北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:島嶼部防衛と国際貢献、中部アフリカ情勢緊迫化と普天間移設前進を背景に

2013-12-28 23:54:33 | 国際・政治

◆問題領域に関する共有知の視点から

 いよいよ年の瀬ですが、年末の現在の注目事項について二つ程触れてみたいと思います。

Gimg_5125 来年度予算が示されました。予算を俯瞰してみますと、重装備は別として、陸上自衛隊航空機調達が実質的に中断しており、防衛装備品は艦艇建造や航空機調達などこれからの中期防衛力整備計画を維持するうえで現実的なのか、と懸念しますが、こちらは年度内に詳細を紹介しましょう。

Avimg_7592 年末となりました今日ですが、昨日沖縄県の仲井間知事が発表した普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた埋め立て計画容認は、久々に注目の内容でした。安倍総理の沖縄振興策と基地負担軽減努力に関する踏み込んだ提示へ仲井間知事は近来ここまで県の将来を考えた総理はいないと感嘆し、市街地の飛行場を移設する必要性から名護市辺野古への移設前提となる埋め立て工事の許可手続きを行った、というもの。

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 民主党鳩山政権以来の沖縄基地問題について、少なくとも県外移設を提示した民主党の対応は、側聞する限りでは民主党が目玉として掲げた脱公共事業と連接しており、基地負担と共に振興策を併せていた自民党時代の提示より、基地を県外移設するので振興策も削減、という予算体系の提示などが行われていた、というかたち。

Img_4160 これが民主党の稚拙な政権公約に盛り込まれ、その後県外移設は防衛安全保障上不可能と結論が付いた際、曰く海上ならば県外、曰く鹿児島県島嶼部南部へ移設、果てはヘリコプター搭載護衛艦へ移設などなど迷走の一途をたどり、更に負担は求めるが振興策は認めない、という姿勢を採ったため、県民を代表する立場からは容認しえなかった、という視点があるようです。

Eimg_9071 沖縄県の振興、私事にて恐縮ですが沖縄に滞在してみますと、腕時計の電池交換を依頼した際に防水機能を維持しつつ電池交換は九州でなければ無理、といわれました。また、一眼レフのCFカードが容量不足となった際、16GBのCFカードを購入するべく家電量販店に足を運ぶと最大4GBまでしかない、と言われ、なるほど、京都では簡単な物流と資材はあたりまでは無いのか、と痛感しましたところです。

Thimg_0233 また、鉄道網が僅かなモノレールのみですので、宜野湾市から那覇市へバスで移動する際にラッシュ時と重なった渋滞の大きさは、既存の高速道路では不十分であり国費を投じてでも名護市から那覇市を経て糸満市にかけ、官営鉄道を整備する必要性がある、と痛感しました。更に沖縄ですが、基地経済負担と言われる反面、那覇市周辺の港湾施設が米軍用地で船舶輸送量に限界があり、これが見えない負担となっている可能性もあります。

Fimg_5547 離島振興により住民の定着を図る事こそ離島防衛、とは、その昔に対馬市長さんの講演会で聞いた御話しで、離島は本土のインフラ網から離れているため大きなハンデを有しているが、人が住み続ける事と活気を以て初めて住民が定着し、外国が政治的に介入できない社会基盤が生まれる、というお話には説得力がありました。そうした意味で沖縄県振興策を見ますと、また違ってくるのではないでしょうか。

Aimg_9765 鳩山政権に菅政権と野田政権は筋を通さず負担のみ押し付けたことが問題だったわけで、今回安倍総理が提示した基地負担軽減策については、MV-22の訓練を半分近く本土に移転するという大きなものを含んでおり、これは今年の饗庭野演習場において実施された日米共同訓練のように陸上自衛隊の両用戦能力構築という視点から今後必要になる部分であり、その頻度は必然的に高まることからも担保されたものだ、ということが出来ます。

Aimg_2372_1 仲井間知事は併せて埋め立て工事容認の記者会見において周辺情勢への配慮も考慮した旨を発言、東京が沖縄振興策に注力する背景で周辺国に沖縄侵攻策を進めている勢力の存在も踏まえての決断としています。一種慇懃無礼とも取れる知事は別に中央に対してのみ示されるのではなく、一部記者の一種社会常識では失礼と言わざるを得ない発言にも向けられ、逆に筋を通せば筋を通す沖縄県民代表という政治家だ、ということが印象的で、久々に尊敬できる政治家だ、と気づきました。

