの調達を維持でき無いため、旧式化したSH-60J哨戒ヘリコプターの延命改修を行うことで必要な航空機数を確保している状態です。
 
 近年、航空自衛隊は新救難ヘリコプターとしてEC-725等数機種を念頭に親救難ヘリコプター計画を検討した際、数年後に控えるF-35戦闘機導入に予算を捻出するべく総合評価方式にて最も必要性能と維持費や整備基盤構築に負担が少ない選択肢として現行のUH-60J救難襟コプターの改良型をUH-60改として導入する決定を行っていますが、この他の回転翼航空機体系は陸海空自衛隊で大きな影響を受けている状況となりました。

 陸上自衛隊は一時UH-60JAをUH-1Jの後継機に充てる計画を立てていますが、夜間を含め全天候飛行能力を付与し特殊作戦仕様に匹敵する様々な追加装備を備えたUH-60JAは非常に取得費用が大きくなり、予算不足から40機以下と十分な数を調達するに至っていません。このためもう少し安価な装備としまして、既存航空装備体系に合致する国産機を志向したのですが、この仕様を定める際の調整が官製談合と受け取られています。

 今回、哨戒ヘリコプターと多用途ヘリコプターの開発を同時期に開始するという、我が国ではP-1哨戒機とC-2輸送機の同時開発の事例があるため忘れられがちではありますが、二機種を派生型ではなく別の航空機として開発するという比較的稀有な、予算面からも影響を感じさせる選択肢を選ぶこととなりました。これは次期的にUH-Xが遅れたための帰結なのではありますが。

 こういいますのもSH-XはSH-60と同程度のセンサーを搭載し、潜水艦の捜索や洋上の水上戦闘艦艇捜索に通信中継と軽輸送を含め運用されることとなります。これら機材を搭載するためには必然的に期待は大型化するため、UH-Xが現在のUH-1を念頭とした輸送能力を志向する限り、機体主要部分の共通化は行う事が出来ません。

 SH-Xですが、一時はNH-90等の派生型として開発されるのではないかとの見通し、SH-60Kの改良型となる見通しなど情報が錯そうしていますが同時期に2機種が開発されるということで、部隊配備などの時期が重なる可能性がり、初度調達分に調達予算が集中する可能性も考えられるでしょう。

 一方、航空機としましては陸上自衛隊がAH-1S対戦車ヘリコプターの後継機とOH-6D観測ヘリコプターの後継機を考えねばならない状況となっています。AH-64D戦闘ヘリコプターの導入を開始したものの費用が嵩み加えて生産が軌道に乗る前にAH-64Dの後継機となるAH-64Eがアメリカにて完成、これを受け調達計画が暗礁に乗り上げ対戦車ヘリコプター勢力の90機体制から60機体制への転換時期に重ねる形で、自然減に任せている状況です。

 調達や開発面で技術以外の不安な大きいところですが、SH-60J/Kは海上自衛隊において絶大な信頼を集める航空機であると共にUH-1も陸上自衛隊部内ではHU-1Bの時代から数百機を運用し、その間に技術的問題に起因する墜落事故が皆無という非常な信頼を集めている航空機です。その後継機がどのような機体として完成するのか、やはり興味は尽きませんね。

北大路機関:はるな
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