北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:将来艦艇日米共同開発①・・・アメリカ海軍は、ひゅうが型を取得すべきだ!

2013-12-15 13:01:31 | 国際・政治

◆カリフォルニア級航空駆逐艦30隻建造案
 新防衛大綱において護衛艦定数の増勢方針は確実な方向で調整されています。この中で、増勢される将来艦艇を米海軍沿海域戦闘艦LCSと共通する艦艇を構想している、との報道もありました。しかし、未開発分野へ安易に共同開発を行うのはFS-Xの事例やEF-2000等、少々不安も残るところ、そこで別の視点を考えてみました。
88img_6800 未開発分野へ日米で挑むのではなく、日米が完成品を提示し装備と装備の合同による新しい装備体系を開発する方が良いのではないか、そんな視点からこの命題を見てゆきましょう。護衛艦の米海軍との共同開発を意識しているようですが、北大路機関の提案として我が国としてはヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが型を将来沿岸海域戦闘を念頭に置いた大型駆逐艦として提示できないか、と考えてみました。ひゅうが型護衛艦をアメリカ海軍絵カリフォルニア級航空駆逐艦として27~31隻程度の取得を提案する。カリフォルニアは、原子力巡洋艦カリフォルニア級を思い出しますが、1921年に就役したテネシー級戦艦の二番艦の艦名でもあります。ひゅうが型護衛艦は伊勢型戦艦二番艦日向の艦名を受け継いだもので同時期の戦艦同士を並べたもので語呂がいいですし、どうせ護衛艦ひゅうが型もアメリカで生産されたならば巻寿司のカリフォルニアンロールのような状態になるでしょうから丁度よいのではないか、と。
88img_8487 アメリカは満載排水量3000t前後のものを模索しているのに、いきなり満載排水量19000tの世界最大級の駆逐艦を提示するとは、海上自衛隊は、ひゅうが型をDDHとしていますので、DDという部分がある以上駆逐艦であるわけですが、まあ、アメリカ海軍としては日本側が一佐を艦長としている以上、海軍大佐が指揮する艦艇は巡洋艦ですので、この分は一考の余地はありそうですけれども、それはさておき、かなり大型のものを大量に取得させよう、という発想は違和感を感じられる方がいるかもしれません。ただ、沿海域戦闘艦の求められる人mへは対応する能力をヘリコプター搭載護衛艦は有していますし、以下に記す通り想定任務が違っていますので、共同開発を沿海域戦闘艦と小型護衛艦で実施した場合、どうしても国際共同開発につきものである双方の要求不一致に伴う開発遅延と開発費高騰に落ちる可能性が無視できないのです。それならば、日本が育てた一流の装備であるヘリコプター搭載護衛艦装備体系をアメリカに完成品として提示し、その見返りに米海軍の艦上無人機や戦闘機運用体系の提示を求める、というような完成品同士の相互提供により単体システムを共同開発するという従来の発想から、単体完成品の相互提示による装備体系の共同構築を行う、という選択の方が良いのではないか、と。
Himg_0835 沿海域戦闘艦は米海軍では世界を任務海域として沿岸部での対潜哨戒から制海権確保に機雷掃討、戦力投射と兵員輸送などを想定しているもので、武装をモジュール化し換装することで低脅威度海域での戦闘から従来型隊水上戦闘までを想定しているもの。対して日本では海上自衛隊が求めているものは南西諸島を中心とした機動運用の想定で、運用要素は従来の小型護衛艦の域に或るもの。双方は一応満載排水量で3000t前後あたり、という想定は共通化できるのかもしれませんが、運用能力の要請が異なりますので建造費が大きく変わってきます。
88img_4068 それならば、日本としては既に完成したものを提示し、日米で同型艦を共同運用する事は出来ないでしょうか。ヘリコプター搭載護衛艦は海上自衛隊が1973年のヘリコプター搭載護衛艦はるな就役以来40年間に渡り技術を強化し戦術を開発してきた我が国が世界に誇る洋上防衛システムです。日本としてはヘリコプター搭載護衛艦からのMQ-8のような無人機の運用やF-35B戦闘機というような将来航空機の運用などのノウハウを学ぶことが出来、アメリカとしては大型駆逐艦としてすでに設計が完成しているものをアメリカ国内の造船所で建造しますので設計分野ではリスクが少ないですし、求められるならばアメリカ海軍の要員を護衛艦ひゅうが、いせ、に乗艦させ、訓練や運用面での実習が、もちろん日本側も無人機や垂直離着陸機運用を米艦艇へ研修へ向かうというバーターが前提ですけれども、可能です。