Simg_9271 ともあれ、五年以内の普天間基地移転を目指し今後辺野古での代替施設建設が大車輪で進みます、政府はかねてからの嘉手納基地以南米軍施設全面返還という小泉内閣時代の日米合意を履行する方針で進んでいるため、実現すれば沖縄県の玄関口とされる那覇空港から最寄りの米軍基地が30km離れた嘉手納基地、ということになります。所要時間はモノレールとバスを乗り継ぎ一時間半、米軍基地だらけの沖縄という印象は払拭されるでしょう。

Bimg_7289 実のところ、普天間飛行場は市街地に近すぎるとの批判も、大阪の八尾駐屯地や岐阜基地など当方が知る自衛隊基地と宅地の距離を考えれば異常というほどではありません。名古屋近郊の小牧基地、首都圏の入間基地に厚木航空基地、東京の立川駐屯地、伊丹空港、日本では普天間飛行場と宅地の距離は決して近すぎるものではありません。しかし、これに関連する設備の位置関係などは一考の余地があり、今回の移転への一歩は大きな一歩です。

Img_4261 一方で沖縄県への軍事的圧力が顕在化していることも事実であり、離島は部隊常駐警備が一歩間違えればイスラエルが第四次中東戦争に先んじて配置した要塞線パーレビラインのように、部隊不足などの弱点を突かれれば瓦解しかねず難しいものです。このため、機動防衛力の整備が重要となるため、機動展開能力を整備し、二度と沖縄を見捨て無いよう太平洋戦争から学ばねばなりません。
Gimg_2585 南スーダン情勢について、年越しとなりそうです。国連はアフリカ連合などへ6000名の部隊増派を求めていますが、この増派要請は明らかに武装勢力への介入を以て現在の南スーダン情勢へ軍事力を以て現状を安定化させる平和執行を念頭に置いたもので、これは国連憲章七章に基づく安保理決議である近年のPKOの一つの方向性とも言えるでしょう。

Iimg_1273 本日、南スーダンではキール大統領がアフリカ連合の即時停戦に同意し、反乱軍にも即位停戦を呼びかけています。しかし、これで完全に停船となり統一国家を維持できるのか、現状ですでに数千名の死者が出ている状況を誰が責任を負うのか、まだ、不明です。

Cimg_6383 平和維持から平和執行へ、日本が参加を始めたPKO任務は六章と七章の中間である六章半措置でしたが、現在は七章措置であるため当然で、介入の決断も早いのですが、しかしこれは一歩間違えれば平和執行の過程でアイディード将軍派武装勢力と激戦に展開し、154名という国連PKO部隊に湾岸戦争の米軍戦死者の匹敵する犠牲者を出したソマリアPKO任務UNOSOM-2と同様の事態になりかねません。

Fs_img_3785 この問題は日本が既にPKO部隊を派遣していることから他人事ではありません。特にPKO部隊を派出している諸国で、アフリカ連合は現在、中央アフリカでの大規模戦闘が内戦に展開し無いよう、フランス軍と共に大規模な介入を実施中であるため、残念ながら余力がありません。

Img_8285a 仮に日本政府が国連より増勢を要請された場合、もしくは増勢に対応することなく現状維持を進め状況が激化することで日本の活動地域が危険地域に含まれつつある懸念が生じた場合、その場合はPKO瓦解を覚悟でこれまで言われたような安易に撤退するのか、それともPKOを瓦解させないよう増派するのか、自衛隊は、日本政府は、厳しい状況とどう向き合うのでしょうか。

Img_3840 アフリカ連合の二方面作戦、中央アフリカ情勢は既に首都が戦場となっており、今月初旬に旧宗主国フランス軍が緊急展開、大規模戦闘が展開中です。南スーダンは元々イギリス領ですので、元宗主国の責任を果たしてもらいたいところですが、併せて今回の事案を契機として国連憲章七章決議に基づく現在のPKOへ我が国はどういった視点で臨むのか、考えなければなりません。

北大路機関:はるな

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