北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:序論、装甲機動旅団・航空機動旅団案と南西諸島防衛警備部隊

2014-12-04 23:55:30 | 防衛・安全保障
◆南西諸島を守る陸上防衛の在り方への一考察
 OCN版北大路機関からgoo版北大路機関へ移転し十日、そろそろ順次放置されてきました特集の再開を、と考え、まずは序論から。

 OCN版北大路機関では今年三月、年度末の特集としまして、戦車300両時代の陸上自衛隊基幹部隊案を提示、高機動車に代わる四輪駆動の高機動装甲車、四輪駆動機動装甲車としてフランス軍のVAB軽装甲車に範をとった車両の導入により全般的な普通科部隊の機動力及び装甲防御力強化を提示すると共に、全国の師団を戦車師団である第七師団を除き一旦全て機動旅団に改編、機動旅団を戦車や装甲戦闘車を装備する装甲機動旅団と方面航空部隊や中央の輸送航空部隊を編入し重装備を抜本的に効率化させる航空機動旅団に再編、装甲機動旅団と航空機動旅団を以て二個旅団から成る師団を編制、各方面隊に一個程度を持つ広域師団とし、機動運用に充てる案を提示しています。

 実際には、装甲機動旅団のモデルは真駒内の第11旅団に装甲車両の普及度合いを東千歳の第11普通科連隊程度に高めた部隊を配置する案でしかなく、航空機動旅団の案もモデルは相馬原の第12旅団に対戦車ヘリコプター隊や歩面航空隊の方面ヘリコプター隊を加えたもので、細部編成は既にある部隊、既存旅団編制と方面隊直轄部隊を複合化させたものでしかなかったものではあるのですが、提示しました。

 その改編案の骨子は、陸上自衛隊に思い切ったコンパクト化を求める意見発議がコメント欄に寄せられたことを受け、重装備の抜本効率化と併せ人員規模のコンパクト化を実現しつつ、高度に機動力と即応性を持つ部隊の在り方についてのこれまでの所見をまとめたもので、併せてその機会を以て当方の陸上防衛力に対する理念、丁度海上自衛隊に八八艦隊としまして、現有四個護衛隊群八個護衛隊の護衛隊編成を現在の弾道弾防空任務対応護衛隊と対潜掃討中枢護衛隊とに分ける区分から、全ての護衛隊にヘリコプター搭載護衛案とイージス艦を配置し二隻の汎用護衛艦で防護する、ヘリコプター搭載護衛艦8隻とイージス艦8隻から成る八八艦隊案、に続く一つの防衛観として結論に達したもの。

 更にその後今日に至るまで北は帯広駐屯地第5旅団、南は那覇駐屯地第15旅団と知見を広める努力を続け、広域師団の他、機甲師団の編制を機甲旅団と装甲機動旅団基幹とする第7師団の第5旅団との連携案や、富士教導団に加え航空機動旅団基幹教育を担う航空学校の航空教導団への改編案、中部方面隊管区への山陽山陰四国地方への旅団の改編案、そして南西諸島における防衛警備配置案等、専門家への相談や意見交換、知人友人を巻き込み図上演習(?)での検証を含め幾つかの支店に至ったところです。

 この中で最後まで検討の中、結論を見出すに足らなかったところを中間報告としまして提示します。南西諸島への自衛隊配置は沖縄返還時に九州南部の第8師団に加え空中機動混成団、所謂空中機動旅団を置き、沖縄本島の混成団と併せ師団化する案が打診された、という話を聞き、専門誌にも同様の内容が回顧録のかたちで紹介されていましたが、実質ヘリコプター隊を隷下に置き空中機動力を高めた現在の第15旅団編制は、部分的ではありますがこの編成を具現化したものになるのか、と考えさせられましたしだい。

 北大路機関案として、南西諸島防衛にはいかに当たるべきかという命題に際し、装甲機動旅団と航空機動旅団案を提示したうえで、軽装備主体の海田市駐屯地第13旅団に範をとった水陸機動旅団案を提示するべきか、離島防衛と水陸両用戦は空中機動作戦の要素を含むことから航空機動旅団案の部隊編成の延長上に構想するか、という視点を以て考えましたが、航空機動旅団では離島防衛の警備部隊を置くことが両立せず、しかも旅団編制を採っては離島への独立した警備部隊は旅団主力から支援を受ける事が出来ず、この中で偶然、各国の海兵隊資料を調べる機会に恵まれ、このなかでも検討を続けました。

