北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新防衛大綱(25大綱)・中期防衛力整備計画閣議決定、陸上防衛力整備の新方針を俯瞰する

2013-12-17 23:51:20 | 国際・政治

◆2020年代を担う防衛力整備基本計画

 政府は本日、今後約十年間にわたる防衛計画の基本方針、防衛計画の大綱を発表しました。

G12img_9527 防衛計画の大綱において、統合機動防衛力整備という方針を示し、このもと、年々強まる南西諸島への軍事的圧力を現実問題として扱い、平時における警戒監視能力と共に有事における絶対航空優勢及び制海権の確保を主体とした我が国主権の維持を達成する防衛力を構築する方針を明示しました。

Cimg_8809 25大綱の制定に伴い、陸上自衛隊は1962年の五方面隊制度導入以来、実に半世紀ぶりであり陸上自衛隊創設以来最大の改編が行われます。この改編は、陸上自衛隊の北部・東北・東部・中部・西部各方面隊の一部方面総監部司令部機能を再編し、陸上総隊が創設されます。

Gimg_2747 陸上防衛力は実質的に機動部隊と地域部隊への分化にあたり、これまで陸上自衛隊は全国に配置する全ての師団と旅団を地域配備とし、機甲師団と中央即応集団を機動運用部隊とする運用を採ってきましたが、新しい防衛大綱では機甲師団に加え中央即応集団を発展的に解消し、空挺団のほか、3個師団2個旅団を機動師団機動旅団へ強化することとなりました。

Gimg_6436 陸上総隊の創設は、単純に幕僚機構を移管するための東部方面総監部の改編、というような話ではなく、東部方面総監部が陸上自衛隊の機動運用部隊を一括運用し、機動軍司令部というような機能を発揮することとなり、その名称は変わりますが機能は強化されるという事です。

Gimg_2437 これに伴い今後五年間の中期防衛力整備計画では2個師団が機動師団編制へ、2個旅団が機動旅団編制へ改編されることとなります。地域配備部隊としては五個師団と二個旅団が維持され、従来の地域配備部隊八個師団六個旅団からかなりの部隊が機動運用部隊となります。

Kimg_0911 機動運用部隊は陸上総隊の直轄運用を受ける事となり、その規模は一個機甲師団、三個機動師団、四個機動旅団、一個空挺団、一個水陸機動団、一個ヘリコプター団が充当される計画で、この通り非常に大きな規模の部隊が機動運用されることとなります。なお、機動運用部隊が平時管区を有するのか、地域配備部隊が担うのか、地方協力本部が担うのかは情報を待ちましょう。

Hbimg_7298 水陸両用団の創設は陸上自衛隊が本格的な両用戦部隊の創設を開始することを示し、従来の輸送ヘリコプターを補完する新装備としてティルトローター機の導入を開始する方策が示され、中期防衛力整備計画ではMV-22可動翼機、水陸両用装甲車の本格導入を開始するとのこと。

Gimg_6030 機動力強化に向け、戦車は一個機甲師団を中心とし、北海道の第2戦車連隊、第5戦車大隊、第11戦車大隊が効率化され維持されると共に西部方面戦車隊が新編されます。他方、既存戦車の合理化に置き換わる機動打撃力として、105mm砲と高度な打撃力を有する機動戦闘車の大量導入を行うとのこと。

Nimg_4953 機動戦闘車は主砲こそ74式戦車と同等のものですが、火器管制装置と行進間射撃能力が抜本的に向上しており、防御力は第二世代戦車と同様の視点の下機動力を強化していて、第9戦車大隊、第6戦車大隊、第1戦車大隊、第10戦車大隊、第3戦車大隊、第13戦車中隊、第14戦車中隊、第4戦車大隊、第8戦車大隊は機動大隊へ置き換えられる模様です。

Biimg_5297 特科火砲は、方面特科部隊より自走榴弾砲が全て多連装ロケットシステムに置き換えられるため、300門を基準とする装備体系へ移行します。この数は15個特科隊に相当する所要数となり、このほか、五個地対艦ミサイル連隊、七個高射特科群が維持されます。

Gimg_2816 高射特科群は中距離地対空誘導弾を装備する部隊ですが、現行編制と比較し一個群が縮小されます。これは一部方面隊の高射特科群への改編が行われるか、方面隊の陸上総隊への改編に伴う方面高射特科群の合理化、という背景が考えられるでしょう。

Img_6381 陸上自衛隊は戦車数が削減され特科火砲が縮減されますが、その分機動戦闘車が配備され火砲は重迫撃砲とロケットシステムにより近代化されます。新装備には自走榴弾砲である火力戦闘車開発による全特科部隊自走化が行われ、併せて近接戦闘車による情報優位、新装輪装甲車の開発による機動師団の装甲化も進むことになります。

Aimg_0792 他方、空中機動運用の在り方や多用途ヘリコプターの後継機選定、対戦車ヘリコプターの後継機選定という難題が山積する中、新しく可動翼機の導入を開始する指針を示しているため、陸上自衛隊は長く空中機動能力を重視してきた歴史があり、これをいかに展開するか、関心を抱かずにはいられません。

Gimg_5354 陸上自衛官定数については概ね15万9000名をめどとしており、実員は15万1000名、8000名を即応予備自衛官とする現在の実員のまま検討中であった増員は見送られたようです。海上自衛隊航空自衛隊については次回に紹介することとします。

北大路機関:はるな

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