Himg_1430 沿海域戦闘艦とヘリコプター搭載護衛艦では任務が違い過ぎないか、と問われるかもしれませんが、沿海域での戦力投射任務は、沿海域戦闘艦はストライカー装甲車を一個中隊程度搭載するものや、特殊作戦部隊をヘリコプターにより投射する事を以て対応することとしていますが、ひゅうが型護衛艦ならば、航空機格納庫にはストライカー装甲車一個中隊は余裕で搭載できますし、飛行甲板上も後部飛行甲板のミサイルを搭載したVLSの付近以外に装甲車を並べれば、一個大隊でも収容できます。降ろす手段は現行では自走乗艦できませんので、改良するか、甲板にスロープを設置、重輸送ヘリコプターの搭載などの必要性は出てきますが、戦力投射は一世代前の強襲揚陸艦と比較しても引けを取りません。
Himg_1164 ひゅうが型は軽空母ではなく全通飛行甲板型の水上戦闘艦、駆逐艦ですので、かつての制海艦、中途半端な軽空母構想として提示され中途半端であるがゆえに正規空母と任務と予算を食い合う懸念から設計のみなされて中止となった制海艦と同じ轍を踏みません。駆逐艦、ひゅうが型は100kmの最大探知距離を持つとされた護衛艦しらね型のOQS-101の後継であるOYQ-21ソナーシステムを搭載していますので、対潜中枢艦としての能力を充分有しています。OYQ-21を対米供与するかは別の話となりますが、補給整備面からタイコンデロガ級巡洋艦やアーレイバーク級駆逐艦に装備されているSQS-53を装備する事も出来るでしょう。短魚雷発射管や対潜用アスロックのVLSへの搭載が出来ますので、対潜中枢艦として運用できるほか、ニミッツ級原子力空母等の対潜直衛艦としても能力を発揮できることは間違いない。
Aimg_0673 ひゅうが型は、対空戦闘能力も優れています。あきづき型護衛艦に搭載されている国産多機能レーダ・射撃管制装置FCS-3は同時多目標対処能力があります。特に比較されるイージスシステムは遠距離探知能力に優れる一方中距離低空目標探知に限界があるSバンドレーダーを採用していますが、FCS-3は中距離及び近距離でも低空小型超高速目標への対処能力を重視するCバンドレーダーを採用していますので、例えば航空母艦の直衛任務に充てた場合、射程50kmのESSM対空ミサイルを最大64発搭載できますので、空母艦載機とイージス艦の防空網を突破する攻撃機や対艦ミサイルの攻撃から空母を防護可能ですし、単艦で沿岸部へ進出し任務に当たることも可能です。また、MCH-101掃海輸送ヘリコプターの搭載を最初から念頭としていますので、沿海域戦闘艦に求められる機雷戦対処能力も十分備えているもの。
Himg_1186 FCS-3がアメリカ海軍の装備体系との相互互換性で問題がある、もしくは技術的に対米供与には一考の余地が生じる、という場合にはロッキードマーティン社製イージスシステム、イージスIWSならば艦橋に統裁可能です。イージスIWSはノルウェー海軍のフリチョフナンセン級ミサイルフリゲイトに搭載されているもので、アーレイバーク級や、あたご型等に装備されているSPY-1Dレーダーを簡略化したSPY-1Fが搭載されています。フリチョフナンセン級は日米のイージス艦のような長射程のスタンダード対空ミサイルを搭載せず、米海軍がシースパロー対空ミサイルの後継として導入し、海上自衛隊でも、ひゅうが型や、むらさめ型、たかなみ型、あきづき型が搭載しているESSMを主要装備としていますので、ちょうど良いところ。
88img_1292 従来型の海上戦闘では上記の通り威力は最大の能力を行使できます。そしてもちろん、この25年間重視されている低烈度紛争に際しては航空機による哨戒能力と部隊輸送能力が威力を発揮しますし、テロ対策や海賊対処でも航空拠点は能力が最大限活かせ、災害対処や人道支援では輸送能力で従来の駆逐艦とは比較になりません。米海軍は無人機や航空機による戦力投射を行い沿岸部での戦闘を想定しているようですが、海上自衛隊も運用を計画しているMQ-8無人ヘリコプターは沿海域戦闘艦の場合、3機の搭載が限界ですが、ひゅうが型ならば30機搭載しても十分余裕があります。200km進出し6時間の哨戒が可能、必要ならばヘルファイア対戦車ミサイルを搭載し戦力投射も可能なこの航空機を多数運用することができるわけです。そして、格納庫をどう運用するかによりますが、F-35B戦闘機を甲板係留と併せ最大12機搭載することが可能な駆逐艦ですので、沿岸での多くの任務に対応できるでしょう。次回、能力と利点、現実性についてもう少し考えたいと思います。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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