 惜しむべくは、航空機動旅団案を提示し、各国の空中機動旅団資料を多数収集した上絵の結論は、やはり航空機の取得費用や維持費用は大きく、各国はその維持に多くの労力を投じると共に一個の旅団へ空中機動戦力を集中したとしてもその旅団が便利に各方面で運用されたならば集中運用基盤そのものが瓦解してしまい、分散させたならば各個に航空機の集中する最大投射力が制限されてしまう、ということ。

 ここで、沖縄に航空機動旅団、現在のヘリコプター隊に対戦車ヘリコプター隊を付与する提示を行うならば、陸上自衛隊がもちうる戦闘ヘリコプター及び対戦車ヘリコプターの定数を部隊数で割ることで飛行隊の全部隊の装備定数が限りなく削られてしまうことを意味し、そして部隊を警備部隊として離島に分散させることは、旅団を普通科連隊増勢の形で強化したとしても離島へ分散配置させれば普通科部隊への平時の管理支援機能などで旅団は練度向上ではなく、部隊のための旅団という本末転倒な自転車操業に陥ってしまうでしょう。

 結果検証したのは、水陸機動旅団として編成する案、航空機動旅団と警備隊を並列させる案でした。検証で重視したのは訓練環境であり、この点で水陸機動旅団案は、沖縄県にこれ以上の、米軍訓練場の借用を含め演習場環境を自衛隊が整備することは限度があり、沖縄を離れて水陸機動作戦演習を展開するには海上自衛隊の両用戦艦艇の規模があまりに不十分であることから特にグアムやハワイにアメリカ西海岸での演習地確保は難しい、という結論に至ったのです。

 これは榛名防衛備忘録として今後掲載し、その上のまとめを考えているのですが、以下の通り。西部方面隊に第4師団と第8師団を旅団化し西部方面広域師団を置き、第4旅団を装甲機動旅団へ第8旅団を航空機動旅団へ転換させると共に、第8師団司令部機能沖縄本島に移し、那覇駐屯地に南西広域師団として第8師団を置くと共に機動運用部隊としての機動旅団は縮小編制の第15旅団、現在の第15旅団に対戦車ヘリコプター部隊を縮小規模で配置、この為に全国の対戦車ヘリコプター部隊から数機を抽出し飛行隊定数を下方で再編する、という結論に至りました。航空打撃力は必要だが、航空機は予算制約を受けるため、実質これしかない。

 その上で南西広域師団の基幹部隊が第15旅団だけでは師団とする意味は無く師団長ポストが増大するのみ、肝要な点は航空機動旅団と地域警備部隊が両立しない、というところでして、地域警備部隊として離島に部隊の一部を送る方式は、福岡第4師団がかつて、対馬警備隊へ別府の第41普通科連隊より一個中隊を配置した際、別府から対馬を支援することが能力上難しく、普通科中隊の自活能力は連隊や業務隊の支援を受けず独立運用することを前提としていなかったため、負担が大きすぎ、対馬警備隊として独立部隊を編成するに至りました、これをどうするか。

 航空機動旅団は空中機動能力を、特にヘリボーンのみで戦闘を展開するのではなく、空中機動力を以て軽装甲部隊を空中からの兵站支援や火力支援により高速前進させるための支援機能である、これが例えば2013年のフランス軍のマリにおけるサーバル作戦などで、ヘリコプター単体の空中機動がイラク戦争において敵防空部隊などの前に脆弱性を曝したうえでの転換となりましたが、航空機動旅団案も単体での強襲という挺身作戦を行うのではなく、受け入れ基盤の上に展開する、という前提を示しています、すると、受け入れ基盤が必要となる。

 混成群、第15旅団の新編とともに廃止された第1混成団を思い起こさせる呼称ですが、航空機動旅団に加え南西広域師団は、二つの混成群を置くという論理的帰結に至りました。具体的には現在の第15旅団と同じく航空機動旅団は沖縄本島に配置する案ですが、沖縄県南部の先島諸島と鹿児島県島嶼部にあたる奄美諸島へ受け入れ部隊としまして、混成群を置くという提案です。具体的には第1混成群を奄美諸島におき、群本部と偵察隊に加え奄美警備隊と徳之島警備隊を隷下に置く。第2混成群を先島諸島におき、やはり群本部と偵察隊に加え、宮古警備隊と石垣警備隊を置く、警備隊の編成は対馬警備隊を参考とし、有事の際には空中機動により航空機動旅団増援部隊を受け入れるかたち。

 南西広域師団としての第8師団は師団司令部を那覇基地におき、航空自衛隊南西方面航空混成団との連携を重視、那覇駐屯地の第15旅団に加えて、奄美新駐屯地の第1混成群、宮古島新駐屯地の第2混成群、以上を以て編成する、他の師団と比較し変則的な編制を採る案です。中間報告という形で、こうした方式にまとまりましたことを紹介しました。

北大路機関:はるな
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